第121話 お婆ちゃん達と逃避行(世界の果てまで)
ダンジョン暮らしの転生少女コミカライズ始まりましたー!
ピッコマ様より先行配信始まっております!
漫画版もお楽しみくださいませー!
気が付けばお婆ちゃん達の進化の話はあっという間に広まっていた。
そして進化について聞きたがる人達がいつぞやのように現れ大変な目に。
「どうやら聞き耳を立てていた人達が居たみたいねぇ」
逃げながらタカムラさんがあらあら困ったわねぇと全然困ってなさそうにため息をつく。
「やれやれ、うっかり世間話も出来やしないよ」
「私のせいでごめんなさい」
「あらあら、アユミちゃんが謝る事じゃないわよぉ。悪いのは人の迷惑を考えずに突撃してくる人達なんだから」
「そうそう、まぁそういう人達は弁護士を通して正式に抗議をするから、気にしなくて良いわ」
「でもあんなに沢山の人が相手じゃ下手に裁判したらお婆ちゃん達が恨まれちゃうよ!?」
自分達だけで利益を独占してるとか逆恨みされたら大変だよ!
「大丈夫よ」
けれどお婆ちゃん達は小さい子をあやすように私を優しく抱きしめて言った。
「こういうのは裏で騒動の糸を引いている人間が居るから、扇動している人間をピンポイントで狙って訴えていくの。訴えられたって情報が出回れば流されて騒ぎに乗った人達は自分が訴えられたら堪らないって逃げていくわ。後は裏で騒動を引き起こした元凶とお話をすれば大抵の騒動は別のニュースに置き換わって沈静化していくものよ」
「は、はぁ……」
それ、裏取引、いや脅迫っていうんじゃ……止めよう。見てはいけない世界に首を突っ込んでしまいそうだ。
それにほら、私には神様同士の喧嘩を止めるって大事な使命もあるしね!
「そういう訳だから落ち着くまでは暫く身を隠した方が良いわねぇ」
「身を隠すかぁ。それなら……」
今回の件で二度目だし、私だけ逃げたらお婆ちゃん達に迷惑な人達が殺到しかねない。っていうか確実にするよね。
「となれば……」
ここで私はこれまで温めていた考えを実行する事にする。
「あの、タカムラさん達と一緒にダンジョンに行きたいんですけど、かまいませんか?」
「あらいいわよ」
「ダンジョンならここよりは静かだろうしねぇ」
タカムラさん達の同意を得た私は、ダンジョン内で鍛錬をしているリドターンさんとアートさん達にもメールを送ってからダンジョンへ向かう。
そしてダンジョンに入り次第フロア転移を行って追いかけてきた人達を撒き、メールで待ち合わせをしていた場所でリドターンさん達と合流。そのまま隠し部屋へとやってきた。
「まぁまぁ、一層に隠し部屋なんてあったのね!」
「凄いわ、まだ未発見の隠し部屋があったなんて」
隠し部屋の存在を知ったタカムラさん達が感動の声を上げるが、私はそれに疑問を感じる。
「ダンジョンって攻略されるたびに内部が変わるから驚くことはないんじゃないですか?」
しかしフルタさんがそうだけどそうじゃないのよと意味深なことを言う。
「ええその通りよ。でも部屋の全体構成は変わらないものなのよ。なんて言えばいいのかしら。そのフロアで使われる通路と部屋の数と大きさは同じで、それを組み替えている感じなの」
「積み木の積み方をどれだけ変えても使っている積み木の数と形は変わんないだろ? だから隠し部屋の発見は新しい積み木を見つけたって事なのさ」
成程、この世界のダンジョンってそういう風に再構築されてたんだ。
で、私が発見するまで隠し部屋ブロックの存在が誰にも気付かれてなかったと。
「これは探索者協会の怠慢だね」
「じゃあここは私達だけしか知らない秘密の場所なのね。光栄だわ」
「私達を連れて来たかったのはここだったのね」
「いえ、ここもいざという時の避難場所として教えたかったんですけど、もう一つ知ってほしい事があって」
ここで私は一旦言葉を切る。
「でもそれを知るとタカムラさん達には今まで以上に面倒事に巻き込まれる事になるんです。それこそ命に関わるような騒動にも」
そう、タカムラさん達に教えたいのは、異世界エーフェアースのことだ。
この世界ルドラアースとは違う別の世界。
そこなら進化の情報を聞き出そうとする人達からタカムラさん達を保護できる。
タカムラさん達ならこのことを知っても悪いようにはしないだろうという信頼もある。
問題はエーフェアースに関わった事で何かしらのトラブルに巻き込まれないかってことなんだけど……
「なんだいまだそんな事言ってんのかい。いいから教えな」
けれどそんな私の懸念をオタケさんは何でもないことのように切り捨てる。
「アタシ等がアンタの何倍生きてきたと思ってんだい。こちとらババァになるまでアンタが想像もできないような人生を生き抜いてきたんだよ。今更アンタの事で驚くことなんざないさ」
「驚くは驚くでしょうけどね」
「でも私達だってアユミちゃんが聞いたらびっくりするような体験をたくさんしてるのよ」
「だから安心してアユミちゃん。私達は大丈夫よ」
「皆さん……」
お婆ちゃん達は何も心配していないと、むしろ自分達をもっと信じろと眼差しで告げてくる。
「……分かりました。それじゃあ……いえ、口で話すよりも実際に体験して貰った方が良いですね。『世界転移』!!」
私は皆を連れてエーフェアースへと転移すると、ダンジョンを脱出してエーフェアースの街並みをお婆ちゃん達に見せた。
「ここは異世界エーフェアース。リドターンさん達の暮らす世界で、皆さんの暮らしていたルドラアースとは別世界です」
どう見てもさっきまでいた世界とは違う町並み。
更に車の代わりに見た事のない動物が引く馬車が石畳を進む。
鎧を纏う人は居ても科学の匂いが濃厚だったルドラアースと違い、純100%のファンタジー世界。
それを見たタカムラさん達は……
「「「「なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」
普通にめっちゃ驚かれた。