秋の桜
季節は秋。
けど、桜が見たくて桜の木をあおぐ。
そこには裸の木があるだけ。
桜が花開くのはまだまだ先のこと。
嗚呼……
美しい桜が見たい。
見上げながら吐いた溜め息は、
高い空色へと溶けていく。
ふいに、風が吹く。
少し冷気の乗った風が私の髪を撫でそして、
サアア……と、足元の草花が風に撫でられる音がした。
見下ろすと傍には花壇。
イロトリドリに咲く、コスモス。
───ああそうか。
花壇に咲き乱れる秋の桜……秋桜。
風はそれを教えてくれたのだ。
まだ咲かぬ桜を追いかけて。
足元に咲く、美しい桜に気づかないなんて。
クスッと笑い、体を屈める。
花壇に咲き乱れるコスモスを見つめる。
『無理に顔をあげなくて良いんだよ。
下を向いたっていいんだよ』
イロトリドリに咲くコスモスたちが、
そう言った気がした────




