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幽霊症候群

作者: 一飼 安美

 ……また俺の番か。揃いも揃ってよくもまあ怪談話を知っているものだ。昨日調べたってヤツも中にはいるだろう。かぶってねえか?数足りてるか?俺はまあ、そんなにたくさん知らねえんだが、他人と被る話はない。調べてもどこにもない話だからな。


 怪談話に幽霊はつきものだ。大昔の連中は、霊の存在を疑わなかった。一つや二つの集落じゃねえ、海を越え谷を越え、どこに生まれた文化文明の類も似たような霊の存在を考えていた。迷信だというには、奇妙な一致が山ほどある。もしそれが、何かを見て何かを感じて違う形で表したものなら、というたらればの話だ。


 人間はなぜ人間足るか。もしお前の体が機能を停止して、肉と骨を保存して、千年後にでも再起動したとする。それはお前だろうか。おそらくは機能を停止した時にお前自体は消えている。同じ肉同じ骨の組み合わせで、別のヤツになっているだろう。想像に難くない。今のお前がお前足るのは、連続性があってこそだ。


 一つの現象が連続的に発生して続いていく。今お前が生きてるってのはそういうことだ。そして、連続性と肉体は必ずしも関連しない、という話は今したばかりだ。肉体が停止すれば、命は途絶える。当たり前だがな。だが、逆は考えられないだろうか。肉体が消えたとて連続的に発生している現象は、続き得るのではないか。無論それは生物の肉体で起きる現象だから、どこかで生物を介する必要があるで「あろう」。すまねえな、俺も大して詳しくねえんだ。だがそれは途絶えない限り一つ意識のような、同じ存在として続いていき、もう一度人間に入ることがいくらでもある。人間から人間に移り、時に増える。一つの体に当人と別の何かが共存し、上書きされ、入れ替わる。まるで何かが『憑いた』ように。体も顔も名前も持たない、何か。そもそも物理的な実体を持たないんだから、そんなものには意味がない。それを昔はどう呼んだか。どう表現したか。『幽霊』『魔物』『荒ぶる神』……。みんな好き勝手に呼ぶのさ。どう呼ぼうと自由だからな。大昔の連中は、人から人へと移る何かの力の流れを、幽霊と呼んだ。俺に言わせれば人体の機能不全、一種の病気。幽霊症候群、とでも言ったところか。これが俺の持っている幽霊の正体、その仮説の一つ。理論的に考えるなら、幽霊は『いる』って話がまとまる、っていう一例だよ。


 この話を、誰かにしたかって?お前らみたいな物好きしか、聞くヤツいねえよ。

25年3月23日、表現の一部を修正。

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