半世紀前の確執
壮大な館だった。
館の中には十を超える部屋がある。しかし、住んでいるのは1人の壮年の男。お手伝いが10人いる。その男はK氏という。彼は麗しき草花が飾られた庭でお手伝いの1人を従わせ、お茶をしていた。
K氏は純白な机と椅子に座っていてお手伝いの入れたコーヒーを一口。K氏は芳醇な香りを楽しんだ。深いコクと切れ味のある苦味に舌鼓を打つ。
至福の時は1つの物音で崩壊した。庭のフェンスが壊される音がした。
K氏とお手伝いは音の発生源に注目した。ガシャンとした音が止むと人が草木を分け行って進むガサガサとした音がした。
K氏はお手伝いに警察へ報告するように言い伝え、本館の方へ向かわせた。
「彼女なら行ったよ。ここにいるのは私と君だけだ。出て来てはくれまいか?」
低木が揺れた。中から初老の小柄な男が出てきた。彼の目は血走っていた。みすぼらしい格好をしている。
K氏はため息をついた。
「まだ革命ごっこをやっているのかい」
「ごっこじゃない。革命そのものだ」
みすぼらしい男は声を荒らげた。手元から光線銃を取り出して銃口をK氏に向けた。
「まだそんな古代兵器を,,,,,,」
「これは正義の武器だ。アネスト派の高潔な徴だ」
「そうだ。その通りだ。それも半世紀昔の話だ。革命戦線という集団はその武器を象徴にして、核融合技術を独占し地球を支配したナッセル教団に反抗した」
「K氏! お前はそれを裏切ってナッセル教団の傘下に入った」
初老の男は口角泡を飛ばした。
「私は何度も闘争ではなく対話だと伝えてきたつもりだ。ナッセル教団だって一枚岩じゃない。穏健派と対話を通して和解の道もあった。そして私はそれを完遂した。M氏よお前はどうだ。戦うことにしか興味を示さず無駄に戦禍を広げ、守るべきだった人民を数多く殺してきた」
「黙れ」初老の男であるM氏はK氏の足元に光線を飛ばした。当たった地面はジュッと音を立てて溶融した。
「暴力だけでは解決しない」K氏は念を押した。
パトカーの音が聞こえてきた。
「終わりだ」
M氏は警察に捕まり、御用となった。
車の中に押し込められるM氏に向かって言葉を投げかけた。
「私はナッセル教団との対話に成功し、核融合技術とそれらに関する知識技術の共有に成功した。独占から解放に向かった技術は世の中をそれ以上に豊かにした。その第一人者となったのだよ」
「ええ。よく存じております」
警官のひとりが答えた。
M氏は暴れながら署へ連れていかれた。