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夏の翼―闇夜の彼方に―  作者: 夜月黎
プロローグ

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プロローグ

『ひどく不安定になる瞬間(とき)があるんだ』


誰もいない真紅の教室。

その紅色を創り出す窓の外の夕焼けを背に、そう言ったのは誰だったのか……。 

シルエットと虚ろな瞳だけが、夏月(かづき)の記憶に焼きついている。



―――――――――――――


狂いそうになるときがある。

頭の中が言葉で埋め尽くされて溢れそうになる。


生まれたイミとか、生きてるリユウとか、自分の存在とか考えて、そのどれにも答えがない。

この世界にあるものすべてがイミのないものだ。

全部どうでもよくて、くだらない。

――それでも、そんなコト考えてる自分自身が一番くだらないと知った。


そして――

そんな自分が辿り着いたひとつの答え。


そのために選んだ。


『ひどく不安定になる瞬間(とき)があるんだ』


そう告げた。 

あのときの表情がやけに鮮明に記憶に刻まれている。


右手で胸を掻きむしるように抑え、こみ上げる嫌悪感と狂気に耐えながら、翼は資料室の片隅で震えていた。

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