第六話
「牢屋に入った気分はどう?」
牢屋に入れられた風哉の元に風哉を捕らえた女が訪れて、風哉は話し掛けられた。
「……最悪にきまってるでしょ? こんな場所に閉じこめられて」
「まあ、そうよね。……でも、あの中で何をしていたのか判明したら、事と次第によっては一生、もっと酷い扱いだからね」
「だから、何もしてないって」
「犯罪者は皆そう言うのよ」
「じゃあ、何て言えば信じてくれるの?」
「私がやりました……とか言えばいいと思うわ」
「それ駄目なやつだよね! 言ったら終わりだよね!」
「前例が無いから、まだあなたがどうなるかは決まってないけど楽しみにしてなさい。それと脱走なんて馬鹿な考えは止めておきなさい。命の保障はしないわ」
そう言い残して、女は去っていった。
「……楽しみな要素、一つも無いじゃないか」
そう風哉は呟くが、それを聞いている者が居ることには、気付かなかった。
「全く、あの男は何でわざわざあんな所に転移させやがったんだよ。結界を破るのだって手間がかかるはずなのに」
当然、風哉が今考えても分かるはずもなかった。諦めた風哉は、隠し持っていた魔道具の修理を始めるのだった。
☆☆☆
「何の音だ?」
夕方頃、風哉が作業を終了して休んでいた頃、地響きがした後、牢屋にいる風哉ですら分かるほど慌ただしく騎士たちが働いていた。
「おーい、外はどうなってるんだ? おしえてくれないか?」
風哉は通りがかりの騎士に、話し掛けた。
「今、忙しいんだっ! 話しかけるんじゃねぇ!
……ってお前まさか、あの森に入ってた奴か!?」
「えっ? そうだけど」
「くそっ! この事態はお前のせいだっ! だから、今ここで俺がお前を殺してやる!」
そう言って、騎士は風哉に向けて、持っていた槍を刺そうとしたが、それを避け、電気で気絶させた。
「何かが起きてるのは確かみたいだね。こいつの言っていた意味は分からないけど、脱獄するなら今がチャンスかな」
そう言って、風哉は魔道具の一つ、無限ロープを取り出し、騎士の落とした槍を拾って、鉄格子の檻を、
「“魔法槍”〔風〕タダノナギ!」
壊し、騎士を縛った後、壊れた槍を捨てて走りだした。だが、
「道が分からない! どうしよう!?」
道が分からず、右往左往していた風哉に、牢屋の中から、女が話し掛けた。女はフードを被っていて、風哉には顔が見えない。
「ちょっと、そこの君っ! 今どうなってるの?」
「分からないよ! こっちはここの道が分からないんだから」
「なら私をここから出して! ここの道なら分かるからっ!」
「へっ? ……良いのかな、勝手に出して。後から僕の責任になったりしないよね?」
「しないから! それにあなた、脱走してるんでしょ? 結局、捕まったら罰を受けるんだから、道案内がいて逃げられた方が良いでしょ!」
「まあ、そうだね。良いよ。出来るだけ後ろに下がっていてね」
「わ、分かったわ」
風哉は、鉄格子の檻を手で掴む。
「魔力操作応用版……“形状変化!”」
風哉がそう言った直後、鉄格子が、グニャグニャと曲がり始める。そして、どんどん形を変えていき、最後は破裂した。
「す、凄い……。物体の形を魔力で変えた人なんて初めて見た」
「今は、そんなことを言ってる場合じゃないよ。早く出口まで、
案内してほしい」
「あ、そうよね。分かったわ、着いてきて」
そう言って女は走りだした。風哉はその後ろを付いていきながら、どうして走っているのにフードがとれないのか疑問に思ったが、すぐにそんな場合ではないと切り替える。
「……どうしてあなたは、私を牢屋から出したのかしら」
女は風哉にそう問いかけた。
「どうして、って?」
「言ったらなんだけど、私の姿ってどう見ても怪しいじゃない。顔も見えないし、普通は、他の人にするか、見回りの騎士を脅すとかするじゃない」
「……その発想は無かった!」
「あなた、確実に馬鹿よね。
……それに私が凶悪な殺人犯だったらどうするの? もしかしたら、あなたを殺して逃げてたかもしれないのよ」
「失礼な、僕は馬鹿じゃないよ、多分。って、あの階段を上ったら、出口?」
「そうね。早く行きましょう」
そう言って、二人は牢獄から脱出する。だが、それでもまだ、
風哉のピンチは終わらない。