第三話
「また違うところかよっ! いい加減にしてくれ!」
階段を下りた風哉は、またしても全然違うところにいた。
「でも、これでなんとなく此処の事が分かってきたな。
……といっても、此処から出る方法は分からないからあんまり意味は無いんだけどね。階段を下りていったらいつかは、戻れるかもしれないから、取りあえず、状況が変わったりしない限り下を目指せばいいよな」
今度来た場所は、木の一本も生えていない。だけでなく、草も生えていない、いわゆるはげ山という所だ。
ただし、岩が上からたまに落ちてくるから気をつけ無ければならないのを除けば、魔物もいない場所であった。
「山の頂上に階段があるのか? いや、山の頂上に階段があっても山の中に入るだけか。それとも、階段は魔道具の一種で、転移かそれに近い物なのか? ……どっちにしても行ってみなけば、状況は変わらないんだよね」
結局、進むしか無いと、風哉は考えるのを止め、取りあえずは、山の頂上に行くことにした。
「どっちにしても、落石がある場所じゃあ休めないんだよぁ。取りあえず落石の心配を無くしたいしね」
そうと決まれば善は急げと言わんばかりに、走って登り始めた。
そして、頂上に着きそうなとき……
「うわ……何だ?」
かなりの大きさの岩が、風哉に向かって頂上から、突っ込んで来た。かなりのスピードで避けられないと判断した風哉は、
「仕方が無い。真っ二つにしてやろう。
……魔法剣〔風〕“真空斬!”」
風哉の放った斬擊は岩にぶつかり……弾かれた。
「はぁっ! マジかよ、ってヤバァ!」
風哉の攻撃によって、岩が浮いたため、伏せることで何とか躱した風哉は、再び走り出した。
「何だあの岩……。真っ二つにしてやるとか言っちゃったど、固いなあ。すげえ恥ずかしいな……、あいつが居なくて良かった」
頂上に着いた風哉は、息を切らしながら、そう呟いた。その時、風哉の後ろ側に太陽があったが、急に陰に風哉が気付いて、後ろを向いた。
「ええっ! 戻ってきやがったのか!」
陰になったのは、先程の岩が宙に浮いていたからだった。
風哉は自分の居る位置に岩が落ちてくるのに気づき、慌てて回避する。何とか躱したものの、
「まずいな……このままだと」
そう、風哉は背負っていたバックを降ろしていたため、バックが岩の下敷きになってしまったのだ。つまり、
「まだ食料を仕入れる当てもないのに、よくも僕の食料を潰しやがってーー!」
命の危機である状況でこう言うとふざけていると思われるかもしれないが、ふざけているのでは無く、これは本当に風哉にとっては、死活問題なのだ。食料が潰された今、食べ物が無くなってしまうと、本当に厳しい。非常に厳しい。
風哉の頭に、『食べ物の恨みは恐ろしい』という言葉がよぎる。
「ん……、何だこれ?」
さっきまで風哉は気付いていなかったが、たまに頭に情報として入ってきているものがあった。
「何だ……これ。月村風哉、Lv3、残りポイント4? どういう事なんだろ?」
風哉がポイントに意識を向けていると、
「うわっ!? 何だ、いきなり!?」
風哉の視界の中に、何かが表示されている。
「な、何なんだ。どうすれば良いんだこれ?」
風哉は取りあえず表示されているものを見ていく。それをなんとなくで動かしていき、そして、
・魔法剣Lv1を習得しました。
・魔法剣Lv2を習得しました。
と表示される。勿論、風哉にとっては、意味不明なものだった。
「どういう事だ? 魔法剣が何とか表示されてたけど……」
結局、何が何だか分からないまま、風哉は岩が突っ込んできたのを避けて、思考が中断されることとなった。
「三度に渡る不意打ちを、よくぞ避けたものだ。貴様、只者では無いな? とはいえ、真っ二つにしてやるとか言っていた割に、
我に傷一つつけられなかったのにな!」
「うわぁぁぁ! そんなことをもう掘り返すんじゃねえよっ!
あれは、僕だって恥ずかしかったんだぞっ!」
「ならば、永遠に思い出さないように、一瞬で踏みつぶしてやろう。感謝しろ」
「嫌だよっ! まだ死にたくないし、何に感謝するんだよ!?」
「楽に死ねることにだ」
「まだ死なないよ」
「ほう、何故貴様は死にたくないのだ。このような所をさまよい続けるよりはマシだろう?」
「……僕は、世界を救うために此処に来たんだ。そのためにも、絶対に生きてやるっ!」
「クックック、我すらも真っ二つに出来ない貴様がか? 無理だな、諦めて帰れ!」
「嫌だね! ……決めた。僕は絶対に君を真っ二つにしてみせる」
「出来るものならやってみろ!」
「分かった。……魔法剣“雷の刃!」
風哉の放った焼刃が、岩を切り裂いた。
……それどころか、山を切り裂いた。真っ二つに。因みに剣も、真っ二つになったのだった。
「えっ……? 何だこの威力は」
風哉がそう呟くほどに威力が上がっていた。
「さっき表示されていたやつの影響かな? それよりも……」
そう、風哉はそんなことよりも、ある感情を抑えようとしていた。
「……空しい」
さっきまで言い争っていた相手を一瞬で倒してしまった風哉は、
さっきまでのテンションから急に落ちたことで、異世界に来て、初めての空しさを味わうことになった。