第七話
「あれは……ドラゴンっ!?」
外に出た風哉はそう呟く。そして、森で出会ったドラゴンであることに、少し経ってから気づいた。
「何で、こんな所にドラゴンがいるの……」
「急ごう。早く止めないと街に甚大な被害が出るよっ!」
「そ、そうね。早く行きましょう」
ここは、街の端の方であるため、まだ被害は少ない。だが、被害が出るのは時間の問題なのだ。
「あなたは逃げてもいいのよ? 騎士に見つかると面倒よ?」
「僕が逃げる、だって? ご冗談を、街がこんな状況で逃げるなんて、そんな格好の悪いことするわけ無いだろ?」
「そう……、なら死なないようにねっ!」
二人の前に三人の騎士が現れる。
「おいっ! お前ら、この騒ぎに乗じて脱走したのかっ!」
「おい、今はそんな場合じゃない。放っておけ」
「いや、そんなわけにはいかないだろう。何をしでかすか分からん。捕まえておいた方が良いだろう」
「邪魔よ! 通らせてもらうわっ!」
女はそう言って、そのまま通っていく。風哉もその後ろを着いていくが、何もされなかった。
「なあ、何をやったの?」
「魔術を使ったのよ。殺してはいないわ」
「なるほど、後、騎士を殺すのは不味いだろうから、殺さない方が良いと思うから良い判断だよ」
二人がドラゴンの元に着いた頃、戦況は良くなかった。まず、一般的な騎士や兵士では、歯が立たない。よって、戦えるのは、一部の者だけだが、そんな者達ですら、殆どダメージが入らない。
「まずいわ。完全に押されてる」
「でも今、攻撃すると、人を巻き込んでしまう」
「こうすればいいのよ。……総員っ! 聞きなさい、死にたくない者は、今すぐ下がりなさいっ!」
そして、少し経った後、
「喰らいなさい……“プルグランデ・グラキエス”」
女の放った氷は、ドラゴン目掛けて飛んでいくが、ドラゴンは火の玉を吹き、氷を無効化した。
「そんな、あんな火の玉を吹くドラゴンなんて、聞いたことないわよっ!」
「一旦下がってて、今ので、ドラゴンが完全にこっちを狙ってきてるよ。特に君に」
「上等じゃない。絶対に凍らしてあげるわ」
「ま、まあ、落ち着いて。僕が隙を作るから、それまで攻撃したら、駄目だよ」
「……分かったわよ」
風哉は前に出て、魔道具の一つ、超風の扇を取り出す。因みに、風哉が、持っている魔道具は、七つある。
そして風哉は、走ってドラゴンに近づきながら、飛躍する。
「こっちだっ! 馬鹿ドラゴン……“カミフブキ!”」
風哉はドラゴンの顔の前で、扇を振る。すると、黄色いたくさんの粒が宙を舞う。
この技は、顔の近くで使うと、その閃光の効果で、幻影が見えるようになる。粒に当たると、電気が流れるのも、隙を作るのに最適な技の理由である。
しかし、ドラゴンはそれを喰らうとすぐに、火の玉を吹いた。ドラゴンはそうすれば、風哉に当たるだろう、位の気持ちで撃った。しかし、風哉からしてみれば、後ろが街であるため、
避ける訳にはいかない状況なのだ。
「くそっ、間に合え……」
風哉は魔力操作“反射”を使おうとしたが、無理だと判断し、
風魔法の“暴風の狂乱”を使う。しかし、完全に火の玉を消すことは出来ず、風哉にかなり小さくなった火の玉が直撃する。
火の玉を食らった風哉は、小さい瓶を取り出し、中の液体を一口だけ飲む。
そして、風哉の視界は光で埋まっていく。
「やあ、久しぶりだね。シェリア、早速で悪いけど力を貸してもらうよ」
「久しぶりに話しますのにどうしていきなり本題に入るのですか? 契約者様は、相変わらず、せっかちですね」
「今は、戦闘中なんだ。そう言うのは後にしてほしい」
「仕方ありませんね。了解しました」
次の瞬間、風哉は光に包まれた。そして、やけどや傷が無かったかのように少しずつ消えていく。
「来い……! “ラブンソル”
契約に従い、強欲たる我が身に力を宿せっ!」
宙から剣が出てくる。風哉はその剣を手に取ると、片手剣サイズだった剣が五倍ほどの大きさになった。
「喰らえ……“雷神の慈悲!”」
風哉が放り投げた剣が、回転しながら雷光を発し、ドラゴンを切り裂く。
「今だっ!」
風哉は大声で叫んだ。その声が届いたのかは、風哉には分からないが、女は魔術を撃つための詠唱に入っている。
「今度こそ……! “プルグランデ・グラキエス”」
女の放った氷が、ドラゴンを吹き飛ばしながら、凍らせる。
その時、別の人も同時に氷を放っていた。
……風哉を狙って。だが、それに気づいたのは、女一人だけであった。
氷は、風哉に当たったのだが、その直後、再び風哉は光に包まれて、風哉はすぐに回復した。
「何者よっ!? さっき氷を放ったのは!」
女はそう言うが、誰も名乗り出ない。当然だろう。既にそちらの方向には居ないのだから。
そのすぐ後、女は殺気を感じて、屈む。危機一髪躱したもののフードが斬られてしまった。
「っ! 誰!?」
「よう、私だよ。やっぱりアンタか……せっかく、牢獄の中に閉じ込めておいたのによぉ。どっかの誰かさんが逃がしやがって。
とりあえず、アンタの顔見た奴は皆殺しだよっ!」
そう言ったのは、風哉を捕まえた女騎士であった。そして、
フードが斬れて顔の見えた女の顔は……。
女騎士にそっくりだった。