ニックの世界見聞録
西暦2093年 第三次世界大戦勃発
この戦争は核、生物、化学、完全自律型ロボット兵器が使用された。人類が誕生し、これまで行われてきた殺し合いの死者を合わせたとしてもとても足りない。
西暦2095年 世界大戦終結
多くの犠牲を伴った戦争に勝者はなかった。あったのは次に起こるさらなる危機に対応できる力を失っただけであった。だがこれは仕方のないことだ。この時「神」とでもいうべきか、いやそう表現せざるを得ない。その者は殺しあう事にしか能がないヒト共に審判を下す事にした。そして、その御心をヒトは知るような状況ではなかった。
西暦2097年 復興の本格化
手始めに除染から始まった。膨大な範囲だが
やらなければならない。やらなければあの栄華を手にできないのだから。
この頃、物質的に満たされる事が出来なくなった人々は宗教に救いを求めた。
西暦2105年 接近する小惑星の発見
大戦に巻き込まれず奇跡的に起動していた天体観測用の衛星が小惑星を発見。90%の確率で衝突するであろうという試算が発表される。
大戦前にある機関が対宇宙防御装置とかいうものを作っていたが、もはや過去のものであった。
ここでようやくヒトは気づいた。何故あの時あの国の挑発に耐えられなかったのか。何故あの時あんなにも資源を欲して他国に手を伸ばしていたのか。この戦争さえしなければ、この危機を乗り越えれたはずなのに。だが悔やんだところで小惑星の軌道は変わらないし、消滅もしなかった。
同年 小惑星への対処方が検討される
火星に行く為の技術はかろうじて残っていた、正に奇跡だった。だがこの奇跡は殆どの者にとっては地獄に押し込められたも同然だった。
2115年 火星への移住開始
急ピッチでコロニーの建設が進められた。どうやら身体的に生きるための最低限の設備は揃っている。が、精神的にはかなり苦しいだろうということは一目瞭然だった。
そして火星に行った者はその者達は勿論、その子孫も地球に降り立つ事はなかった。
三年後最終便が火星に出発し、残された者はどうにかして審判から救われる方法を導き出そうとしていた。
そして、最終便が火星への旅をしている最中にある変化が起こっていた。結核菌が宇宙船で突然変異を起こした。感染率は激増、致死率も飛躍的に上昇した。これはコロニー内で瞬く間に広がり、誰一人として逃れられなかった。神は地球という檻を抜け出した脱獄犯を見逃しはしなかったのだ。同時にこの者達にも判決が言い渡された。「死刑」と。
2117年 シェルター設置完了
隕石用にシェルターが設置されたが、何年も閉じ籠ることは食料的に不可能であったが効果がある事は確かであった。ここまでくればヒトにできる事は祈る事だけ。
2118年 隕石衝突
審判が下された。地上に君臨していた種族の威厳は残っていなかった。残されていた高度な道具もどう丁寧扱っても20年で使い物にならなくなった。衝突から数ヶ月が過ぎ、食糧を求めて地上に這いずり出たヒトが目の当たりにしたのは薄暗い中に塵に埋もれた街だった。気候も一時的ではあるが大きく変わった、とにかく寒いのだ、至る所にこの寒さに耐えきれなかったであろう生き物の骨が転がっている。
212?X年 飢餓の時代から数年
審判の日から何日、何年経ったのだろうか、10年も経ってはいないだろう。かなりの人数が生き残っていたが、今はここから最短距離のシェルターの人数を合わせて500人といったところだろう。遠くのシェルターにも行ったが亡骸だけが転がっていた。日記らしき物をみるにこの場所は食糧はとても乏しく限界だったようで獲物を求めてこの地を棄てた。とうとうヒトは自然の一部として生きることを強いられた。
今は西暦何年かはわからない。わかるのは長から聞く我々人間はかつてはとても裕福な暮らしをしていた事だ。世界中に数時間で行ける飛行機という空を飛ぶ乗り物。黒、白、黄色の肌をした人間が近くで生活したこと、もっとも自分達は黄色の肌らしいが。地球の裏側の様子もその瞬間に知る事ができるガラス。その他にいろいろあるが、私はその中でも幼い頃から世界各地の文化などの話を聴く事が大好きだった。
そして、大人達にあれこれ縛られずに行動ができる歳になった。昔から世界を旅をするんだと周りに言いふらしていたが、それを実行する事が出来る。母さんはいつも言っていた
「そんな夢幻ばかり見てないで、いつかお嫁さんになる人を見つけなさい。」
ということばかりを言っていた。その事でいつも裕福な時代では結婚の必要もなく独り身で人生を謳歌していた人が大勢いたと、長の話でもあった。
勿論、私もそのつもりだ。あんな愛がなんだのと雁字搦めにされて何が幸せなのか全く分からない。これには父さんは理解してくれた
「そんな人生も面白そうだな。しかも世界を旅するんだろ?その行ってきた場所とかそこの人たちの事を色々教えてくれ。」
と前々から言ってくれていた。
準備は着々と進んでいた荷物を運ばせる牛や狩り道具などなど、道具は着実に揃っていった。
出発まで数日になって友人達と遊び回った。
釣りをしたり、宴をしたり。とても楽しい時間だ。 それにしても最近めっきりターニアが来なくなった。暇な時にしょっちゅう話していたが、どうしたのだろうか。
「お前が旅に出るから寂しいんだよ。」
「そうそう、ちっさいときからお前ら仲良かったもんな。」
「女は大切にするもんだって俺の父ちゃんも言ってたぞ、出発前に一度は会っとけ。」
イルス、リーダ、ユルキがそれぞれ言った。
まぁ、確かに何年も帰ってくることができないだろうから、明日会いに行くことにした。
周りは薄暗く、ザーっと音がしていた天気を高い確率で当てるダルマンおじさんが言うには出発日には回復すると言っていた。天気がどうであれ出発するが。
朝食に塩と香草で味付けされた煮魚を食べ、顔を洗い、ターニアの家に向かった。
「ごめんください。」
そう言って出てきたのはターニアの母であるマーマルおばさんだった。
「あら、ニックじゃない。ターニアでしょ?ちょっと待ってて。」
マーマルおばさんはターニアを呼びに行った。なんでも部屋に閉じこもって食事のときにしか出てこないらしい。そんなに時間はかからずターニアは来た。どうしたことか、彼女はあちこち体に擦り傷があちらこちらにできていた。あの3人の言っていたこともあるし、深入りはしないでおこう。
「久しぶりターニア。どうしたの最近めっきり顔見なくなったけど。」
「なんだっていいでしょ。それよりニック、本当に行くの?」
「勿論行くに決まってる。ようやくいろいろな都市や文化をこの目で見ることができるんだ。」
どのような街があるのか考えるだけでワクワクするが、彼女の答えは残念そうな意味合いだった。そんなやりとりを終え、村の近くにある小高い丘の大木に作ったツリーハウスに登った。さっきの続きを話した。
「長が話す過去の人間の文明がどれほど発展したいたかというのも面白くて、もう小さいときから大好きだった。地上をとても速く移動できる乗り物、鳥よりも更に高く、飛べる乗り物とか・・・」
「でもそんな過去のものを想像してもしょうがないでしょ。今はそんなものは何も残っていないことはわかってるでしょ。それに世界についての文化とか詳しく聞いているのに。どうして行きたいの?」
ターニアは興奮気味に言った。
「もちろん、わかったいるよ。ただ今はどんな状況か、自分の目で確かめたいだけなんだ。」
とはいうものの、地球という広大な領域があるのに、この小さなムラの領域に飽きただけなのかもしれない。それからターニアは旅に関する話題を話さなくなった。諦めたようだった。
そんなこんなやっているうちに日が暮れた。彼女を家まで送ると前で待つように言われた。すると手に何か持って出てきた。
「これ、お守りとして持って行って。」
それは、砂金と水晶を付けた首飾りだった。なるほど、最近見かけないと思っていたら、これを作っていたのか。
「ありがとう。」
その後はいつも通りの別れの挨拶をして、家に帰った。
出発
あれから3日たち、とうとう出発の日になった。天気は快晴、装備も完璧、牛の調子もすこぶるいい。
ムラの人達に挨拶を終わらせて出発しようとすると、両親、例の3人組、ターニアが寄ってきた。
「体に気をつけてね。」
とお母さん。
「危険なこともあるだろうが、めげずにやりやり遂げろよ。」
盗賊とかは覚悟しているし、返り討ちにするつもりだよ。お父さん。
「お土産を持って帰ってきてくれ。そうだな、金をたんまり頼む。」
「じゃあ俺はダイヤモンドとかいうやつ!とびきりデカいやつ!」
「馬鹿野郎!そんなもんは200年くらい前の戦争とかで無くなったって、長が言ってたぞ。俺は世界の希少な物。」
イリス、キール、イリスは全くいつもと同じ感じだった。無理難題なお土産だがそれなりのものは持ってこよう。そうやって別れの挨拶を終えると、ターニアが歩み寄ってきた。
「もう何回も聞いたけど、帰ってくるの、いつかわからないんだよね?」
「分からない、5年くらいで帰ってこれればいいかなとは思っている。」
「そう・・・。」
呟いてしばらく沈黙が続いた。
「・・・それじゃあ」
その瞬間、彼女が抱き付いてきた。
「わたし、待ってるから。」
そう言ってから30秒くらい経ったか、彼女は腕を解き離れた。
「もちろん、帰ってくるよ。」
そう言い残し、わたしは西へ向かった
草原と砂原の境界線
出発してから2週間たった。周りは木々は疎らになり低い草ばかりになっていた。水辺もかなり減ってきた。所々に人がいた形跡があるが日に日に目にする事が多くなってきた。どこかに集落があることは間違いない。
とりあえず、今日は半日歩き休むことにした。昨日狩った鳥を食べ、テントを張り、くつろぎながら、地図で現在地を確認した。確認を終わらせて昼寝をした。
目を覚ますとどうやら2時間経過しているようだ。ちょうど焚火をした跡があり、ここを使う事にした。ちょうど鍋も置けるスペースがある。久しぶりにゆっくり調理できる、ついでに干し肉も作っておこう。そういう事で鳥を狩れるだけ狩ってなかなかの大きさのやつが4羽獲れた。空気も乾燥していて乾燥させるにはちょうどいい。解体してネットに並べて後は待つ。夕食にとっておいた1本の脚を焼いて塩を振って食べた、おおきいだけあって食べ応えは充分。休むつもりがつい狩りをやり込んでしまった。肉干してるから明日は確実に休むから問題ない。
気がつけば周りは明るくなっていた。それにしても周りから話し声か聞こえる。
「 レ ル カ 」
「 ダ ノ ブツ、コノ ン 二 イ 」
「オ テ コイ 」
「 ン オ * 」
4人かな。とにかく弓矢を持ち、恐る恐る外を覗くと、ダボダボな服と頭に簡単に作れるであろう帽子を被っている。初めて出身地以外の人を見た。それと、どうも攻撃の意思はないようだ。ひとまず安心し、外に出てみた。
「ウォオア!?誰だお前!」
と言い4人とも驚いていた。あまりの驚きようにこっちまで驚いてしまった。双方ともオドオドしていると向こうの1人が
「なんだ?その服。それにここら辺じゃいない牛まで連れて、何処からきた?」
「東から来た。200年くらいまではインドという国だったらしい。そこから来た。」
「インド?そんな国の名前昔話で聞いたことがあるような無いような。」
「そんなことは後々考えよう。それで、どうしてこの場所まで来たの?」
「この世界を旅する為に歩いていたら着いたよ。」
「世界!?やめとけって、その格好といい、牛といい、こっから先は自殺するようなもんだ。」
「でもせっかくここまで来たんだ、俺たちの村まで来るか?」
そんなこんなで、お邪魔する事になった。
着いていくこと3時間余り。建物が見えてきた、それもかなりの数が見える。大きな町のようで聞くと、はるか西の国、地域と交易をしている。うまくいけば交易している人に言えば、行く手段がわかるかもしれない。
「そういえば、旅人さんの名前なんていうの?」
「あぁ、ニック。君たちは?」
耳に輪っかをしている人が
「ヤヌルだよ。」
不思議な模様をした手首の布と被り物を身につけている人が
「ダッカル。」
ガッチリした体格の人が
「俺はズグルト。そしてもう1人はビビり」
「俺ビビりじゃねぇし!この前、象狩ったのだって俺のおかげだろ!」
「その後、その象に追いかけ回されてたじゃねぇか。後それ一年以上前だろ。」
仲間曰く【ビビり】は「ストーグ」という。
「ニック、泊まる所ないんだろ。俺ん家宿屋やってるんだ。泊まれるように頼んでみるから、何日か居るなら泊まっていったら?」
ヤヌルが言った。
「通貨?とか持ってないし、めぼしい物も持って無いけど本当にいいの?」
「大丈夫、大丈夫、親父は外国とかの話とか聞くの大好きだから、気まぐれで料金を安くすることもあるし、ニックの国の話をすればそれで十分だ。」
「それでは、お言葉に甘えて。」
という感じてお世話になる事になったが、その前に何か食べていこうという話になった。町の中心部の商店街の一角にあるその食事処は人気が高くいつも混むらしい。その中で一押しの料理は複数の交易地では一般的であり、且つ美味である物をそれぞれ組み込んで提供している。牛(又は羊)のステーキ、チーズ、パン、イモの丸ごと蒸し、カボチャの煮物などなど入って、お手頃な価格で食べらるらしい。どういう価値なのかは、分からない。それに初めて聞く物もある。それで興味を掻き立てられるのは、旅の醍醐味なのだろう。
それは、店が並んでいる所の中心部の広場の一角に堂々と構えて、それでいて立派な建物であった。今日は混んでない方という事だが、人の多さに圧倒されていた。離れないように人混みをかきわけて、テーブルに着いた。イスが足りないのでその辺に置かれていたものをぶん取った。
「さて、何食う?」
とストーグが半分言った所で、3人は
「牛のステーキ」ヤヌル
「ソーセージ盛り合わせ」ダッカル
「パンのチーズ焼き」ズグルト
「それじゃあ、ニックはどうする?」
ストーグは聞いたが、どういう物があるのかサッパリ分からない。
「ここに来る前に言っていた、あのイロイロ入っているオススメのやつ。」
これで注文は終わり。ストーグは「魚の塩漬け焼きと水」を頼んだ。
店を見回してみると細長い筒を持っている人達が食事をしている。聞くと、自警団で稀に現れる盗賊を撃退している。かなりの規模で事あるごとに向こうは数人は殺害されようが、首、串刺しをして晒そうが定期的に盗みを働くという。細長い筒は銃で射程は弓矢と変わらず、熟練者は15秒に1発程度撃てるらしい。ここから北西にあるバチカン国の最新型の武器。200年前ほどの性能は無いようだった。一方で旧型の銃は扱いが難しく、暴発しやすく故障が多いという欠点があった。それでもバチカン国は東に広大な土地・人口を要するソシア帝国との戦争で一切の侵攻を許していない。それだけの有用性を持っていることは実戦で裏付けられている。
一方でソシア帝国の銃は性能はバチカン国より優れているらしいが、どういうことか数を用意できないようである。それで今は拮抗状態で停戦している。
さて、お待ちかねの料理が運ばれてきた。思っていた以上にたんまりと盛り付けられていた。中央にデカデカした肉塊、左にパンとチーズあとバター、右にカボチャの煮物とイモ、肉塊の上にソーセージ3本。肉はスジがなくて食べやすく噛みごたえも十分。パンは触るとフワフワしているが口に入れると弾力が凄い、チーズとバターを添えるといい感じ。イモには塩・コショウ・バターなどなどをお好みで。ソーセージは肉汁たっぷり、ヤケドに注意。カボチャの煮物は素材の味を存分に発揮していて甘い。
ヤヌルの頼んだステーキはかなり大きい。ダッカルの頼んだ盛り合わせは、香草を色々と練りこんであり、味はもちろん違う。ズグルトのパンは中と上にたんまりとそれぞれ二種類のチーズが使われている。ストーグの魚は塩辛い。大工とかの力仕事の人たちには好評。各々食べ終わり、店を出た。満腹。
次はどこに行こうか。そんな話をしていると、破裂音が聞こえ、悲鳴と怒号が続く。自警団が店から飛び出して破裂音のした方向に走っていった。
「くそったれが!盗賊が出てきやがった。」
「ニック!ヤヌルの家まで行くぞ、あそこは宿屋だが建物は頑丈で親父さんの趣味で武器も多い、銃もある身を守るにはうってつけだ。離れるなよ、着いてこい!」
蜘蛛の子のようにその場から離れた。
周りは頑丈な建物に入るまで足を止めるなとひっきりなしに続ける。走っていて気付いたのは街は網目状になっている事だった。いっとき大通りを走り左に曲がった。通路を3数えたところで泣き声が聞こえる。こんな騒動だ、逸れるのも無理はない。声が聞こえる方に向かい細い路地を見て回った。その時に合図のようなものがなった。自警団が構築した防衛線を通り抜けて奥まで来ている恐れがあることを知らせるものらしく、かなり危険な状態であった。逃げるのももちろん話に上がった、だが迷子に近づいているのも確かだった。この1ブロックにいるはずに違いない、もし居なかった諦める事にし、探そうとすると自警団向かってきた。向こうに行け、早く逃げろと伝えているが近くまできた時に察したようだった。
状況を説明すると、納得してくれたようでここから2ブロック先に防衛線を構築し、今のブロックで発見の有無に関わらず逃げるように言われた。
探し始めて2分が経過したところで近いところで銃声が鳴り響く。このままだと自分達も危ない。これ以上探すのは難しい避難する事に全員が納得した。その時、路地からトコトコ泣き噦りながら迷子は出てきた。間髪を入れる事なく保護し、一路ヤヌルの家に向かう。それにしても何故、私は貧弱な木の棒を持っているのか。弓矢と刃物を持っているというのに。後で聞くと、迷子を探す途中の銃声で驚いて拾っていたらしい。なんともまぁ・・・
なんとかヤヌルの家に着いた。銃声はかなり遠くなって散発的になっている。もうヘトヘトで中に入ろうとすると、
「待て入るな、ここで待ってろ。」
ヤヌルは言って建物に向かっていった。
「耳塞いどけ、ほらお嬢ちゃんも。」
そうズグルトは言うと耳を塞いだ。それと一緒に迷子も塞ぐ、後の2人を見るとやっぱり塞いでいる。かなり疑問に思ったが、取り敢えず耳を塞いだ。
「父さん、母さん、ヤヌルだ!開けるぞ!」
微かに聞こえ、入ったであろう瞬間建物から銃声が鳴り響いた。何事かと2人に聞けば、こういう時は必ずこうなるらしい。そんなことに呆然とするしかなかった。
「入っていいぞ。」
と言葉が聞こえ、建物に入るやいなや、夫婦喧嘩の真っ最中のようで
これもこの時のいつもの光景らしい。
奥の広間に案内され入ると多くの人が集まっている。窓に木やら石やらはめてあって昼間であるが暗い。近くの空いている場所に崩れるように座りこみ、すぐに従業員が水を持ってきてくれた。これを飲み干したところで、これからどうなるのかと考え・・・
辺りが眩しい、そういえば何をしていたんだっけ。美味しい料理を食べて、なにかから逃げていた。どうして逃げた。何か恐ろしい物を持っていた。それは味方の人達も持っていた。必死になって逃げる程の物。・・・『逃げる』・・・
そこで起き上がると前とは違う雰囲気だ。なんと言っても明るい。いったい何がどうなっているのかわからない。ぼうぜんとしているとヤヌルが食い物を持ってやってきた。
「聞いたか?奴等追い払われたってよ。よく寝れた・・・訳ないか、とりあえずゆっくりしていってくれ。」
「ありがとう。」
「あぁ、それとどこか店に行きたくなったら案内するから、遠慮せず言ってくれ。」
「そういえば、他のみんなはどこに?」
「みんな家に帰ったよ、昨日のアレがあって家族が心配だからって。」
「そうか、ありがとう。」
会話を終えるとヤヌルは行った。疲れのせいか、ただ何も考えず、気づいたら飯は食い終わった。
奥の広間に案内され入ると多くの人が集まっている。窓に木やら石やらはめてあって昼間であるが暗い。近くの空いている場所に崩れるように座りこみ、すぐに従業員が水を持ってきてくれた。これを飲み干したところで、これからどうなるのかと考え・・・
辺りが眩しい、そういえば何をしていたんだっけ。美味しい料理を食べて、なにかから逃げていた。どうして逃げた。何か恐ろしい物を持っていた。それは味方の人達も持っていた。必死になって逃げる程の物。・・・『逃げる』・・・
そこで起き上がると前とは違う雰囲気だ。なんと言っても明るい。いったい何がどうなっているのかわからない。ぼうぜんとしているとヤヌルが食い物を持ってやってきた。
「聞いたか?奴等追い払われたってよ。よく寝れた・・・訳ないか、とりあえずゆっくりしていってくれ。」
「ありがとう。」
「あぁ、それとどこか店に行きたくなったら案内するから、遠慮せず言ってくれ。」
「そういえば、他のみんなはどこに?」
「みんな家に帰ったよ、昨日のアレがあって家族が心配だからって。」
「そうか、ありがとう。」
会話を終えるとヤヌルは行った。疲れのせいか、ただ何も考えず、気づいたら飯は食い終わった。寝転がって考えていると、連れてきた牛のことを思い出した。ヤヌルについてきてくれるように頼んで一緒に探してくれる事になった。
まず初めに食事処に行く事にした。途中出会った人に聞きながら向かったが、誰かが逃げ惑う中なんとか引っ張っていった人を見たという情報はあった。到着し、中を覗くとあの喧騒の跡の横にぽつんと食事をしている人達がいる。店員は片付けを急いでいる。中に入り、話をするとアラドという人が連れていったらしい。店員とヤヌルによると、この街の家畜を売買で生計を立て、更には獣医までやっている。これらの仕事でこの街有数の富豪である。昨日のことで店員が逃げるよう、うるさく言っても
「こいつはおそらくあの少年のやつだろう。確かに奴らは迫ってはきているがとにかく私はこれを放っておくわけにはいかん。」
と聞かなかったらしい。日が上がる頃彼の召使いが食事処に手紙を持ってきたという事で受け取り内容を読むと
旅人さんへ
あんたの牛は無事だ
とにかく早く迎いにくるように
アラド
裏には家までの地図が描かれてある。店員に一言礼を言って足早に彼の家に向かった。
アラドについて話を聞いていると、この街のでの家畜はとても重要で、売り方が上手く、しかも獣医をやっていることもあり動物の状態もわかり、この街の動物や交易でやってきた人々が乗ってきた動物を怪我や病気は治せるものはなんでも治すという無くてはならない存在という。
一際大きな建物が見える。あれがそうらしい。近づくにつれて動物の鳴き声が大きくなっている。門に着いた。何度か門を叩くと召使いとおぼしき人物が顔を出した。要件を聞かれたので手紙を見せると、お屋敷に案内された。アラド氏は今、用事で留守にしているが、すぐに終わる用事らしく。自分が来たら家の中に入れ、待たせるように言われているらしい。案内され、椅子に座っていると何やら飲み物を持ってきてくれた。
食事処で食後だと思われる人達が談笑しながら飲んでいた飲み物と同じ色をしている。コーヒーというものらしい、故郷の村の長老の言っていた苦い飲み物の1つだろう。これを飲みながらヤヌルとちょっとばかり話していると彼がやってきた。
「君があの牛の持ち主かね?」
自分を見るやいなや質問した。
「そうです。」
と答えて、早速牛の元に行く事になった。世界の事に興味があると伝えると話を聞いていると有力者の事だけあって色んな事を知っていた。あまりに面白いのでアラド氏は少し困った様子だったがお構いなしだった。要反省。
牛を見てみるとかなり元気で何よりだ。ひとまず礼を言うと彼は少し考えて
「もしかしてその牛でここから先に行くつもりかい?」
と聞かれて、勿論ですと答えると、
「そうか。」
と少し悩んでいるようだった。少しして口を開いた、
「牛でこの先に行くのはかなり厳しいぞ、何より水が特に少ないそして暑さも厳しい。最悪あんたも牛も死んでしまう。」
色々と詳しく長老の話や書物で見聞きしたより更に凄まじいとは思っていなかった。ここで終わってしまうのか不安になった。
「君の旅のことだが、とりあえずまた明日来てくれ、とりあえず知り合いにあたってみるよ。」
「はい、ありがとうございます。何から何まで。」
というやり取りをしてお屋敷を後にした。
ヤヌルの家に到着し、中に入るとダッカル、ズグルト、ストーグがいた。
「おー、聞いたか、昨日の盗賊の奴ら新型の銃を持っていたぞ、火薬と弾丸が一緒になった弾を撃てる。」
今朝、区画ごとの長が集まって話し合いをしたという事でこの銃が話題を殆どかっさらった。勿論この街の人々はこれを作れないか試行錯誤している真っ最中。この銃の話題が終わったら、自分達の村のことや、ヤヌルの両親、主に父親に村のことを話した。
翌日、アラド氏のお屋敷に行くと、召使いに案内されるとアラド氏ともう1人居る、召使いではない。
「君か、待ってたよ。昨日の件だけど、彼の交易団が君のいう北西の国バチカン国に近々行くらしいから、そのついでに送ってくれるらしいぞ。」
「本当ですか!ありがとうございます。」
心底嬉しい。
「ここでこれがどのくらいの価値かはわかりませんが、今までのお礼です。」
と、村の工芸品を渡した。今回のような事があるだろうから、村から工芸品をかき集めて、持ってこれるだけ持ってきていた。渡したのはそこそこの大きさの風呂敷で幾何学模様の故郷で今流行りの模様だ。
「ニックとか言ったね、私は二フラム。君をバチカン国まで送り届ける。よろしく。」
出発は1週間後。出発までの間は交易団の人と装備を買いに行ったり、あの4人組に街を案内してもらった。最初を除けばとても楽しい1週間だった。
「もう出発か、もう少しゆっくりしていけばいいのに。」
「もうしっかり楽しめたし、文化にも触れる事が出来たし、貨幣も持ってな・・・」
「そんなものは気にするな、親父は楽しんでたし。今までのストーグの貸しで今回は周ったから。」
遮るようにヤヌルが言うと。
「はぁ!?お前らが金を持っきてないって言うから出してたからな、後で返せよ。」
とストーグが間髪を入れず声を張り上げた。
「この前話した新型の銃あっただろう。あの銃なんとかマネて作ったやつだが、しっかり動くから持って行くといい。身を守るのに役に立つはずだ。」
と言いダッカルが銃をくれた。
「この保存食を持っていけ。交易団がいつも携行するやつだ。半年は保つから遭難したりした時は食べればなんとかなる。」
とズグルトが1週間分の保存食をくれた。
「何から何までありがとう。」
礼を言うと
「気にするなよ、色々と面白い話を聞かせてくれたし楽しかった。もし、ニックが故郷に留まることを選んでたらこんなことにはなってないから。」
この愉快な4人に再び礼を言った。
交易団の場所まで行くとアラド氏が居た。
「この度は色々とありがとうございます。」
とお礼を言うと、
「そんなもの問題ないよ、困った人を助けることが私のモットーだからね。」
彼は満面の笑みで答えた。
出発の時間がやってきた。交易団が出発するときは大勢の人々が見送るようでかなり賑やかだ。目指すはバチカン国。さぁ出発だ!
変な文章が相当数あり読みづらい、わかりづらい等あるかとございます。それでも、こんなクソみたいな小説を最後まで読んでやったぞ!という人もそうでない人もありがとうございます。
続きはかなり時間がかかると思いますがお待ち下さい。