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第五曲目

翌日。学校にヤクモの姿は無い。


「…やっぱ、こねぇのかな」


呟いてスバルは首を振る。


「準備、出来たっすよ」

「ありがとうな、シキ!」


シキが機械を弄り、準備する。スバルは息を吸い込んだ。昨日ライブで聴いたラブソング。スバルは昨日の夜、何度も練習した。それでも時々、音程は外れる。だけどスバルは必死に歌った。


「え、何…?歌?放送室から?」


生徒達がざわめく。スバルの歌声は放送に乗り、学校に響く。


「あいつらは何をやってるんだ…!」


スバル達の担任は慌てて放送室へと走る。


「…このラブソング…母さんの…」


正門の前に居たヤクモが顔を上げ、呟く。その瞳が僅かに揺れる。


「…恋して才能を捨てるなんか、馬鹿じゃねぇの」


ヤクモの声が震える。彼は痛いくらい、拳を強く握り締めた。


「歌姫だったのにさ…何で俺を産んだんだよ…っ。何で、愛してくれないのに…俺を産んだんだよ…!」


彼は走り出す。歌声の元へ


「未だに母親の影と過去を追ってるとか、俺ダサすぎるだろ…っ!」


必死になってカッコ悪い。そんな思いがヤクモの頭をよぎるのに、足は止まらなかった。求めているような、なりふり構わない歌声に耳を澄ませてヤクモは息を切らしながら階段を駆け上がる。担任が放送室に辿り着く。


「おい!スバル!シキ!何をしてるんだ!」

「うげ!はるせん!」


歌声が止まる。スバルは首根っこを担任に掴まれた。


「これは反省文ものだ!」


その時、足音がした。


「…はぁ、はぁ…っ、軽音部に入部、したいんだけど…」


ヤクモが息を切らしながら放送室に入って来る。スバルは目を丸くした。


「ドラムの枠、まだ空いてる?」


ヤクモは笑ってそう言った。スバルは目を輝ける。


「やった〜!入ってくれるんだな!?本当に!?すげー嬉しい!」


喜ぶスバルとは対照的にシキは戸惑いを浮かべていた。


「…また急っすね?」


ヤクモは前髪を弄る。


「まぁ、なんかあったら抜ければいいだけだし。…まだ起きても無いことを気にするのはもう辞めた」


彼は振り切れたような笑顔を浮かべた。担任が唸る。


「人数が揃った。これで、部活として成立するな」


担任が顔を上げる。


「軽音部を正式に認める!顧問は俺が務める」


スバルが万歳する。


「やった!ありがとはるせん!これで部費も出る!部室ももらえる!」

「ただし、その前にお前達は反省文提出だ!提出出来るまで部活動は禁止!」


スバルは悲鳴を上げる。


「マジで!?部活として認められた瞬間!?」


ヤクモは声をあげて笑う。


「あはは。頑張れ〜」


放送室は騒がしくなった。


屋上から放送を聞いていたヒビキはスマホの画面に目を向けた。


「…イギリスに留学しろ…か」


呟いて彼は澄み渡る青空を見上げた。


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