優しい復讐
皆さんに挑戦します。
僕の右隣には、彼女。
僕の左隣には、彼。
僕は、真ん中。
彼女は僕の初恋。
彼は、彼女の初恋。
彼女は、彼の初恋。
未だ初恋は変わらず続いている。
気持ちのすれ違いは、よくある。
すれ違いの相思相愛。
彼女は、僕と付き合っている。
だが、僕の気持ちは晴れない。
彼女の幸せが、僕の幸せ。それは、僕の自信の無さからきている。
彼女を振り向かせる自信が無い。
彼女を幸せにする自信が無い。
彼女の幸せなら僕は、迷わず悪役に徹しよう。
幸い僕にはその才能がある。
そう決意したある昼下がり。
季節は夏。
次の日、僕は拾い物をする。
かなり特殊な拾い物。
学校帰りだった。
10歳前後の女の子だ。
これは、もしかしたら必然だったのかもしれない。
この子は、悪魔だ。
僕の幸せを奪う悪魔だ。
そう直感が告げている。
だが体は動いてしまう。
女の子は、泣いていたから。
それはとても悲しそうだった。
大丈夫?
声をかけてしまった。
それが始まり。
終わりに向かう始まり。
悲劇なのかはわからない。でも確実に喜劇ではない。静かに向かって行く。
もしかしたら僕はこの時予想していたのかもしれない。
どうしようも無い悲しみの中で、僕は少女に手を差し伸べる。
それは、共有できる存在と思ってしまった。
僕を救ってくれる存在なのかもしれないと思ってしまった。
そんな涙。
一時でいいから僕を救って下さい。
それから僕達は、共に暮らすようになった。
幸い僕は一人暮らし。
冷たくて色の無い部屋は、少女が来てから温かくて、とても明るくなった。
部屋は僕の心を表していたのかもしれない。
救われた。
僕は救われた。
ただそれがもうすぐ終わると分かっている。
少女が来てからちょうど1ヶ月。
そんな事を思ってしまった。
ある雨の日だった。
季節は、秋。
空は赤かった。
それはとても残酷な色。
血の様な色だった。
僕にはそう見えた。
彼と彼女は、未だにすれ違い。
少女と出会い少し近づいたけどすれ違い。
彼、彼女、少女は仲が良い。
それはとても嬉しい事。
…のはず。
だけど僕は、言い様の無い感情に支配されている。
焦り。
それに似ている。
だが明らかに違うなにか。そんな感情を押し殺す。
この日々はいつまで続くのだろう。
そんな事を思ってしまった。
僕の気持ちは晴れない。
少女が来てから僕の気持ちは少し晴れた。
だが未だに僕の気持ちは赤色。
まるで空の様な色だった。ある晴れの日。
季節は秋。
この日が最後。
全てが終わる日。
僕、彼女、彼、少女は共に出掛けていた。
この日は、空が灰色だった。
事は、いつも突然。
少女は意図して悲劇を起こした。
それを知ったのは、終わってから、数日後の事だった。
彼は人に心を開かなくなり、僕はますます心がぐちゃぐちゃになった。
少女の優しい復讐。
それは見事成功した。
彼という存在を巻き込んで。
すれ違い。
それは、もう無い。
すれ違う事すら出来ないのだから。
命。
なぜ人はこんなに命に執着するのか。
人。
なぜ人はこんなにお互いに依存するのか。
それが分かったら人は人で無くなる。
それでも僕は知りたかった。
神様…いるならどうか僕を救って下さい。
人で無くなってもいいんです。
教えて下さい。
僕は答えを知るまで悪行を続ける。
それが彼女に対しての償い。
それが少女に対してのささやかな反抗。
僕の心は、赤色だった。
部屋は冷たかった。
空は灰色だった。
ある曇りの日。
季節は冬。
決意はまだ続いている。
僕はこのまま救われる事なく、幻想に生きていく。
冷たくて色の無い幻想の中で。
この文の集合体で伝えたかった事が分かればあなたは、勝者。分かりますか?