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第103話 海辺のダンジョンツアー(お腹が空くなぁ)

「というわけでやってきました観光地ダンジョン!」


 若返りポーションの件のほとぼりが冷めるまで、私達は観光地ダンジョンに行くことにした。

 目的は御当地ダンジョンでのみ食べられると言うダンジョングルメが目当てだ。


「この海ダンジョンは海岸をベースにしたダンジョンって話なんだけど、釣りもできるらしいんだよね。海岸近くは小魚やカニが、沖に出る程大物がゲットできるらしいんだけど、出過ぎるとかなりクジラサイズの魚の魔物に襲われるらしいから、お勧めしないんだって。


私は小瓶から顔を出したリューリと合体しているクンタマにガイド雑誌に載っていたダンジョンの説明をそのまま伝える。


「じゃあ海岸で小さなのを釣るの?」


「ううん、この説明だと海岸沿いは大した獲物が居ないと思うかもだけど……」


 と、私は説明を中断して武器を構える。

 クンタマと合体した事で得た獣の耳が、人には確認が困難な小さな違和感を拾い上げる。


「ふっ!」


 違和感が大きくなった瞬間、斜め後ろに跳ぶ。

 同時に砂浜が爆発した。

 いや違う、海から現れたモノが、私達の居た場所を攻撃したのだ。


「こういうのが居るんだよ!」


 現れたのは、推定身長5m、横幅に至っては10mはあろうかという巨大なカニだった。


「トレーラーキャンサー、見ての通り物凄く大きなカニだよ」


「でっか!」 


『大きい! たくさん食べれる!』


 リューリとクンタマがカニの巨大さに目を丸くする。


「でもただの巨大カニじゃないんだよ」


 トレーラーキャンサーがカニにあるまじき直進をしながら迫ってくる。

 と言うか足の関節が横向きじゃなくて人間と同じ向きに曲がってる!


「うわキモッ!」


「『水腕』!」


 私はスキルを発動して水の触腕でトレーラーキャンサーの足を絡めとる。

 バランスを崩したトレーラーキャンサーは勢いよくすっ転び、こっちに向かってスライディングしてくる。


「はぁ!」


 私は巨大なハサミの付け根に剣を突きさすと、グリッとねじって切り取る。

 妖精の私の力では無理だが、クンタマの獣の力がいつも以上のパワーを私に与えてくれる。


 ハサミの片方を切り取られた事で怒ったトレーラーキャンサーが勢いよく起き上がり、残ったハサミをガチガチと鳴らして威嚇してくる。


「うーわ怒ってんじゃん。どうすんのこれ?」


「大丈夫。ガイド本だと腕を失った事でかなりバランスが悪くなるから寧ろやりやすくなるんだって」


 事実、片腕を失ったトレーラーキャンサーは攻撃をすると大きくバランスを崩してよろめく。


「ここでハサミを攻撃するとバランスがよくなっちゃうから、同じ側の足を切り落として更に動けなくする!」


 そうしたらあとは相手が攻撃した隙を縫って残ったハサミと足を切り落とせば終わりである。

 なんて簡単そうに説明したが、これが出来るのは一定のレベルまで上がった冒険者達であり、低レベルな冒険者では最初のハサミを切り落とす事すら出来ないのだとか。


「これでデッカイカニをゲットって訳ね!」


『食べ放題』


 トレーラーキャンサーを倒した事で大きなカニを食べ放題と二人は興奮する。


「いや、トレーラーキャンサーは美味しくないらしいよ」


「え?」


『キュイ!?』


「『じゃあ何で狩ったの!?』」


 二人の疑問も尤もだ。

 だけどその疑問はすぐに解消される。


「それはね、ここを開けると!」


 私はトレーラーキャンサーのお腹に刃を差し込んでこじ開ける。

 するとガパッとお腹が開き、そのなかから大量のカニが出て来た。


「『ええーっ!?』」


「トレーラーキャンサーはね、お腹に大量の子供を仕舞ってるんだ。親は子を産んでエネルギーを消費したからなのか美味しくないんだけど、子供はすっごく美味しいんだって!」


「『おおーっ!!』」


 そう、トレーラーキャンサーとはトレーラーのように大きなカニではなく、トレーラーのように内部に大量の子供を搭載しているカニという意味だったのだ。


 親が美味しくないのは、卵を産んだ後の鮭の味が落ちているのと同じ理由なんだろうね。


「という訳で今日はカニパだぁー!」


「『おおーっ!』」


 大きさは普通のサイズになっちゃったけど、それでもこれだけ数があれば相当な量を食べる事が出来る。

 アートさん達も修行で大変だろうし、ここはいっちょ差し入れという事で皆にも食べさせてあげよう!

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― 新着の感想 ―
寒くなってきた時期に蟹の話は破壊力が高い お裾分けの気配りが素敵
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