第四話
「さて、行くか」
空しさを味わった風哉は、しばらく休んだ後、先に進もうと思い、立ち上がった。
「ん……、これはあの岩の遺品かな」
それは、岩の魔物が落としたドロップアイテムであるが、今までのものとは違い光り輝く鍵のような形をしたものであった。
そして、それを手にした瞬間……
「ま、またかよーー!」
またしても、転移していた。
「ああ……僕のバックがボロボロだ」
風哉はバックの中から、比較的傷の少なく、持ち運べる物だけを選んで、バックの中から取り出した。
「あーあ、何時か修理しないとな」
再び洞窟の中だが先程の洞窟とは違い、一本道ではなく、別れ道がある。それも、今風哉が居る位置から前後左右に道がある。
「どの道にしようかな。……まさか迷路になっていたりしないよね? 迷路とか餓死するよ?」
そう言いながら、右の道へ進む。少し進んだところに看板が立てられていた。『信頼の道』と。
「信頼の道かぁ、どういう意味だろ」
そこから歩いて数分、二つに道が別れている。別れ道の内、右側には、こちらへ進むようと言う意味で書いているであろう矢印があった。
「右は危険そうだね。左にしよう」
そういって進むと、またしても別れ道があった。今度は左側に、矢印が書かれている。そこからは、風哉は矢印の通りに進んでいった。悩むこと無く、どれぐらい悩んでないかというと、
「誰が松明に火をつけているんだろうなぁ?」
とか考えることの出来る位である。そうして進んでいった先には
「って、あれ?」
……落とし穴があり、風哉は落ちてしまった。
落ちた先には、
「何なんだ、この扉は?」
幻想的な雰囲気を醸し出す大きな扉があるのだった。
「ここ? ここかい? ここは試練の間だよ。迷いし旅人君」
「うわっ! 急に話しかけるなよっ!」
声を聞いた風哉は、慌てて前に回避しながら後ろを向いた。
そこには、その形を捕らえることの出来ない、靄のような物がいた。
「ゴメンゴメン、びっくりさせちゃったね。でもその反応を見るのがずっと此処にいる僕の唯一と言っても良い位の楽しみなんだよ。反応の仕方は千差万別、だから何度やっても飽きないんだよね」
「嫌な楽しみだね、それは……。それよりも君は誰?」
「そうだね。僕は此処、試練の間の番人なんだよ」
「試練の……間? それに番人」
「そう、試練の間だよ。選ばれし証を持つ者を試すために存在しているのさ」
「選ばれし証? 何なんだそれ?」
「さあ? これ以上は証を持っていない君には話す事は出来ないなぁ」
「分かった……。でも帰り方を教えてくれ」
「その必要は無いよ」
「何で? 僕は早く此処から出たいんだけど」
「だって君はここで死ぬんだからねっ!」
そう言った後、靄のような物は、消え、代わりに……
「空を飛ぶタイプの魔物か。厄介だな」
コウモリのような魔物が、出てきたのだ。それも十数体。現在、武器を持っていない風哉にとってはなかなか厄介な敵である。
「さて、どうするかな」
風哉がそう言った時、魔物の一体が風哉目掛けて一直線に飛んでくる。それを風哉は、
「ふんっ!」
雷を纏った拳で魔物を吹き飛ばした。その魔物に当たった他の魔物も感電して死んでいった。
それを見た他の魔物が、宙から魔法を撃ち始めた。それを走って躱していき、壁を蹴って魔物を殴る。そして、
「喰らえ……“イーラ・トルトニス!”」
風哉の放った雷撃が、風哉より前の広範囲に飛んでいき、魔物を全滅させた。
「はぁ、魔法は魔力の効率が良くないからあんまり使いたく無かったんだけどね。仕方が無いか」
そう呟く風哉の後ろをに大きな棍棒を振りかぶっている巨人がいた。しかし、巨人は急に倒れる。
「“雷撃魔法”の恐ろしさは、敵を倒した後に、地面に電気が流れることなんだよね。
だから、初見じゃ躱せないんだよ」
魔物のドロップアイテムを拾い集めながら、風哉はそう呟いた。
全部拾い終えた時に、
「いやぁ、全部倒しちゃうとはね。これは想定外だなぁ」
再び現れた靄のような物が、風哉にそう言った。
「当たり前でしょ。この程度の奴に負けるわけが無いじゃないか。君は僕を舐めているの?」
「そんなわけないじゃん。普通こいつらで君ぐらいのレベルの人は余裕なんだけどなぁ」
「……そうかい、じゃあ、次は君が相手なのかな?」
「そうしたいんだけど……、僕は君とは戦えないんだ」
「何で?」
「そういう決まりだからさ。だから君は僕の魔法で元の場所に返してあげるよ」
「いいの?」
「当たり前だよ。でも、その前にポイントが貯まってるよ?
使っておいたら?」
「ポイント?」
「ポイントも分からないの? 君って変な……不思議な人だね」
「今、変な人って言おうとしただろっ!」
「それよりも、ポイントの話だよ」
「あ、ああ。まあそうだね」
「ポイントの使い方はね……」
「なるほど、表示に意識を向けて、自分の使いたいスキルを思い浮かべるとそれに近いスキルが出てくるんだな」
「まあ、そうだね。表示を手でスライドさせて色々なスキルを見ることも出来るのを忘れないでね」
「分かったよ。ありがとう」
そう言って、風哉は笑った。
「……そんな風に笑顔を向けられるのなんか久しぶりだなぁ」
「そうなの?」
「まあ、人が来ないってのもあるが」
「……選ばれし証を持つ人が居たら、無理矢理にでも此処に連れて来るよ」
「ああ、よろしく頼む。だが、そんな奴が出て来ない方が良いんだがな。もうそんなことを言っている場合ではないか」
「どういう事?」
「詳しくは話せないと言ってるでしょ? でも、簡単に言えば世界に危機が訪れたとき、選ばれし証は選ばれし者を探し始める」
「まあ、なんとなく分かったよ」
「そろそろ元の場所に戻ってもらわないといけないね」
「それじゃあ、またね」
「またね、か。貴様のような奴が選ばれし者であることを僕は、願うよ」
そして、風哉は意識を失い、気付いたときには元の森に帰ってきていた。
「やっと帰って来れた」
風哉が試練の間の番人と再開するのは、まだもう少し先の話である。