紙でしか伝わらない
電話音。電話音。受話器を取る音。電話音。
ここは田舎のオフィスビルの一室だ。幸太郎は去年の春に入社した新人で事務員として勤労に励んでいる。
「藤原さん、この請求書、作成しといて」
「はい」と幸太郎は元気よく返事をした。
キーボードを叩いて宛名、品名、数量などのデータを入力していく。
「藤原さん、急にごめん。これ私の代わりに印刷してホッチキスでまとめといて」
幸太郎は再び返事をして作業した。午前が終わり、昼食を取る。幸太郎はTwitterをした。電子の海には様々な意見があった。政府に物申すもの。趣味を発信するもの。猫の写真をアップロードするもの。
幸太郎はスマホをスワイプしていく。次々に表示される情報は小川のように流れていく。
情報の海に溺れ、疲れてスマホから目を外した。時計は12時45分を指していた。幸太郎は食堂から事務所へ移動した。幸太郎は事務所へ向かう最中にある思いが浮かんだ。
ネットは幅広い人と繋がることが出来る一方でその関係は希薄だ。伝えられる文字数も少ない。誰かの発言はすぐに別の誰かのコメントで流れて行ってしまう。
幸太郎は思い立った。手紙を書こうと。妹に。幸太郎は仕事が終わると文具店で手紙を買ってきて、家で手紙を書いた。




