03 双子と6人の攻略対象
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打倒ゲームルートを誓った二人はすぐさま作戦会議に入った。
今の二人はまだ5歳。ゲームが始まるまでに10年の猶予があるのだ。これは大きなアドバンテージとも言える。それを最大限活用するために、まずは情報をすりあわせなければならない。
敵を知り己を知れば百戦危うからず、と昔のエライ人は言ったはず。
(ところで、杏はどのくらいこのゲームのこと覚えてる?)
(1年生時のパラメーター上げでその後の攻略難易度が変わるってことくらいかな?
ぶっちゃけあんまり好みの攻略対象いなくて記憶が薄い…)
杏の好みの乙女ゲームは、どちらかと言えば攻略対象と会話をして仲良くなっていくタイプだ。この『戦え!星乙女』も選択肢がないわけではないが、パラメータ上げやRPG部分が大部分を占める。そちらに気合いを入れすぎたせいか、美麗スチルや身もだえるような甘い台詞が少なかったこともハマりきれなかった理由の一つだ。
(まぁ私が独占してたみたいなもんだから、あんまり覚えてなくてもしょうがないわよね)
テレパシーだけど、蘭の苦笑する雰囲気が伝わってくる。
(さらっとおさらいするわね)
このゲームの攻略対象は6人。
それぞれ担当色と担当のパラメーターがある。
まずメイン攻略対象のアルフォンス王子。この人だけは他の攻略者と違い担当カラーと髪の色が違う。担当カラーは紫だが、容姿は金髪碧眼。これこそが王子という人物で担当パラメータはマナー。
次に王子の側近二人。
赤色脳筋担当で騎士団長子息のカイン。担当パラメータは戦闘実技。
青色担当のツンデレ。宰相子息のエルンスト。担当パラメータは学力。
それからタラシ担当の緑。大商人の息子のユーゴ。担当パラメータは流行。
年下枠で黄色担当、後輩の魔法大好きっ子フィン。担当パラメータは勿論魔法。
そして、隠しキャラ的扱いの先生。
他の攻略対象とも仲良くしつつ、パラメータも上げなければならない最高難易度のクラーク先生。ちなみに色は灰色担当。
(紫、赤、青、緑、黄、灰。
色で判別できるからすごく楽よね。戦隊ものみたい。
特に赤は見るからに武力~って感じだし、青はインテリ~って感じだったし)
(そうね。うっかり実物に遭遇しても『なんか色の主張が激しい人』ってことですぐ警戒できると思う。
ちなみに私の推しは…)
(王子でしょ知ってる。王道好きだもんね)
(やかましい)
基本的にそれぞれの担当パラメータを上げると、その分野が得意な攻略対象に一目置かれて仲良くなっていく…というシステムだ。
王子だけはメイン攻略対象なのでマナーだけでなく、全てのパラメータがそれなりに高くないと攻略は難しい。実際王子とくっついた場合未来の王妃になるので、全てのパラメータが高い女性でないと…というのはわかる気がする。
そんな難易度が高く、正統派イケメンの王子は蘭の好みドストライクだ。指摘すると怒られてしまったけれど。
(でもさぁ…最終的に魔王も自力で倒すならかなりのパラメータいるじゃん?)
(それな。ほんまそれな。
攻略対象を連れてけば、彼らがバフかけてくれるから魔王を倒しやすくなるけど…それはゲームのルートに沿ってるってことだから…つまり悪役令嬢ラナ、私の死!)
このゲームがほのぼの学園系なのは一年生のときだけ。
二年生になると、魔王なるものの復活の兆しが見られ、唐突にRPGパートが始まる。そこで生徒達は実戦経験をつんで魔王を討伐に参加することになる。
主人公はその中でもかなりの力を秘めているということで、何故か最前線に。そのとき、攻略対象とパーティを組んでいればラスボス戦だけの特別なバフをかけて貰えるのだ。
しかし、バフをかけて貰える条件というのが攻略対象の恋愛ルートに入っていること。
恋愛ルートに入っていればどうしても悪役令嬢ラナは敵に回り、最終的に消滅してしまう。
(はい、却下!
つまり、私たちは親密度を上げずにパラメータだけをあげなければならないってことか…。
…鬼キツイ)
(そうなのよね。パラメータが高ければ自然と親密度が上がってくシステムだから…。
だからこそ「パラメータ上げるだけでハーレム状態いえーい」って楽しかったんだけど…今の状況ではすんごい邪魔だわ)
(ちなみにノーバフクリアした?)
(したことはある。クッソきついからおすすめしない。でもやるしかないのよね…)
ノーバフクリア、つまり、主人公が誰の手も借りず一人で魔王を討伐するルートだ。
このゲームでは基本的にどの攻略対象のルートを通ってもサブボスである悪役令嬢とラスボスの魔王の二連戦になる。しかし、誰とも恋愛関係にならなければ悪役令嬢は出てこなかった。敵対する理由がなかったのと同時にノーバフ鬼畜ルートへの恩情だろう。
(てゆかさぁ、恋愛フラグ立つ前に魔王討伐したらよくない?)
基本的に悪役令嬢ラナは誰かと主人公が恋愛関係に陥ろうとすると邪魔をしてくる。そして、その嫉妬心から魔王の配下になってしまうのだ。逆に考えれば、とっとと魔王を倒せば魔王の配下になることはできない。
(それは言えてる。
魔王復活の兆しが出るのが1年生の終わり。
完全に復活したってことで戦力を整えて挑むのが3年秋から冬にかけて)
(攻略対象によって討伐時期違うんだっけ?)
(そうそう。でも、どのルートでも3年初秋の学園祭…魔王討伐のための決起祭で恋愛イベントの最終フラグが立つの。
この決起祭のラストダンスに誘いに来た人がエンディングを迎えられる人ってワケ)
このゲームは同時攻略もできるため、このラストダンスに何人もの男が申し込んでくることもザラだ。ハーレムルートは全員が誘いに来るものの、緊張してそれどころじゃないという理由で振ることになる。
ラストダンスに振られても諦めない男達の執念には頭がさがる思いだ。
(んじゃ夏に倒そう、そうしよう)
(オーケー。期限は3年夏。
私たちには10年という時間的アドバンテージがあるとはいえ、うかうかしてたらヤバイよね。出来ることやっていかないと…)
(あ、その前になんだけど…)
双方少しウトウトしてきているのか、テレパシーが不鮮明だ。
どちらか一方でも意識を失った状態ではテレパシーは不可なのかもしれない。その当たりもじっくり検証しなければ、と思いつつ杏は蘭に話しかける。
(一応宣言しておくけど、私本当にこのゲームの攻略対象キャラに推しいないから!
だから、絶対蘭を裏切ることはないからね!
そこだけ安心してほしくて)
(…昔から趣味悪かったもんね)
(なにおう?)
生存確率が高い杏と違い、蘭は一つでも踏み外せば即刻ゲームオーバーという名の死を迎えるのだ。だからこそ、安心させたくて『推し皆無宣言』をしたのに。
(気持ちは嬉しいわよ、ありがと。
でも、もし好きな人が出来たらちゃんと相談して?)
(…そんな簡単にできたら双子時代、喪女子高生してないんだよなぁ)
色んな意味で恋愛フラグを心配してくれているようだが、蘭は正直3次元にあまり興味がなかった。これがゲームの世界とわかっても、目の前にいる人たちは現実なのだ。
自分が恋愛するビジョンがさっぱり浮かばなくて杏は苦笑する。
ちなみに姉の蘭は彼氏がいたこともそれなりにある。
(もう…真剣に言ってるんだけどなぁ。
まぁいいや。今日はもう寝ましょう。明日も同じくらいの時間に話しかけるわね)
(了解~。頑張ろうね、ネネ)
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