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第122話 お婆ちゃんの初めまして異世界(自分は何十度目)

「「「「何これーっ!」」」」


 異世界にやって来たお婆ちゃん達は予想通りこの異様な光景にビックリしていた。

「まさか異世界だなんてねぇ」


「長生きして来たつもりだったけどまだまだ知らないことばかりねぇ」


「いや、アタシは納得したよ」


 皆が驚く中、オタケさんだけは一人納得の声をあげる。


「あらまぁオタケちゃん、何か知ってたの⁉︎」


「ああ、アタシが納得したのは一つ、この子がおかしいのはこれが原因だったってことだよ!」


「ええー⁉︎なにそれ⁉︎」


「「「ああー、なるほどねぇ」」」


「タカムラさん達まで⁉︎」


 酷いよお婆ちゃん達!


「うむうむ、儂らもそうじゃったから気持ちは分かるぞ」


「いや全く」


 お爺ちゃん達まで⁉︎


「私達もビックリしたけどアユミ様ならって納得しちゃいましたよね」


「うむ、心底驚いたがアユミ殿ならそうなのだろうとな」


「貴女方はそう仰るけど、術師の私は心底驚いたんですからね!転移魔法と言うだけでも驚きだったのに異世界だなんてありえない事だったんですから!」


「そうそう、私達も姫様の常識はずれっぷりには驚かされてばっかなんだから」


「キュイ!」


「リューリ達まで⁉︎ んもー! 皆して酷いよ!」


 私が頬を膨らませて怒ると、皆がはははははと声を揃えて笑う。ホームドラマか!


「さて、こんな場所で立ち話もなんだ。私達が拠点としている宿に行こう」


 ◆


 宿にやって来た私達は今後の方針を練る事にする。


「と言ってもどうしようか。進化は若返りポーションみたいにどこかに販売を任せるとかできないし」


「それに関してはスキルと同じで探索者協会に任せておけばいいわ」


「探索者協会に?」


「ええ、あの件も探索者協会が暴走する人を抑制する世論の流れを作ってくれたのよ」


 へぇ、探索者協会がそんな事してくれてたんだ。


「今回の件もアユミちゃんが関係してるならスキルの件に絡めて上手く誤魔化してくれるわよ」


 上手いこと誤魔化してくれるといいんだけどねぇ。


「あっ、それなら私は一回家に戻りたいんですけど。師匠のところで修行するのは強くなれて良いんですけど、そろそろ学校に行かないと出席日数が怖くて」


「え? あ、そうかアートさん学生だったんだ!」


 当たり前のように若い子がダンジョンに潜る世界だから学生って考えがポーンと抜けてたよ!


「ごめん、学校に通ってることすっかり頭から抜けてた!」


「いえ、ダンジョン探索では数日がかりで下層に潜ることも珍しくないので禁止されてはいないんですけど、あんまり学校に通わないと後で纏めて補習を受けることになって夏休みが吹き飛んじゃうので」


 あー、異世界の学校でも補修や赤点の概念ってあるんだね。とて切ない。


「でもレベルアップしてステータスが上がれば身体能力だけじゃなく知力も上がりますから、学校も適度なダンジョン探索は推奨してるんですよ」


 まるでジョギングか何かのようにダンジョン探索を推奨する学校。これが異世界ってやつかぁ。

 でも確かにダンジョンに潜って能力が上がるなら危険があっても潜りたくなる人はいるだろうね。

 ルドラアースはその辺りを教育に絡めて生活の一部にしてるんだね。


「でも今戻って大丈夫?」


「私は進化してないので大丈夫だと思います。学校に行ったらクラスの皆にスキルの事を聞かれると思いますけど」


 そっか、それならいいんだけど。


「私達も新しいスキルの取得に専念したいと思います。どうも向こうの世界でレベルが上がるとスキルを取得しやすくなる気がするので」


「え⁉︎そうなんですか⁉︎」


 フレイさんから思っても見なかった情報がもたらされ、私は目を丸くする。


「リドターンさん達もそうなんですか?」


 私は同じようにエーフェアース出身のリドターンさん達もそうなのかと尋ねる。


「私達の場合はそんな気もするくらいの違いだな。しかしフレイ達は明らかに練度に比べて習熟までの時間が短い」


 おおー、マジか。それじゃあこれからは皆がスキルをガンガン覚えられえるようになるんだ。


「でもそれなら何でリドターンさん達は同じじゃないんでしょう?」


「それについては幾つか推測がある。一つは儂らは既に習得が容易な初級スキルを多数習得しているからというものじゃ。その為習得難易度の上がる中級、上級スキルの習得には時間がかかるから実感が湧かんののじゃろう。無論レベルが上がれば実感出来るかもしれんがな」


 成程、スキルを取得して強くなる系のゲームで弱いスキルは簡単に取得出来るけど強いスキルをは取得するのが大変だもんね。


「他に考えられるのは年齢と能力が密接に関わる場合じゃな」


「年齢が?」


「要は歳をとると物覚えが悪くなるって奴じゃ」


 一気に切ない話になっちゃったよ。


「じゃがこれに関してはなんとかなるかもしれん」


「老衰が⁉︎」


「老衰と言われるほど年取っとらんわい! これじゃよ」


 そう言ってキュルトさんが取り出したのは若返りポーション

だった。


「肉体の状態に影響されるのなら、肉体を若返らせる事で習得難易度を変えられるやもしれん!」


 お、おお⁉︎ ここで若返りポーションが関係してくるの⁉︎


「まぁ、肉体由来の年齢でなく魂の得た年月が影響するのなら無意味な試みかもしれんが、実験無くして結果はない!」


 お、おお、すごいやる気だ。

 そういえばリドターンさん達は若返りポーションを定期的に飲んでいるからか、初めて見た頃に比べて大分若くなっている印象だ。

 初めて出会った頃は真っ白な髪の毛のお爺ちゃん達だったのに最近は黒い髪が混ざって来てる。


「噂のスキルね。今の話を聞くにこの世界のダンジョンで戦えば覚えられるということかしら?」


 ここまで驚くばかりで黙っていたタカムラさん達だったけれど、スキルと聞いて驚きよりも興味の方が勝ったらしい。


「そうとなったら早速ダンジョンに行くよ!」


「ええ! 追いかけ回されたストレス解消しちゃいましょ!」


「でもその前に」


 と、ダンジョンに潜る気満々だったお婆ちゃん達だったけれどピタリと止まる。


「「「「お買い物よ!」」」」


「え⁉︎ 買い物⁉︎」


「ダンジョンに潜るなら準備が必要だものね。異世界の探索道具はどんな物かよく調べなくちゃ!」


「異世界の薬草ってどんなのかしら? やっぱり調合もこの世界独特の手順があるのかしら?」


「私は生地が気になるわね。この世界特有の生地や魔物素材で作られた服を見たいわ!」


ダンジョン探索はどこへやら。すっかりお婆ちゃん達の話題は買い物に移っていた。


「やれやれ、どこの世界でも女性の興味の的は変わらんな」


「あー、儂は一抜けた。こう言うのは女に慣れたリドターンに任せる」


「私も神に祈りを捧げなければ。後は宜しくお願いします」


「あっ、お前達狡いぞ!スレイオお前も何か言ってやって……スレイオ?」


 しかし当のスレイオさんの姿は既にどこにも無かった。


「あの、スレイオ先生ならこの話が出た時には既に居なくなっていましたわ」


「なっ⁉︎」


 流石はパーティの目と耳を担当しているスレイオさん。危険を察知してとっくに逃げ出した後だったらしい。


「あ、あいつめぇぇぇぇ!」


「さぁ、それじゃあお店巡りに行きましょう!」


 哀れリドターンさんはお婆ちゃん達のお買い物に引き摺られていったのだった。

 頑張れお爺ちゃん。

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お爺ちゃんzとお婆ちゃんzの若返り同士、恋の予感?
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