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俺たちの創世物語-ジェネシス-Ⅱ  作者: 白米ナオ
第一章 龍の手も借りたい
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第一章 ①

ちょっと上げるの早すぎたかな……お待ちかね(?)の二巻ですっ!

今回は少し学園での出来事も増やしつつ、幻界での冒険もいつもより増量(当社比)でお送りしたいと思います。前回仲間になった萌先輩を始め、より充実した内容にしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします<(_ _)>

ちなみに、これは完全なる続編となりますので、初見の方は読んでも何がなんだかさっぱり分からない恐れがあります。ので、こちらを読む場合には先に一巻を読むことをオススメします!

 六月 二十七日 日曜日

 七時十四分、俺こと坂本龍馬は日曜日にしては珍しく早起きした。

「ふわぁ……眠ぃな」

 まだ視界がぼやけている目を擦り、自分の寝ている空間を見渡す。昨日は爺ちゃんの仏壇に幻界で起きたことを一通り報告して、すぐに寝てしまった。

 それでも睡眠時間はきっちり七時間くらい。平均的な高校生の睡眠時間にしては、おそらく長いほうなのだろう。でも眠い。もっと寝たい。

「……寝ようかな」

 ぼそっと呟いて寝っ転がろうとしたとき、微かな出汁の香りが鼻腔をくすぐった。

「味噌汁、か?」

 ぐぅ~。

 その香りを認知した途端、現金な腹の虫が盛大に鳴り出した。おぉ、俺のお腹も小食なくせによく反応するもんだ。これは食べ物を腹に入れねば満足しないだろう。

 そんなことを考えた俺はすぐに起き上がると、いつものように台所へと向かった。休日こそ朝食は食べない俺なのだが、そこは腹が減ってはなんとやら。暇な休日でも頭を使うのだから、たまにはエネルギーを補給してもいいだろう、うん。

 台所にはいつものように母さんが立っていた。昨日は突然の出来事にびっくりさせられたのだが、流石に二日連続で押しかけることは無いだろう。

「おはよう、母さん」

 俺の挨拶に気が付いた母さんは振り返り、いつもの柔らかい笑顔で挨拶を返す。

「おはよう、龍馬。今日は珍しく早起きなのね~……朝ご飯食べる?」

「もちろん。ガッツリ食べたい」

 俺の言葉に、母さんは表情から見て分かるくらい驚いていた。それもそのはず、基本的に朝食は抜いている俺が朝食を食べたい(しかもガッツリ)と言ったのだから。

 やがて表情は驚愕から歓喜へと変わり、すぐにせかせかと動き出した。

「あの龍馬が朝ご飯を食べたいですって! ご飯山盛りで用意しなくちゃ!」

「……どんだけ興奮してんだよ。俺だってたまには食べたくもなるさ」

 俺のぼやきは完全にスルーされ、ものの数分で卓上には隙間無く食事が並んだ。

 ご飯は先程言っていた通りに超山盛り。味噌汁は基本に忠実で豆腐にわかめ、刻みねぎという定番中の定番。おかずは鯵の干物に納豆と冷奴、味付け海苔とお新香という、THE・日本の朝食という感じだった。

 あまりの量に呆気にとられていると、下から婆ちゃんが階段を上がってきた。今日売るための和菓子の下ごしらえを終えたばかりの婆ちゃんは、俺の姿を見ると少し驚いていた。

「おや、龍馬じゃないか。おはよう」

「おはよう、婆ちゃん。今日はちょっと早起きしちゃってね……」

 そんな婆ちゃんは、食卓に並んだ食事の量を見て再度驚く。

「早起きだけならまだしも、朝食を食べるなんてどういう風の吹き回しだい?」

「なんていうか……無性に飯が食べたくなった」

「ほぉ、やっと龍馬も朝食を食べたいと思うようになったか。いい事だよ」

 そんな会話をしつつ家族揃って食卓に着く。

「「「いただきます」」」

 それからの俺は、ある意味異常だった。マンガのように盛られた白飯をものすごい勢いでかき込むと、大量のおかずをどんどん腹の中に収めていった。

「おかわり」

「また龍馬がおかわりって……うぅ」母よ、何故そこで泣く?

「おやおや、そんなに慌てなくてもえぇのに。よく噛んで食べなさい」

 おかわりを貰うとさらに食べる。どんどん食べる。超食べる。

「ごちそうさまでした」

 食べ終えた。これだけの量を完食すること自体が奇跡に近いのに、食べるために使った時間はきっと十分以内。今までの俺が見たら吐き気を催しそうだ。

「おかーさーん……龍馬が、りょうまがなんだかせいちょうしたよぉ~」

 最後の方は涙声で、何を言っているのか全くもって分からない。俺はそんな母さんをスルーして、自分の部屋に戻る。時刻は八時ジャスト、特にやることが無い。

「うーん……暇だな」

 いつもならこういう時間に想像したり読書したりするのだが、今日はそんな気分じゃない。

 ……やっぱり、あの世界に行きたい。

「よし、天宮に聞いてみるか!」

 俺は普段あまり使わない携帯電話を取り出すと、数少ないアドレスの中から〝天宮聖子〟の欄を選ぶ。電話番号を押すと、数回の呼び出し音の後に電話が繋がった。

『もっ、もしもし! こんな朝からどうしたのっ?』

「よっ。とりあえずおはよう」

『あ、おはよっ! 挨拶すっかり忘れてたよ~、えへへ』

「何を慌てている? ……まぁいいか。それよりさ、今日暇か?」

『うー……正直なところ暇じゃないかな。今日は眼科に行かないといけないんだぁ』

「そうか。だったらまた明日でもいいや。……視力回復しているといいな」

『うぅ、そうだね。心配してくれてありがとう。早く眼鏡を卒業しなくちゃ……』

「別に眼鏡を卒業しなくてもいいだろ? アレ結構似合っているからいいと思うのだが」

『っ! そ、そうだよね! やっぱりあたしは眼鏡卒業しない!』

「……どうした? さっきから慌てて」

『イヤ何でもないよ本当に大丈夫だから! じゃ、じゃあまた明日ね!』

「お、おう。また明日な」

 ガチャン、ツー、ツー……。

「……何だったんだ、今の」

 天宮の態度が気になったが、まぁそれはどうでもいい。

 問題は、このままでは今日一日何もやることがないことだ。まさか忙しかったとは……ついてないな。

「うーん……店の手伝いでも、するかな」

 そんなことを考えた俺は、実行に移すべく一階へと降りた。


「朝から、龍馬君と、電話……ふふ、ふふふっ」

 あたしは我ながら怪しい笑みを浮かべながら、携帯電話を握り締めていた。幸いあたしの行動を見ることが出来る人間は、この部屋にいない。

「聖子~。変な笑い声出さないでよ~」

 ……訂正。地獄耳のお母さんこと天宮理恵は、隣の部屋にいたから聞こえていたらしい。もしかして、さっきの電話の内容も聞かれていたのかな……ちょっと怖いかも。

「別に変な声は出してないよ~。お母さんも聞き流してくれればいいのに」

 壁一枚隔てた空間でお母さんと話し合う姿は、ちょっとシュールだった。お母さんもまた壁越しに返事を寄越してくる。

「でも~、聖子にも彼氏が出来たんでしょ? 早く紹介しなさいよ~」

「か、か、彼氏なんかじゃないよ!」どーせ片思いですよーだ。

 あたしの必死の抵抗に、お母さんは心底楽しんでいるようだった。

「でも、好きなんでしょ?」

「……うん」

 お母さんは若い頃結構モテていたらしいので、恋愛沙汰に関してはとても詳しい。さっきの会話の一部分だけでそこまで分かるなんて……鋭いなぁ。

「で、彼はどんな子? お母さんが相談に乗ってあげる」

「えっとね……」

 それからあたしとお母さんは、壁越しにいろいろと話をした。

 龍馬君との馴れ初め、どうして好きになったのか、容姿はどうか、性格はどうかエトセトラ。

 気が付けば、一時間以上も話していた。

「ふーん……そっか。龍馬君だっけ? いい子そうじゃない」

「そうなの! 人見知りなんだけど、格好良くていざという時にすっごく頼れるんだぁ~」

「ふふふ、聖子ったらベタ惚れじゃない。いっそ告白でもしちゃえばいいのに」

「ええっ! 無理無理! まだまだ一方通行だし……」

 そしてさらに一時間――

「龍馬君ってなんていうか、ちょっと鈍いんだよね。はぁ……」

「それはまた難儀ねぇ。でも、男の子なら誰だって女の子には興味があるはずよ? そうだ、聖子が彼を〝誘惑〟すればいいのよ!」

「な、何言い出すの! あたしにそんなこと出来るわけ無いよ! ……ていうか、それは母親の心境としてはどうなのよ?」

「心境も何も、私は全力で聖子の恋を応援するわ。ファイト!」

「お母さん……ありがとう。あたし、頑張ってみるよ」

 そこまで言い終えると、あたしは改めて時計を確認した。時刻は十時十七分、眼科の予約は十一時半なので丁度良い時間だ。

「それじゃ、そろそろ眼科に行く準備をしなくちゃ。……相談に乗ってくれてありがとね」

「どーいたしまして。眼科、遅れないようにね」

「はーい」

 あたしは寝巻きから私服に着替えると、冷蔵庫に入っていた朝食用のヨーグルトを食べる。

 すぐに食べ終えると、あたしは弾む心で玄関を後にした。

 〝誘惑〟、か……よく分からないけど頑張ろう。

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