アクア
「そっちの君。何かを身につけているんじゃないか?」
気になっていたのか、沙羅が敦に向って言った。
「ええ、貝っぽい数珠のブレスレットを付けています。それが何か?」
「いや、水に守られているなと思って。小さな力だけどな」
「力がなくなりかけていますね。アクア嬢に見てもらったほうがよろしいでしょう」
敦は不思議そうに手首に巻きついている丸い粒が並んでいるのを見た。守られているという言葉を聞き、安心したようだ。
「アクアの領域か」
「あの、きゃぴきゃぴ娘か」
ヒースは、どこかでふらついているであろう、勿忘草色の髪に澄んだ水色の眼をした娘を思い出し苦笑した。
「はるかは持ってないの?」
アキの疑問に、素直に答えた。
「基本的には。前にかぶれたことがあって、それからはちょっと。今回は撮影のときにタイピンを付けてるけど」
「宝石付き?」
「少し赤みがかった緑色の小さな石が付いてたと思う」
「まぁ、悪い石ではなさそうだけど。現場に行くから、一応、その時に見せてくれる?」
アキは、翌日ロケが再開されると、すぐに行くと約束した。
「ホテルまで送っていきましょう」
「いえ、大丈夫です」
ヒースの誘いに、はるかが断る。
「ちょうど、自動車で出かけなければならない用事がありますので。遠慮なさらずに」
「では、お言葉に甘えて」
一礼して、部屋を出ていく客人2人に、アキが質問をした。
「ヴァイキングは平気か?」