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第130話 崖は崩れるもの(岩は振ってくるもの)

 山岳ダンジョンは山頂から麓まで降りていく方式だった。

 ガードレールも無くアスファルトで舗装もされていない危険な道を、強風と魔物を警戒しながら下ってゆくという移動するだけでも危険なダンジョンだ。


「山岳ダンジョンの迷路構造は普通の山道と同じだ。それゆえダンジョンとしての複雑さは少ない。ただし階段がない代わりに道に高低差が出来るのが曲者だ」


「高低差?」


 先行するスレイオさんに山岳ダンジョンの注意点を聞きながら、私達は山道を下ってゆく。


「山道だからな。山肌が脆ければ迂回してでも危険なルートは避ける。このダンジョンはそう言った自然の山を想定した道が出来るんだ」


「その所為で山中をグルグル回りながら降りるから爺いには厳しいんじゃよ」


「でも今はだいぶ若返っているでしょう?」


「それでもキツいんじゃ!」


 キュルトさんがハァハァと息を荒くしつつ山道を登っていると、横からストットさんがからかう。

お爺ちゃん達皆若返りポーションで若返ってるもんね。


「それに山道は登りだけでなく下りも足に負担がかかる。足場が悪いと猶更だ、気を付けるんだぞ」


「分かりました」


 時折襲ってくる魔物を撃退しながら、私達は山を下ってゆく。

 そんな時だった。突然山肌からガラガラと音を立てて岩が降って来たのだ。


「うわっ!?」


「避けろ!」


 言われるまでもなく私達は急ぎ岩を避ける。


「山岳ダンジョンを降りていると落石に襲われる事がある。サイズは小さいものから避けるのが困難な大型のものまで様々だから気を付けろ」


「岩まで振ってくるの!?」


「自然の落石だけではありません。魔物が私達を襲う為に落としたり、上で戦っている冒険者達の攻撃の余波で落ちてくる事があるので下に行くほど落石の頻度は高くなるんです」


 うわー、ただでさえ下に行くほど魔物が強くなっていくのに、落石まで気を付けないといけないんだ。


「気を付けるのは上だけじゃないぞ。道が崩れる恐れもある。基本は端に寄らなければ大丈夫だが、戦闘中だと気付かず近づいてしまう事があるし、最悪の場合は道が丸ごと崩れる恐れもある」


「ひえっ、山岳ダンジョン危険過ぎない!?」


「全くだ。ダンジョンの中には魔物や罠ではなく環境そのものが敵という恐ろしいダンジョンが少なくない。だから事前に情報を調べずダンジョンに潜るとあっという間に詰む事があるから気を付けるんだぞ」


「わ、分かりました」


 ダンジョン怖いなぁ。作った人、いや神はよっぽど性格が悪いんだろうな。うん、性格悪かったわ。喧嘩のとばっちりで世界を滅ぼすくらいだもんね。


 改めて周囲を警戒しながら進んでいると、道が二股に分かれていた。


「登り道と下り道だ」


 下に降りるんだから普通に考えたら下り道だよね。


「これが山岳ダンジョンの嫌らしいところだ。ダンジョンの基本構造と早く攻略したいという気持ちで下りの道に誘導するんだ」


「そして下り道を選んだら罠で全滅なんて事もあるんだよな」


「性格悪すぎでは?」


「全くだ。だから登りと下りを見たらまずは登りをチェックするんだ。無駄に終わっても下りが駄目だった時に道を戻って更に登りの道を戻ると心身ともに疲れ果ててしまうからな」


 ああなる程、無駄足だった時の為にも登りを先にチェックした方がいいのか。

 それ絶対過去に下りを選んで酷い目に遭った人達が続出したからだよね。


「そういえばタカムラさん達の方でもこういうダンジョンってあるんですか?」


 向こうの世界で私が経験した自然環境型のダンジョンと言うと海辺の砂浜ダンジョンだけど、もっと危険な自然環境ダンジョンはあるんだろうか?」


「あるわよ。火山ダンジョンや極寒ダンジョンとかあるわね。道を踏み外したら溶岩に真っ逆さまとか、防寒具が無いと氷の彫像になってダンジョンに飾られるダンジョンとかあるわよ」


 そっちもえげつないんですけど……


「極寒ダンジョンはダンジョンとしては珍しく死んでも犠牲者がダンジョンに吸収されないのよ。代わりに犠牲者が彫像になって残されるの。何十年も前の犠牲者の死体が残ってる事があって、その遺体を回収する為に遺族がダンジョンに挑んで新たな犠牲者になる事も少なくないわ」


 それ遺体の回収をさせる為にわざとダンジョンが遺してるって事!? 最悪過ぎない!?


「一番ひどかったのは自然洞窟っぽい見た目で中が毒ガスで充満してた毒ガスダンジョンね。ぱっと見は普通の洞窟型だから初期は被害者が続出して酷いことになったのよ。たまたま持続型の解毒魔法の使い手が居たことで助かったパーティのお陰でダンジョンの性質が判明したの。あの時は腕利きのパーティですら帰らぬ人になって探索者協会は頭を抱えたそうよ」


「あの時は全身を覆うタイプのガスマスク装着防具がバカ売れしたんだよねぇ」


「そうそう、どんな時でも商人って商機に貪欲よねぇ」


「なーにいってるのよ。あの時にガスマスクを爆売りして儲けたのは貴方のお店の系列会社じゃない」


「あーらそうだったかしら?」


「「「「あはははははっ」」」」


 わ、笑えないんですけどお婆ちゃん達……


「やれやれ、何処の世界でも怖いのは人間の欲深さだな」


 はい、おっしゃる通りです。

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― 新着の感想 ―
タイトル: 〜〜(岩は降ってくるもの) 誤字報告で直せませんでした。 あと本文の中ほどにも同様の、有ります。 ちなみに道路標識の「落石注意」は、落ちて来る石じゃなくて、道に転がってる落石に注意だそうで…
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