表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

第八話

「久しぶりね。人を牢屋に入れて、自分は私に化けてすり替わって、好き勝手してるなんて酷いじゃない」

「こっちは、テメェなんかの立場が欲しかったなんて訳じゃねえんだよっ! おとなしくしてりゃあ、こっちの用事が済みゃあ、返してやったのになぁ。テメェのせいで皆殺しにしなきゃならねぇじゃねえか。

出来るだけ影響を出さないようにしろって言われてたのに、皆殺しにしなきゃならねぇんじゃあ、まぁた、小言言われちまうぜ」

「皆殺しになんてさせないわ! 私があなたを倒して、自分の手で自分の立場を取り戻すもの」

 そう言って、二人は、戦いに入っていく。同じ魔術系統である二人だが、


「“グラキエス・トレース!”」

「その程度の魔法で俺を倒すだってぇ? 無理に決まってんだろ!

まずは、お前から殺してやるよ。

“グラキエス・ドゥオ!”」

 氷の魔術対決であったのだが、結果は明らかに女騎士の勝ちであった。女は三級魔術、女騎士は二級魔術を使い、女は吹っ飛ばされ、倒れる。誰が見ても、女は氷漬けになる一歩で危険な状態であったが、立ち上がった。


「クソが! 俺の一撃を食らって死なねぇなんて、生意気なんだよ。 むかついたから、テメェは他の奴殺した後で、じっくりと虐めてから殺してやるよ!」

「はあ、はあ……、何を勝手に勝った気になってるの? まだ、

これからよっ!」

そう言って女は傷ついた体に鞭を打って、立ち上がった。そして再び、魔術を使う。


「“……グラキエス・トレース”」

「“グラキエス・ドゥオ!”」

 再び女は吹っ飛ばされる。しかし、先程に比べて、女の吹っ飛んだ距離が少し短くなっていたので女は、何とか立つことが出来た。


「はぁはっは! 無駄な努力ご苦労さん。おかげで数秒だけ皆殺しにするのが遅れましたとさ! 泣かせるねぇ、自分の身を犠牲にして、他の奴らが、何時殺されるのかと怯えながら逃げる時間を、

与えるなんてよぉ!」

女騎士がそう言ったが、女は心折れる事無く、もう一度立ち上がる。


「本っ当に、うぜー、今ので確実に死んだと思ったのによ」

(今の魔術は本気で撃ったんだぞ。なんで死んでねえんだよ)

「私、死にかけている筈なのに、体が何だか軽い……?」

「けっ、強がりやがって、今度こそ確実に殺してやる!」

そう言って、女騎士は接近戦に持ち込んだ。

 しかし、女騎士の攻撃は躱され、反撃の突きを喰らう。剣を刺されたにも関わらず、すぐに再び剣を振るった。それも剣によって、受け止められ鍔迫り合いになり、女はそのまま押し切って、

女騎士を切り裂く。

しかし、それでも女騎士は倒れなかった。


「クソがっ! この馬鹿力がぁ!」

「あなたこそ……、剣で斬っても、突いてもまだ、死なないなんて、本当に人間なの?」

「人間じゃねぇって、言ったらどうする?」

「そんなこと関係ない。どっちにしてもこの街を危険にさらしたのは、事実でしょう」

「最初にあのちっせえガキドラゴンを目覚めさせたのは、あの男だぜ?」

「でも、あの森の結界を解いたのはあなたでしょう」

「……まあ、そうなんだが少しは乗れよな! 挑発に」

「今はそんなことをしている暇はないわ。早くあなたを倒す」

「はっ! 面白え……出来るもんならやってみろやっ! 近付かなきゃ、テメエに負ける要素なんてねぇんだよ!」


 事実、そうなのだろう。魔術勝負に持ち込まれたら、分が悪い事は女が一番分かっていた。

 しかし、今なら彼女は、限界すら越えられると思っていた。根拠の無いそんな思いを、自分を信じて、今まで何度も何度も練習してきた。そう思いながら、女は呪文を唱える。その呪文は、考えるよりも先に出てくる。まるで何かに導かれるように。


「喰らいやがれ! “グラキエス・ドゥオ!”」

女騎士の放った氷は、女にどんどんと近づいていく。そして、もう当たる、といった所で、


「喰らうのはあなたよ。“アポリトミデン・アルファ!”」

 女はそれを上回る魔術で女騎士の放った氷を飲み込み、女騎士に襲いかかる。完全に勝ったと油断していた女騎士は、避けることが出来ず、魔術が直撃した。

 流石の女騎士も凍って動かなくなった。そして、騎士たちに命令を出し、怪我人を運んだり、瓦礫を処理するなどの復興に向けての作業に入っていった。

 女は騎士より受け取った回復薬を飲み、傷の癒やしを早くするために石に座った。


「我々は、騙されていたのですね。気づかず、更には天野様を、地下の牢屋に閉じこめてしまうとは……副騎士長である私は、責任をとって自決しますので、他の者に処罰を与えないでやってください!」

「良いから、別にそう言うの。要らないから。それよりも早く、復興の手伝いをして一日でも早く、元の街に戻せるようにしなさいよ」

「はっ! 分かりました! 私達は、命をかけて街の復興に尽力する所存であります!」

「命かけろなんて、言ってないわよ……」

、そう言って、ため息をつく彼女、彼女こそ本当の女騎士であり、次期聖騎士候補でもある、天野水希だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ