第119話 ママはとても寂しい(ので鬼電する)
『メールが届きました』
「何か新機能が生えてる」
目が覚めると、目の前にメールの着信らしき文字が浮かんでいた。
「こんな事をするのは……一人しかいないよね」
仕方なくステータスを開きメールを見ると、そこにはズラリと未読メールが並んでいた。
「しまったー」
うっわー、ついついメールのチェック忘れてたよ。
「うわっ!? 新しいメールの着信時間ヤバッ、数分おきに送ってきてんじゃん!」
束縛の強い付き合いたての恋人か!!
「しゃーない、中身を確認するか」
『お母さんです、元気にしていますか? 今だ夏には早いですが気温が暑くなってきています。寒暖差に気を付けてお体を大切にしてくださいね』
「親かっ!!」
まさかのオカンメール!!
もしかして他のメールも全部こんな感じなの? ダンジョン攻略に役立つ内容じゃなくて?
『ご飯はちゃんと食べていますか? お菓子や脂っこいものだけでなく野菜を栄養バランスよく食べるのですよ』
「健康チェック!!」
『そろそろお母さんにお手紙の返信をしてくれてもいいのではないですか?』
『既読マークがついていないのですが』
『何かあったのでしょうか? 大丈夫なら連絡してください』
『返信……』
「……面倒っ!!」
これは面倒くさい。凄く面倒くさい。やはり放置で良いのでは?
『メールが届きました』
とか思ってたら目の前に迷惑メールの広告みたいに着信がポップアップされる。
「こんなんが戦闘中に出てきたら大惨事だぞ」
仕方なく私はメールを開いて……即消し。
残ったメールを開く消す開く消すを繰り返しとりあえず既読マークを付けてゆく。
そして最後のメールをチラ見して真面目に読む必要はないなと判断したところで、返信ボタンを押して一言『元気です』とだけ送った。
「つっかれたー!」
何が辛いって読んで肩透かしを食らうような実の無い内容ばっかりだった事だよ!
あと何気に返信機能が付いてる。
『メールが届きました』
「またかー!」
この期に及んで何を送って来たんだとうんざりして開けたら、別の人物いや神物からのメールだった。
『おはようございます、知恵の女神です』
「あれ? 出来る女上司風女神様じゃん」
『突然の事に驚きでしょうが業務連絡です。貴方を担当していた女神に頼まれ着信通知機能と返信機能をステータスに実装しました』
「余計な事を!!」
そうだった、ステータスのシステムまわりの管理はこの女神様の仕事だったんだ。
くっ、何でこんなクソ機能を付けたのさ!
『お怒りの事とは思いますが、貴方がメールを読まないと女神が仕事をサボるので、やむなく実装しました。これは貴方がメールのチェックをしなかった事も原因の一つなので受け入れてください。突然の要望に私も無駄な仕事をさせられました』
「それはごめんなさい」
とばっちりで働かせて申し訳ない。
『こちらにクレームが来るのは迷惑なので着信表示機能の解除は出来ません。代わりにステータスから着信画面の透明度調整が出来ます。+マークを押して透明度を調整して下さい』
スマホの機能かな?
試しにやってみると成る程確かに表示画面の背景の透明度が変わった。文字はそのまま表示されてるけどさっきに比べればだいぶマシだ。
『メールには大事な業務メールもあるので、なるべく目を通すようにしてください』
えーと、返信で「迷惑メール設定とか出来ませんか」っと。
『メールが届きました』
『できません』
「だめかー」
しゃーない、ちゃんと読むか。真面目なメールだけ。
『大規模レイドクエストの攻略ご苦労様でした。今回の件は大神達が互いの人類の成長度合いが停滞してきたことに業を煮やした事が原因です』
え? でもダンジョンは世界中でクリアされてるんでしょ?
『ダンジョンをクリアしているから問題ないと思うでしょうが、大神達にとって重要な事は、自分達の世界の人類の方が優れている事です。つまりただダンジョンを攻略するだけでは神の視点では些細な差なのです』
マジかよ。これ以上何を求めてんの神様?
『二つの世界の人類がダンジョンに適応してきた現在、神が次に求めているのは存在の進化です』
「存在の進化?」
『つまり、貴方が妖精に進化したように、人間達の中から進化した個体が出てくることを求めているのです』
「あれかー!」
確かに私は妖精人に進化した。大神達は他の人間達にもそうなれって言いたいわけか。
でもなんとなくわかって来たぞ。
この世界をトレーディングカードゲームで考えると、今出てるのは全部レア度の低い人間カードばかりなんだ。
だからレア度の高い他の種族のカードが欲しいんだろう。
私は妖精人だから多分一個上の星2カードとかそんな感じかな。
って事は大神達が欲しがってるのは箱に一つ、いやメーカーから送られてくる段ボールに一個の星5シークレットなSSRカード種族って事なんだろう。
だって珍しいカードは分かりやすく相手にマウント取れるもんね。
「今までの人間は星1カードだけでなんとかやりくりしてたけど、これからはそれじゃやっていけない敵が出て来るかもって事かぁ」
『ですから、貴方にはダンジョンの攻略以外にも自身の進化と仲間達の進化を目指してほしいのです』
「でも進化って具体的にはどうすればいいの? 私の場合リューリとの合体がきっかけだったけど……」
あとはアレか、色々スキルを取得したのも理由か?
でもそれだとルドラアースの人間は地理的な理由でスキルを取得しにいけないから進化出来ないよね。
こっちは何か別の条件があるのかな?
『大神達から聞き出した進化に重要な条件は大きく分けて4つ。レベル、アイテム、眷属、スキルです』
眷属とスキルは妖精に進化した時の条件だから、レベルとアイテムがルドラアースの進化条件って訳か。
『また特殊条件を満たす事で派生進化する事も出来ますから、可能な限り珍しい進化を目指してください』
ふむふむ、特殊進化とかゲームみたいだね。
『これは貴方の妖精進化にも関わっています。現在貴女が従えている妖精は泉。つまり水の属性です。ですから火、風、土にかかわる妖精を探し進化しなさい。そうすれば新たな力を授かるでしょう』
ええっと、妙に詳しいけど女神様どうやって大神達から聞き出したん?
そこら辺まで行くとゲームの攻略情報レベルでは?
もしかして神の世界ってカミペデアとかある?
「ともあれ、結構重要情報だね。明確なパワーアップイベントだし、次は皆の進化を目指して探索しよう!」
と、その時だった。腰のホルダーに取り付けたDホンがブルブルと震えてメールの着信を知らせてくる。
「今日はよくメールが来るなぁ」
メールの主はタカムラさんだ。
『アユミちゃん、今良いかしら?』
『はい、大丈夫ですよ』
何だろ? 急用かな?
『実はね、アユミちゃんから貰った追加の若返りの薬を飲んだら、突然目の前に条件を満たしました。進化をしますって文字が浮かんできたの』
「ふぁっ!?」
ええ!? マジでっ!?
幾らなんでもタイミング良すぎでしょ!