~この世界で生きていけるようにpart・Ⅰ~
ボチボチ趣味として…。
~この世界で生きていけるようにpart・Ⅰ~
プロローグ
―勇者、というものを、聞いたことがあるだろうか?
―【この世界】に、勇者は存在する。
―【英雄・アーサー】
―【英雄・ジャンヌ=ダルク】
―【英雄・ペルセウス】
―【英雄・ヘラクレス】
―【英雄・ガルーダ】
―【英雄・孫悟空】
等々、数を挙げればきりが無い程に。
そして、勇者が討ち滅ぼす悪も又また 、この世界には存在する。
―【魔王・アンラ=マンユ】
―【魔王・アジ=ダカーハ】
―【魔王・サタン】
―【魔王・ディポーン】
―【魔王・ニズヘグ】
―【魔王・バハムート】
―【魔王・ファブニール】
―【魔王・ヨルムンガンド】
彼らもまた、数を挙げればきりが無く、延々と【勇者】によって滅ぼされる運命にある。
それが、【この世界】与えられた役目。それが、【この世界】に与えられた終焉と永遠の円環。
世界はそれを受け入れ、【矛盾無き永遠の円環】として、あるべき姿で【永遠】を受け入れた。
【悪】になぶられ、【正義】に救われ―ただそれだけを繰り返す、ただそれだけの世界。
ようこそ、【追憶の円環】へ。
「詰まらない」
糞だ、クソ以下だ。
自分は死んだ、そして、この世界の真実を、自分を殺した後に話しやがった美少女、【魔王・アンラ=マンユ】 に教えられた。
『ですが、貴方はそれを受け入れる以外、選択肢はありません。死んだ貴方が、たとえ本当の神であろうと、死ねば世界の円環に従い、貴方は私の【悪】に抑揚効果として死に、きおくをうしなって【悪】に滅ぼされるか、【正義】に救われるかを行動で選ぶのです』
…ほう、ナルホド…。
「つまり人はなされるがままに、神への求心力を高めているわけか」
【ええ、そう言う事になります】
「【悪】は【神】より力を承った英雄によって滅ぼされた、ぁあ、神よ、我らをお救い下さり、誠に感謝致します―ってか」
【ええ】
「そうかそうか、詰まり世界は、そんなクソだった訳か」
【ふざけんなよクソッタレがッ!!】
【ええ、こんな『クソッタレ』な世界、本来あるべきでは無いのです。ですが、この世界を創造したのは、このような状況を創り出した神、創り手が何をしようと、『創られたモノ』である我々には何をしようも無いのです】
「で、それを言ってお前は俺に何をさせたい」
【何もさせられません。全て、神々によって管理されるべきものですので】
「じゃあ―何故それを俺に言ったッ!!!」
【気まぐれ―】
「何度も言うぞ、ふざけんなよクソッタレがッ!!!」
【―…】
「これ以上気まぐれとか言ったらテメエへの好意なんぞ忘れて今すぐ殺しに行く、悪いが俺は有言実行をポリシーとしているんでね、必ず糸口を見つけてテメエへの復讐を果たさせて貰う」
【そうですか…】
「そうだとも。で、お前は俺に何をさせたい?」
【それは―】
「ハッキリ言うが、俺は美少女にはトコトン甘いくそったれなクズだ、お前みたいな美少女魔王を殺さなかったのも、それが理由だ」
【…】
「さあ、言うんだ。お前は【軍神兼勇者】として数々の【魔王】を討ち滅ぼしたこの【俺】に一体何を望み、世界について話した?」
【終焉】
「終焉か」
【はい、私の望みは【矛盾無き永遠の円環】に終焉を迎えさせる事、です】
「解った」
そんな事は無理だと、アンラ=マンユの瞳が雄弁に語っている。
ずっとそうだった筈だ、【悪】としての存在意義に疑問を持ち、同じ【魔王】である部下に疑問を言っても、それは過ちだ、と言われ、己の存在意義を修正され、イヤイヤ人を殺し、唯ひたすら己の死を望んだ最強の【魔王】。
「もうお前は一人じゃない、この世界の円環に終焉を与えた時には―俺に惚れるがいいさ美少女め」
彼は、善神として、広くその名を轟かせたよにも有名な神。
【帝釈天】―又の名を、元最強の魔王【インドラ】
堕ちる日差しよりも、より早く。
輝く太陽よりも、より眩しく。
【金剛杵】《ヴァジュラ》と呼ばれる己の神器を掲げ、地上に豪名を轟かせ、天地開闢より神々をほふり魔王をほふった己の肉体は、遂に朽ち果てた。
「長くも、楽しい日々だったな。しかし、死に際によもや【魔王】に恋する等…いや、笑い事ではすまんな」
我が身は、朽ち果て、次の転生者へと移り変わるであろう。その者が、我と同じ女たらしであったならば、きっとあの【魔王】に恋をする。
「また会おう【魔王・アンラ=マンユ】。次は一介の男としてな」
【ええ、また】
彼女の涙―それだけで、己は彼女の背負うモノ背負う覚悟を決めた。
この数時間後、世界に有り得ないエラーが発生した。それは、【魔王・アンラ=マンユ】のエラーと同様に、【世界】に疑問を持つものだった。
何時か朽ち果てる運命にある【悪】を背負った魔王と、【正義】を掲げた最強の勇者は、今―。
世界を滅ぼす為に―戦いに、身を投じた。