デート
彼女とのデートに京太郎は浮かれていた。
「やったぞ。明日はデートの日だ」
狭い賃貸の部屋で内心ガッツポーズを決める京太郎。背後のベッドに倒れ込んだ。三度の失恋の末、掴み取った幸せに京太郎はすっかり酔いしれていたのである。机にはスマホが悲劇的なニュースが次々と流れていた。しかし京太郎は暗さに対する感受性が幸せで完全に麻痺していた。いつもなら暗い気分になってしまうがこのときは別であった。
京太郎は期待を胸にしまって就寝した。
次の日、遊園地で京太郎は彼女と待ち合わせをした。華麗な格好をした彼女は10分ほど遅れてきた。
「キョウちゃん待った?」
「全然、いま来たところ」
二人は遊園地の入口で入園手続きをした。
「友奈は何に乗りたい?」
京太郎の問に彼女はこう答えた。
「観覧車!」
二人は観覧車に乗った。搭乗口でゆっくりと動いて来たゴンドラに京太郎が先に乗り込み、友奈に手を伸ばす。友奈は京太郎の手を取って観覧車に乗った。
二人を乗せたゴンドラは頂上に登った。
「見てみて人が豆粒みたい」
友奈の感動に京太郎は自然と頬が緩む。
「建物もミニチュアみたいだね」
「私、あれに乗ってみたい」
友奈はジェットコースターを指さした。京太郎は引きつった顔をした。ジェットコースターが怖いのである。その顔を友奈に見せないようにして「いいよ」と返事をした。
二人は観覧車を降りてジェットコースターに向かった。ジェットコースターの近くに行くと長い列ができていた。
「なぁ友奈、実は言いたいことがあるんだ」
「何?」
「結婚しないか?」
「いいよ」