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66.メンタル強い相方

すみません、先週は子どもが怪我したりなんだりで忙しく、更新お休みしました。

また今週から毎週更新できるよう頑張ります。

「真白」

「お?颯真、どした?」


放課後、先生に怒られない程度に急いで真白の教室に行くと、真白はクラスの女子数名と楽しげに話をしていた。うん、楽しげ、だった。大丈夫。嫌味とかは言われてなさそうだ。


「いや、どうしたって……その、色々言われて嫌な思いしてるんじゃないかと」

「色々?」


我ながらわけのわからん言い方になってしまった。真白が首を傾げるのもわかる。でもちょっと、詳しく言うのも憚られる……。


「あー、いや、なんか、聞いた話で……俺に振られたとか、そんな話が出回ってる、とか」


とりあえず、言いたいことは伝わったらしい。ああ!と声を上げた真白と、周囲の女子数名が笑う。


「あったあった。言ってた人いたわ」

「そう!どっからそうなったのかわかんなかったけど、何故か上から目線で慰め?嫌味?言ってきた人いたねえ!」

「ねー、面白すぎるよね。こうして心配して駆けつけてくれるくらい大事にされてるのに」


ちょっとわざとらしいくらい大きな声でそう言われてしまうと、俺も恥ずかしい。恥ずかしいけど、聞かせるためにやってるんだろうから、止められない。うん、このメンバーはどうやら、真白を守ってくれるらしい。思えばよく見る顔だ。

……ちょっと前まで、この光景見ても「やっぱ真白はモテるなぁ」なんて思ってたんだよな、俺。ふつーに女子の友達じゃん。


「まぁ、その……真白が気にしてないなら、いいんだけど。その……俺の態度というか、そういうのも原因なんだと思うと……申し訳ないなって……」

「あー、そう来るか。まぁまぁ、そのへんは、多少恨んではいるけども」


えっ。やっぱあの、俺の意地だけで待たせてんのはマズかった?それで嫌な思いしてるわけだしな?確かに?ここはしっかり公衆の面前で謝っておくべき?などと焦る俺の前で、真白は余裕の笑みを浮かべている。


「その分は、そのうち返してもらうつもりだから」


真白が言うそのうちってのは、つまり。付き合えたら、そのときは、ってことなんだろう。……えっ、俺何を返せばいいの?


「せっかく相方来てくれたんだから一緒に帰ったら?」

「えー、久しぶりに皆で遊び行こうって言ってたのに、俺だけ仲間はずれ?」

「そーいう可愛いことは相方とファンに言ってあげなさい」

「相方にはいらんやろ」

「なんでよ」


テンポの良いやりとりに、口を挟む隙がない。

ないけどまぁ、楽しそうだからいいか。


「えっと……俺はいつでも、真白とは一緒に動けるし、今日はそっちで、どうぞ」


なんとかそう言うと、真白が女子の輪から抜けて俺に歩み寄ってきた。


「サンキュ。んじゃお言葉に甘えて。あと……」


ちらりと、周囲を気にする素振りを見せてから、俺にだけ聞こえる声で続ける。


「……心配してくれて、ありがと」


ボソリと言うと、さっと踵を返してしまった。


「んじゃ、相方の許可も頂いたので!予定通り遊びに行こう!」

「はいはい。ツンデレちゃんだねぇ」

「ツンデレではない」

「ツンデレではないかもだけどー、クーデレ?」


……うん。まぁ、デレかどうかはよくわかんないけど……可愛いとこ、だったかな。

緩む口元を抑えて、俺は一人で家路についた。




「それじゃ今日は、よろしくお願いします」

「はい、こちらこそお願いします。でもほんとに、事前に颯真に練習させなくてよかったの?」

「いいんです!失敗したほうが面白いくらいなんで!」


真白とお袋の会話を、遠い目で聞く俺。いやだめだ、もうカメラは回っている。

とうとうきてしまった、料理動画フューチャリングおふくろ。一応おふくろの顔は写さないことにしているが、本人はあまり気にしてなかったりする。


「というわけで、本日は特別講師をお呼びしています!颯真のお母さんです!」

「よろしくお願いします〜。いつも颯真がお世話になってます」

「そういうのいいから」


アイドル活動に親が関わってくるとか思ってもみなかった。ていうか関わらせるつもりなかったのに。なんかすげー居心地悪い。


「今日は俺も生徒ということで、色々教えていただく予定です。それでは、本日挑戦する料理は〜?」

「はい!コロッケでーす」

「えっ揚げ物!?マジで!?」


めっちゃハードル高くない!?


「真白、揚げ物の経験は……?」

「唐揚げとフライドポテトくらいなら……」


あるんだ。すげーな。いや今回に限っては心強いけど。

そうそう、今回は俺と真白でチャレンジして、その後お袋がお手本を作る予定だ。とりあえず、やってみる……しかない!大丈夫!多分!真白と一緒だし!


「まずは先にじゃがいも茹でるとこからだな」

「あと何入ってる?肉?」

「ひき肉……と、玉ねぎ?入ってない?」

「わかんねー……」

「ちょっと待て、今記憶になんか、コロッケの歌が……」

「コロッケの歌?なにそれ?」


真白の記憶を頼りに、玉葱のみじん切りと挽き肉を炒めて下味をつける、という工程をこなす。これかなり正解に近いんじゃないか?

それから茹で上がったじゃがいもの皮を剥き、熱いと大騒ぎし、潰してひき肉と混ぜて……。


「問題はここからだな」

「うん」


衣をつけて、揚げる。

衣は小麦粉と卵とパン粉、この順番に違いないと真白が言うので大人しく従う。問題はどうやって?どのくらい?あと油に入れるの大丈夫か?ってあたりなんだけど。


「とりあえず菜箸で……あっ無理。無理無理!形崩れる!」

「ま、まてまてそっちに置くな、こっち、もっかい丸める!」


菜箸は無理っぽいので、手でやることにした。

小麦粉はまぁ、バットに入れた小麦粉の上に置いて、上にもちょいっと小麦粉かけたら大丈夫そうだったんだけど。


「卵……とりあえずいくぞ」

「お、おう……」


といた卵にドボンと入れて、すくい上げて、そのままパン粉のバットに移動する。ここでも上からパン粉をかけて、少し押し付ける。うん、なんか出来てる気がする。やったの真白だけど。


「はい、次颯真の番」

「はい……」


なんか緊張して敬語になってしまった。

真白が2つやったあとは俺の番だ。おそるおそる、柔らかいタネを掴んで小麦粉から……。

……。

…………。

………………。

あっれぇ!?パン粉に行き着く前に崩れちゃったんだけど!?


「力入りすぎたな。もうそれはそれで分けて揚げるしかないな。はい次」

「うぉお……せめて次は、丸いまま……!」


2つ目はなんとか形を保ったまま衣をつけられた。安心した俺の横では、真白がむしろより緊張した顔をしていた。


「……問題は、ここだ」


確かに。めちゃ熱い油に、形を崩さずこれを入れるってなかなか……箸無理だったし、トングとか?と思っていたら、真白が手づかみでタネを持ち上げた。


「えっ嘘お前それあぶな……」

「死なば諸共!」


いやなんでそんな物騒な台詞キメてんの!

止める間もなくおふくろにお伺いを立てる間もなく、真白は油へのダイブを成功させた。


「よし!」

「よしじゃねーよ!危ねーだろ!」

「つべこべ言うな!揚げ時間にむらができちゃうだろ!」


言うなり真白は2つ目をダイブさせ、俺に場所を譲った。えっ俺、俺の番!?いや俺の番なのはわかってるけど!


「そこまで言うなら颯真はトングでもなんでも使えよ」

「えっ……ええ〜」


それはなんか、俺が日和った感じがしてやなんだけど。いやでも火傷をおそれず手を突っ込む……突っ込んではいないけど、素手で行く度胸はねーぞ。


「……じゃあ、トングで」


早くしろと急かす真白を尻目に、おそるおそるトングでタネを掴んで油に入れる。ちょっと油がはねてビビったが肌には跳ねてないのでセーフだ。

ぼろぼろに崩れて成形し直した、分裂コロッケも投入する。


「うん、崩れる心配するくらいなら、最初から一口サイズで作ったほうがいいかもしれない」

「特大に弱い男がなんか言ってるな」

「うるさい。作り手の気持ちを学んだんだよ!」


いや、おふくろ、そこでそこまで感激しなくていいからな?

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