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7.あくまで親友です!

「おっす颯真〜。久しぶり」

「お疲れ様です。すいません、今時間大丈夫ですか?」

「おー、今動画取り終わったとこだから大丈夫。どした?この間の配信、挙動不審だったけど」

「うっ」


痛いところをついてきたのは、事務所の先輩。女装男子グループのリーダーであるカナタさん。

女装男子といっても立ち位置は様々で、女子になりたい男子、女装が好きな男子、女装が似合うから仕事でやってる男子がいて、カナタさんは最後に当てはまる。

細身でなで肩、色白で体毛も薄く中性的な顔立ちで、男としても美少年枠だが女装のハマり方がエグい。よっぽど注意して見ないとわからないくらい完璧に美少女になってしまう。これで成人男性とか嘘だろ、って存在だ。なお副業はFPだそうだ。FPって何?

とにかくカナタさんは、仕事以外では完全に男で、メンタル的には異性とグループ組んでて、何より自分を魅せることを仕事に選んだ人だ。

そういう意味で、非常に有益なアドバイスがもらえそうな人である。ただし。


「その、その件というか、それとは別というか……とにかく、相談したいことがありまして」

「いーよー。何?颯真もやってみる?女装」

「いえ、そっちは全力でお断りします」

「じゃあ真白んのこと?」

「それ……も、あります」

「よし、じゃあ付き合えお前ら」

「何でそうなるんですか!」


とにかく軽くてとにかく俺を、いや俺達後輩をからかうのが好きなんだよな、この人。

能力はあるけど相談はしたくないんだよなぁ……。

とはいえ、他に頼れる人もいないし仕方ない。


「あの、真白がですね、自分にはガチ恋はいないとか言ってて。んで俺はそんなわけないだろって、色々エゴサ?して、結果、こう……変な情報が入ってきて、それで挙動不審になったというか」


我ながら要領を得ないというか、わかりにくい説明になったと思う。

いやだってさ、相方をエロい目で見たくないっていうか、見れないっていうか、そのはずなのに脳内の妄想は元気とか、説明できないじゃん。したくないじゃん。


「ん?付合ってるとかなんとかって話が出たのはその前だよな?簡単に事務所の意向暴露しちゃって何考えてるんだか、って黒沢さん頭抱えてたぞ」

「えっ。俺ら直接は言われてないんですけど、やっぱ駄目でした?」

「いや、結果オーライだって言ってたから大丈夫じゃね?それより他の変な情報って……あぁ、真白が可愛いとかエロいとか、そういう系?」

「んっ」


しかも勘が鋭いじゃん。探られたくないとこ鋭角に抉ってくるじゃん。


「あぁ〜なるほど。真白んのこと親友とか言ってるくせにそういう目で見ちゃったわけだ」

「見てません!見たくないから挙動不審だったんです!」

「はいはい。なるほどね。それで、俺に相談ってのは?挙動不審と関係あるの?」

「関係は……あれ?……ないです」


なかった。言う必要なかった。

俺!だから!素直すぎるんだよ!聞かれたこと全部説明してどうする!

落ち着け。気を取り直せ。深呼吸だ。


「いや、あの、真白が投稿頑張るようになって、ますますファンが増えてるみたいで、負けてられないな、って。でも俺、黒沢さんにも真白にも、そのままでいいって言われてて、なんか出来ることないかなって……」

「なるほど。グループ内での競争ね。確かに颯真は自然体が魅力だけど……何もするなって言われてるわけじゃないだろ」


まぁ、そのままでいいとは言われたけど、余計なことするなとは……あれ、真白はなんて言ってたんだっけ?要は無理やり作るな、みたいなこと言ってたよな?


「ファンの増やし方、違う方向で考えてみれば?今はファンが喜ぶこと考えてるだろ?そうじゃなくて、新しい層のファンを開拓するっていうか」

「新しい層……ネットアイドルに興味がない人たちですか?」

「まぁそーなるけど、それだと漠然とし過ぎ。お前の得意なこと、好きなことってなんだ?」

「野球とダンス、ですかね……どっちも大したことないですけど」

「別に一流じゃなきゃだめってもんでもないだろ。野球ネタであるある動画作ってみるとか、振り付けやってみるとか。あぁ、お前子供の相手も得意だろ?ショート動画とか小学生もよく見るし、そっち開拓してみたら?」


野球ネタとか、アイドルファンにはかすりもしないと思ってたし、ダンスも上見たらキリがないし、子供相手とか考えたこともなかった。

目から鱗ってこういうことだな。この人に相談して良かった。


「あ、ありがとうございます!やってみます!」

「おー。楽しみにしてる。それはそれとして、女装やんない?」

「やりません」

「メイク動画やりたいんだけど、素材を変えないと飽きられちゃうしさ。俺だとモトが良すぎて参考にならないとか言われちゃうし」

「だからやりません」

「真白だと女装にならないじゃん?お前にしかできないコラボ動画になるぞ。そこそこ再生数稼げると思うんだけどな〜」

「……考えさせて下さい」


これ、やる流れだよなぁ。いや、やりたくはない。やりたくはないんだけど、確かにカナタさんの再生数は俺らの動画の数倍はあるし……真白にはできないし……俺だけ……うわあああああ。


「んで何?ファンの数逆転したら真白に告白すんの?」

「しません!親友だって言ってるじゃないですか!」

「なーんだ。つまんねーの。人気出てきたとこで交際発覚して炎上とか、社長超喜びそうじゃん」


あの社長ならたしかに喜びそうだ。しかしそんなつもり、俺には一ミリもない。


「ないですから!」

「はいはい。じゃあ真白んと俺が付き合ってもいい?」

「は……」


なんだそれ。

思考が止まる。

それから巡る。

二人が並んで、笑い合っている姿が思い浮かぶ。

カナタさんが?真白と?なんで?

違う、その場所は。

いや、そこに「好き」はない、よな?

じゃあなんでこんな事言うんだ?


「冗談でも、真白に悪いですよ。あいつそもそも、男が好きなのかどうかも、はっきりしないし」


冗談、と。そう理解できたから、静かに声が出た。そんなの、外野が勝手に決めるもんじゃない。あいつの気持ちも知らないで、俺が答えられるわけがない。


「ふーん?確かめてないの?」

「確かめてどうするんですか。あいつに好きな人ができればわかることだし、わざわざ聞くことじゃないですよ」


いや、聞いても良かった。ガチ恋うんぬんで、真白本人が気にしてないって言った時。そうすれば、俺のもやもやも少しは減ったのかもしれない。

でも、聞きたくなかった。聞いちゃいけない気がした。それは多分、真白から言ってくるまで聞いちゃいけないもんだ。

……それとも、知っておくべきなんだろうか。親友として、相方として。


「そーゆーとこは気ぃ使うんだな。まぁいーや、んじゃ、後で空いてる日メールしといて」

「わかりました。ありがとうございました。失礼します」


……ん?あれ?

メイク動画、いつの間にか確定になってる?

週間スケジュール

日曜日 配信、動画撮影ロング

月曜日 オフ

火曜日 ダンスレッスン

水曜日 配信 

木曜日 オフ

金曜日 配信

土曜日 事務所打ち合わせ、ボイトレ


ほか、随時ショート動画やSNSで活動。

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