第120話 お婆ちゃん再誕(ババァーンとリボーン)
ご報告です!『ダンジョン暮らしの転生少女』のコミカライズがデジタルカタパルトさんのやんのかCOMICで配信決定しました!
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『アユミちゃんから貰った追加の若返りの薬を飲んだら、突然目の前に条件を満たしました。進化をしますって文字が浮かんできたの』
「ふぁっ!?」
タカムラさんから送られてきたメールは、正に出来る女上司女神様から聞いた内容そのものだった。
「このタイミングで来ちゃうとかマジ!? いやこのタイミングだから来たって事!?」
何しろ大神達がテコ入れの為に始めたレイドの直後だ。それがきっかけで進化する人が出てきてもおかしくはない。おかしくはないんだけど話が急過ぎでしょ!
するとまたピコンという音と共にタカムラさんからメールが送られてくる。
『それでね、妖精のアユミちゃんなら何が起きたのか分からないかと思って連絡したの』
「うおお、滅茶苦茶的確に真相を言い当ててくるじゃん」
経験を積んだ熟練の探索者の勘ってヤツ!?
「いや単にこの世界で一番非常識なのが姫様だからじゃない?」
「キュイ」
待て待て、それはおかしい。私はどこにでもいる可愛い探索者ですよ。
ともあれ頼られた以上は放っておくことも出来ない。
というかタカムラさん達の進化した姿とか普通に見てみたいし。
「一度確認したいので逢えますかっと……」
さて、進化したタカムラさん達は一体どんな姿になったのだろうか。
「やっぱり若返って美少女化とかしたのかな?」
◆
「待ってたわアユミちゃん」
「お。おおー?」
いつもの図書館横の公園で落ち合う事になった私は、先に来ていたタカムラさん達の姿を見て予想外の驚きに包まれる。
「あんまり変わってない」
そう、タカムラさん達は若返るでも背中から羽が生えるでも、髪の毛がキラキラ輝くでもなく、ごくふつうのお婆ちゃんのままだったのだ。
まぁちょっと雰囲気変わったかなって感じがするけど。
あと変わったところと言えば……
「眼鏡?」
タカムラさん達はそれぞれが小さな眼鏡を鼻の上にチョコンと乗せたり、指先に何かゴテッとしたものをつけたりしていた。
「これね、私が進化とかいうのをした後で出てきたのよ」
「眼鏡が?」
言われてよく見ると、この小さな眼鏡普通の眼鏡のように耳に引っ掛けていない。
というか宙に浮いていた。
ちょうどタカムラさんの鼻の上で肌に触れないように少しだけ浮いているのだ。
「何ですかこれ?」
「進化した後に目の前に文字が浮かんできたんだけど、それによると鑑定眼っていう進化した事で手に入れた力を形にしたものみたいなの」
「鑑定眼!? 何それ、ゲームとかでお約束の鑑定能力って事ですか!?」
「お約束は分からないけど、ポーションの性能を確認できる能力みたいよ、実際に試してみたら目の前にポーションの名前や効果が浮かび上がって来たわ」
ほえー凄い! マジでゲームみたいじゃん!
「分かるのはポーションだけなんですか?」
「そうみたい」
んー? ポーション限定の鑑定能力ってなんか妙に限定的だね。
それとも進化のレベルがまだ低いからとか? 新しく進化したら鑑定できる種類が増えてくるのかな?
「でも便利な能力だと思うわ。この眼鏡で見たら本当に成功してるかどうかが分かるんだもの」
「あれ? でも前に作った時はちゃんと完成したって判定してくれましたよね?」
前に私が練習で作った時はちゃんとできてるって太鼓判を押してくれたけど?
「それはこれまで数え切れないほど作って来た経験があったからよ。適切な分量で正しい作り方をした結果いつも通りに出来上がったから成功と判断したのよ。でも他人が作った薬や古くて品質が怪しくなった薬でも薬効が残ってるか分かるじゃない。もっとも、まだまだ検証が足りてないから完全に信用するには怖いけれどね」
凄いな、こんな便利な力を手に入れてそれでも用心深く完全に信用しないんだ。
それに古くなった薬がまだ使えるのかを確認出来るのは確かに重要かもしれない。
消費期限とか薬でなくても重要だもんね。
「セガワさん達も鑑定できるようになったんですか?」
「アタシたちは違うね。タカムラは霊薬師、フルタは服飾師と全員違う進化だったよ」
「霊薬師? 服飾師?」
え? 妖精人とかじゃないの? なんか進化ってよりも職業っぽくない?
「ちなみにアタシは武具師、オタケは魔工師だね」
と、皆が進化で得た名前を教えてくれた。うーん、やっぱ職業っぽい。
これはあれか? ゲームで言うクラスチェンジとかかな?
戦士から魔剣士や聖騎士になるみたいな感じでタカムラさん達は進化という名のクラスチェンジをしたんだろう。
妖精人になった私と違うのは、エーフェアースとルドラアースの成長システムがレベルアップとスキル取得の違いみたいなものだからじゃないかな?
つまりエーフェアースの人は進化するとクラスチェンジして、ルドラアースの人間は進化すると種族が変わるんと。
「って事はこれ、私がこっちで進化するとクラスチェンジするって事?」
むむむ、今はただの無職妖精だけど、進化して妖精騎士とかになるんかな?
いやリューリが妖精騎士姫とかなんか勝手に名付けてたけど、あれは他称だし。
結局、タカムラさん達がクラスチェンジした理由は分からなかった。
なので出来る女上司風女神様にメールで確認したところ、あっさりと教えて貰えた。
『それはアユミさんと深い繋がりができたからです。貴女は世界で初めて進化した個体です。その貴女と深い繋がりを得たものは、貴方に触発されて進化しやすくなるのです』
ほえー、そうだったんだ。
『以前貴方に進化した人間を増やすように言ったのは、貴方が人々の進化の触媒になるからなのです』
ああ成程、それでこの間のメールでたくさんの人を進化させろって言ってきたのか。
『多くの人々と縁を結び進化した人間達を従え、より難易度の高いダンジョンを攻略してくれる事を期待しています』
で、結局はそこに集約するわけね。
「ま、私の使命はダンジョンのクリアだもんね。大神の大戦争が起きる前に沢山クリアして力を削がないとだ!」
よーし、他の皆も進化させるぞー!
だが私はうっかりしていた。
タカムラさんのように進化する人達が増えたらどうなるかを。
人間が進化してパワーアップする事が世間に周知されるようになると、当然その原因を皆知りたがる。
うん、つまりスキルと若返りポーション以来の大騒動が巻き起こるんだ
「「「「進化ってどうすればできるのーーーーーっ!?」」」」
「またこの展開かぁー!」