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第109話 ダンジョン老人会(ただし若返ってます)

 今日はダンジョンレイドの日。

 私はエーフェアースの皆とアートさんを引き連れて、タカムラさん達との合流場所と向かう。


「アユミちゃーん! こっちよー!」


 と、先んじてこちらを見つけたタカムラさん達が手を振ってこちらにやってきた。


「おはようございますタカムラさん。今日はよろしくお願いします」


「こちらこそ今日はよろしくね。ところでそちらの方々は……」


 と、タカムラさん達の視線が私の後ろに移る。


「これはご挨拶が遅れて申し訳ない、お嬢さん」


 そう言って前に出たのは四人のイケオジ達。

 そう、リドターンさん達だ。

 ただし彼等の姿はもはや私の知っているあのお爺ちゃんズではない。

 今のリドターンさん達は、全員が白髪ではなく黒や赤、茶と言った鮮やかな色に染まっており、シワシワだった肌はピンと張りと肉のある体になっている。


「リドターンと言う。以後お見知りおきのほどを」


「ストットと申します」


「キュルトじゃ」


「スレイオだ」


 若返りのポーションを繰り返し試したリドターンさん達の体はすっかり若返っていた。

 今の彼等は大体30台前半の青年から中年の間くらいの見た目となっており、鍛えぬいた筋肉はまるでファリウッド映画のアクション俳優のようですらあった。


「……これはご丁寧に、私はタカムラと申します」


「……フルタです」


 お婆ちゃん達はリドターンさん達のイケオジっぷりに圧倒されつつもしっかり挨拶を返す。


「今日は弟子のアユミに誘われ我々も魔物狩りに参加させてもらう事になった。足手まといにはならないつもりですので、よろしくお願いします」


「私達の方こそ、足を引っ張らない様に気を付けますのでよろしくお願いしますね」


 どうやらお爺ちゃんとお婆ちゃん達の初顔合わせは上手くいったみたいだね。


「準備が出来ているのならさっそく潜りましょうか。打ち合わせは道中で」


「そうですね。既に有力なパーティはダンジョン入りしていますからね」


 ストットさんの提案を受け、私達はさっさとダンジョンに潜ることになった。


 ◆


「戦闘に関してはそれぞれのメンバー同士で交代で戦いお互いの実力を見せ合いましょう。全員が本気で戦うのは目的の階層付近でしょうからね」


「話が早くて助かるね。それじゃあまずは私達からやらせてもらおうか」


 と、姿を見せた魔物を見てオタケさんが前に出る。

 彼女は武器を持っていなかった。代わりに両腕にはゴツイ小手を装備している。


「いくよ!」


 ボンッと何かが爆ぜる音がしたと思った時にはオタケさんの姿はなくなっていた。


「そい!」


 掛け声と共にボッという音がなり、ボゴンという音が響く。

 音の方向を見れば、いつの間にかオタケさんが魔物達の正面に立っており、拳を振りぬいた姿勢で立っていた。

 その前に居る魔物を見れば、何故かあるはずの頭が無く、その背後の壁に真っ赤な花が描かれていた。


「ほう、武闘家か。それもかなりの使い手だな」


「ええ!? オタケさんって武闘家だったんですか!?」


 そんなバトル漫画の凄腕お婆さんみたいな職業だったの!?

 普通お婆ちゃんキャラって言ったら魔法使いとか回復役じゃないの!?


「やれやれ、年は取りたくないねぇ。すっかり体が動かなくなっちまったよ。まぁ最近はちっとばかり若返って少しは昔のように動けるようになったけどね」


 と言ってニヤリと笑みを浮かべるオタケさん。

 いやいやいや、その動きで体が言う事を聞かないってのは通らないんじゃないですか?

 めっちゃバリバリの現役の動きじゃん。


「オタケちゃん、私達の獲物まで取っちゃ駄目よ」


 よ、フルタさん達も前に出る。

 フルタさんの武器は槍……じゃないな。槍の両端に長い剣が付いたような形状をした武器だ。


「いくわよ」


 フワッとかトンといった感じでゆったりと跳躍したフルタさんは、しかしその動きの緩慢さとは正反対の速度で魔物達のど真ん中に立つと、手にした双刃槍とでもいうべき武器をススッと動かして左右の敵の頭部を貫いた。


「じゃあ私はあっちの固そうな魔物をやろうかしら」


 といつもは口数の少ないセガワさんが動く。


「よいしょっと」


 その両手に握られていたのは、彼女の身長よりも幅広な戦斧だった。

 身長よりも長いじゃなく幅広、つまり横に大きいのだ。

 もちろん縦にも長いんだけど、なんていうかサイズがバグっていた。


「そぉーれ!」


 どうみても数トンはあろうと言う巨大な戦斧をセガワさんは竹ぼうきを振り回すような気軽さで振り回す。

 すると憐れ魔物は豆腐のように簡単に真っ二つになってしまった。

 ええと、どうなってんのアレ? 明らかに人間の限界を越えてない?


「ほう、これは中々」


「ええ、見事ですね」


 そんなお婆ちゃん達にリドターンさん達はやりますねぇとか格闘技の試合を見ているような気軽さで話をしている。


「もう、皆もっとおしとやかに戦わないとアユミちゃんの教育に良くないわよ」


 そんなバイオレンスな光景を窘める様にタカムラさんが声を上げた。


「タカムラさん!」


 そうだ、タカムラさんは錬金術師だもん。もっと知的でクールな戦い方を披露してくれる筈!


「残りは私が掃除するわね」


 するとすぐさまオタケさん達がこっちに戻って来る。


「そうね、この辺りの敵ならこれでいいかしら?」


 と一本の試験管をベルトにかけたポーチから取り出すタカムラさん。


「それは何かの薬ですか?」


「ええ、こういう薬よ」


 と、タカムラさんが魔物達に向けて試験管を放り投げると、丁度真上で試験管が割れる。


「え?」


 突然試験管が割れた事に驚く。


「指弾ですね。何かを飛ばしてあの容器を割ったようです」


 そう説明したのはフレイさんだ。

 タカムラさんはそんな事も出来るんだね。

 割ったのは試験管の中身を魔物達に纏めて浴びせる為かな?

 さてさて、その効果はいかなるものか……


「「「「グェェェェェェッェェッ!!」」」」


 突然魔物達がのたうち回りながら苦しみ始める。


「ええ!?」


 突然何事!? タカムラさんのやった事なんだろうけど、ダメージを受けたり酸みたいに溶けたりするんじゃなくて苦しみだした!?


「「「「ゴェアァァァァ……ガク」」」」


 そうしてあっという間に魔物達は動かなくなった。


「……何今の?」


 一体タカムラさんは何をしたの? いや何があの試験管に入っていたの?


「これが錬金術のもう一つの側面よ。人を守る物や癒すものを作れる一方で、人を傷つけ冒すものも作れる。アユミちゃんも何を作るのか、よく考えて手に入れた知識を活用してね」


「は、はい!」


 分かった事が一つある。

 タカムラさんの戦闘能力もえげつないわ。

 オタケさん達が急いで戻ってきたのって、絶対巻き添えを喰らいたくなかったからだよね!?


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― 新着の感想 ―
エッグい毒(笑) まあ、薬師や錬金術師の製薬は、治癒、回復、バフ、デバフ、毒や酸による直接攻撃だけじゃないから。 毒も麻痺や目潰しなどの状態異常を与えるものから、強制自白剤とか、氷結薬とか火炎瓶、雷撃…
おばあちゃん(元)、カッコいい! 次回はおじいちゃん(元)もいい所を見せつけてくれるはず!
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