些細なトラブル
「そのような話はあとでゆっくりと。肝心の問題というのは?」
たしなめられたアキは、そうだったと気を取り直した。
「日本でクロエさんに言われて悩んでたら、ジョージさんに絶対に行くようにって、念を押されて」
「あぁ……。特技が占いだったっけ」
アキは若々しく活発な女性を思い出していた。
「些細なことでも必ずよと言われて。で、地図を頂いて」
「で、些細なことが起こったと」
アキは失礼するよと、サンドイッチをつまみながら話を促す。
「僕ら、この町から少し離れた場所にある綺麗な湖で撮影をしてるんだけど、1日目の撮りが終わって、夕方食事をしに行ったら、そのお店の看板がスタッフに当たったんだ。幸いそれは、たいした怪我ではなかったんだけど」
「夜のうちに、今度は、ほかのスタッフが部屋で足をひどく捻って。何も特別なことはしていないと言ってました。ベッドからトイレまでの少しを歩いただけだって」
「次の朝早くに今度は、雑誌の取材で同行した記者が原因不明の熱を出して。さすがにこれだけ続くと、祟られてるんじゃないかって。とりあえず、今日のロケは中止になったんだけど」
ヒースは2人を見やって、話しかけた。
「なるほど。故意か偶然か、どちらともとれないということですか」
2人は肯定した。