第112話 レアも続けば普通になる(強さは据え置き)
「た、たすけてくれぇー! レアモンだぁー!」
「うわぁー。なんでこんなタイミングでレアモンが出てくるんだよぉ!」
一言で言えば大惨事だった。
何故かダンジョンのそこかしこでレアモンが発生していて、私達は進むたびにレアモンに襲われる人達に遭遇していたからだ。
「うーん、レア? レアなのかな……?」
ここまで来るともうレアではないのでは?
ソシャゲ的のガチャなんかで毎回出てくる自称レアみたいな雰囲気になってきたぞう。
射幸心を煽るの良くない。
「まぁSSRレアモンとか来たら普通に死ぬから出てきても困るけど」
「ええと、嫌なフラグ立てるの止めて貰えませんアユミ様」
おっと、アートさんに聞かれてた。
「とはいえ、これは異常ね。レアモンの同時大量出現、偶然とは思えないわ。
「タカムラさん達から見てもおかしいんですか?」
経験豊富とか、年齢を思わせる事は言わないでおく。
「ええ、そもそもレアモンは数か月に一回遭えればいい方だもの。人によっては年単位で遭遇しないものなのよ」
「え? 私数日おきに会ってる気がしますけど……」
何なら一日に何回も遭遇したことあったぞ?
「……アユミちゃんはレアケースだから」
それで済んじゃうんです?
「ともあれ、こりゃあ全然進めないねぇ」
「放っておくのも後味が悪いものね」
と、お婆ちゃん達は目についた要救助者達を圧倒的な暴力で救ってゆく。
おかしいな、魔物達の頭が一瞬で消し飛んだり、体に大きな風穴が空くんですけど。
レアモンとは一体……
「こういう時、魔力を消費して使う魔法は便利だな。スキルだと回数制限がネックだからな」
「そうじゃな。味はともかく魔力回復ポーションなるものでいくらでも魔法を使い続けられるのは本当にありがたいのう」
と、スレイオさんとキュルトさんが長期戦の際の魔法の便利さについて語り合う。
「そういえばスキルって寝る以外に回復手段ってないんですか?」
「「ない」」
無いんだぁ。
「じゃから大量のスキルを取得して弾切れしづらくするか、回数制限のないパッシブスキルでしのぐかじゃな」
呪文を唱えなくていいのは便利だけど、割とシビアだったんだねエーフェアースのスキル社会って。
でも確かにこのままだとレイドの開始前に間に合わなくなりそう。
「なら、一気に下層まで飛んじゃいましょう。皆私の所に」
皆が集まった所で、私はダンジョンのフロア移動能力を発動し、今いける一番下の階層まで飛んだ。
「あら? 景色が?」
「おお、これがアユミの階層移動能力か。これは凄いな」
私の新しい能力を初めて体験するお爺ちゃんお婆ちゃん達が驚きの声を上げる。
『え? 何今の? 急にダンジョンの景色がかわったんだけど?』
『勉強不足乙。妖精ちゃんのフロア移動能力は探索者の間ではもう有名だぞ』
『マジかよ。これだけでもう金稼げるじゃん』
と、アートさんの配信を見ていた視聴者達が驚きの声を上げている。
でもそうか、フロア移動能力を使ってお金稼ぎって方法もあったか。これは盲点。
こんど試してみよっと。
「最下層までまだ数階あるから、急ごう」
私達はダンジョンを駆ける。
道中やはりレアモンに襲われる探索者達もいたけれど、さすがにこの辺りに来る探索者達は突発的なトラブルにも対処できるようで、大半の探索者達が自力で何とかしていた。
けれどそんな中でもピンチになる人達はいる訳で。
「おいおい聞いてねぇよ! こんな所でレアモンに出くわすなんてよぉ!」
「お前がレア素材をゲットできるかもしれないからボスレイドに行こうなんて言いだしたからだぞ!」
「何が高ランクの冒険者の後ろをついて行けば魔物を倒して貰えるだ! あっさりおいてかれちまったじゃねぇか!」
「お前等だって乗り気だったじゃねぇか」
あー成る程、高ランク冒険者の後ろを同じ目的地に向かってるだけですよって何食わぬ顔でついていけば、その人達をボディーガード代わりに利用できると思ったんだ。
セコイ事を考える人達もいたもんだなぁ。
「ああいうのは無視していこう。ダンジョンを舐めた者の自業自得だ」
わーお、スレイオさん無慈悲。
どうやらお爺ちゃん達的にはああいう心の根の人達は救助対象に入らないっぽい。
「そうね、行きましょうか」
と思ったらお婆ちゃん達も助けないっぽい。ちょっと意外。
「ああいうのは昔からいるのさ。他人を利用して賢くなったつもりでいるから下手に助けると助けに行った奴も巻き込まれるから誰も助けなくなったんだよ」
あー、昔からいるんだねああいう人達。
「ダンジョン内は自己責任。寧ろ助けて貰える方が珍しいのよ。善意でもあんまり頻繁に助けると、ああいうのが増えるからよくないのよ」
「まぁ運がよければ生き残るわよ。ああいうのは生き汚いから」
と、お婆ちゃん達のありがたい教訓を聞きながら、私達は最下層へと向かうのだった。
ダンジョンにもいろんなのがいるんだなぁ。