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65.周りがどう見てるかなんて

『明けましておめでとうございます!Alice blueです!』

「みんないい正月過ごせたかな〜?しっかり美味しいもの食べて正月満喫した真白です!」

「同じくたらふく食べて体組成計から目を背けていた颯真です!」

「だめじゃん?今乗る?乗ってみる?」

「いやいいから!ちゃんと昨夜測ったから!」


そんな感じで始まった、新年一発目の配信。お正月ネタでトークをして、最後に俺のソロ活動について発表だ。


「えーっと、今年から、俺のソロ活動……っても、配信とかショート動画の投稿になると思うんだけど、それが解禁になりました!」

「俺はキャパ的にこれ以上無理なんだけど、颯真はやる気出してきたみたいなんで応援よろしくお願いします!」


ファンの反応は上々。単純に俺の露出が増えることを喜んでくれてるみたいだ。良かった良かった。あとは期待に応えられるように頑張らなきゃな。




颯真くんのソロってどう思う?活動休止の間にそのままソロで活動してくれる可能性出てきた?


真白くんは復帰予定無いとかなのかな。だとしたら悲しい。


単純に真白くんと颯真くんのキャパが違うって話じゃないの?


急に颯真くんがやる気になってくれたのはイベントのおかげかな?時間差あるけど、事務所の方針変えるのに時間かかったとか?


颯真くんソロかぁ。楽しみだけど不安も大きいw


颯真くんが売れたら嬉しいけど寂しい。厄介な古参オタになりそう


颯真くんは売れても変わらない気がするけどね


解散を見据えてではないことを祈る……!


ま、真白くん!受験終わったら帰ってきてね!?


いよいよ別れる気になったのね。良かった


颯真くんソロなら全力で推せる


事務所が納得したってことはそういうこと?ソロで売ってく気になった?




「ってあたりかな。しかしほんと、急にどうした?」


情報通のクラスメイトからファンの反応を聞いて、考え込んでいた俺は顔を上げた。


「どうしたって?」

「なんで急にソロなんだ、って話」

「……まぁ、色々あるんだけど、真白を超えたいってのと、真白が忙しくなるってのが重なった結果だな」

「ふーん……」


冬休みも終わり、教室で昼飯を食いながらの雑談だが、俺の頭の中はアイドル活動のことでいっぱいだ。真白のアンチがなんか言ってるのは無視するとして、でもそうか、解散するかもとか、そっちの心配する人もいるんだな。真白も続けたいとは言ってたけど実際どうなるかは……まず付き合うことになったらどうするのかの部分が固まってないし、ファンに伝えられることには限りがあるな……うーん……。


「クリスマスになんかあったのかと期待したんだけど」

「んっ」


急にそこに触れるな!ありましたが!そこは!まだ言えない!


「なんかさー、真白の女装は人には見せたくないみたいな?そういう雰囲気出してたって聞いたけど?」

「別に、そんなことは……」


言ったな。アイドル活動に絡めて断ったけど、バレてたか!くそっ、自分の知らないとこでバレてんの恥ずかしすぎるぞ!


「いやー、まぁ、もしお前らが付き合うとなったらアイドルやってられないだろうし、俺としては何もなくていいんだけど」

「なら言うなよ…………まぁ、そうなるか」


そうだよな。付き合っててアイドルって、無理あるよなぁ……。うーん。せっかく俺も真白も、アイドル活動続けたいって思ったとこなのにな。

またうんうんと悩み始めた俺の前でパンをかじりながら、クラスメイトはスマホを弄ってまた何やら調べだした。


「はぁあ~……そうか……そうなるよなぁ……」


俺はひとり頭を抱える。飯はもう食い終わった。

うーん……いや、まぁ、悩んだところでやることは変わらないんだけど、ファンをやきもきさせるのはなぁ……なんかいい方法ないかな……。真白が活動続けます、って言ってくれればいいのかも知んないけど、順調に俺達が付き合うことになったらそこはやっぱ難しいだろうし……。


「でもそうか、クリスマスデートは不発だったか」

「そこひっぱるなよ」

「いやだってさ、あちこちで噂されてたぜ?」

「あちこちって……」


デートの話は当然アイドル活動とは切り離してたし、そんなにあちこちで話題になるはずは……あ、いや。真白がこの教室で昼飯食いながら話題に出したから、このクラスでは知ってる奴も多いかもしれない。


「これで冬休み明け2人が付き合ってたらどうするとか、付き合うかどうかで賭けたりとか、そんな話が聞こえてきたぞ」

「賭けって……人のプライベート何だと思ってんだよ」

「有名税的なもんじゃね?下品だな〜とは思うけど、興味惹かれるのはわかる」


……まぁ、異色なのは認めるけど。面白がられるのはなんつーか、気分悪いな。


「真白もあれこれ言われて大変だろうな」

「えっ」

「え?」


思わず声が出て、聞き返された。


「……あの、颯真、まさか、わかってない?」

「えっ、何が?ていうか何で?」


混乱。いや、なんか、俺がこうしてクラスメイトにいじられるのはわかるんだよ。同じように真白がいじられるってのも、まぁ、わかるんだけど。あれこれ言われて大変って、真白がそんな、困るようなことになるのか?

クラスメイトはがしがしと頭を掻き、ぎゅっと目をつぶって、開けてから、重々しく口を開いた。


「真白は、嫉妬される立場にあるって認識は、あるか?」

「え?あー、うん、まぁ」

「だめだピンときてねぇコイツ!」


そ、そんな、頭抱えて絶望したみたいに言わなくても。認識はあるって言ってんじゃん。


「お前と四六時中一緒にいて、他の女子の付け入る隙を与えない真白は煙たがられてんの!お前のこと気になってる女子から!そこそこの人数から!なんならお前のことなんとも思ってない女子からも!空気読めないって思われてんの!」

「えっ」


……それ、は……認識、してなかった。


「そういう連中も、真白が男として横にいるから口に出さなかったんだよ。でも女の格好してデートしたとなったら話が違うじゃん?いよいよ本気で恋人になろうとしてるって思われて……結果今までと変わらなかったらさ」


処理が追いつかない。

え?真白はそんな、悪意に晒されながら俺の横にいたのか?アイドル活動と関係なく?

それなのにわざわざ、デートするなんて、人に聞かれるところで話したりしたのか?


「ざまぁ、とか、女としては見れないよなとか、そういう反応して陰口叩くやつもいるって……颯真?」


それで、自分じゃ無理とか、そんな気持ちを押し込んで、勇気を出して、一生懸命、俺の為に色々整えてくれて、そんな真白のことを、嘲笑う奴がいる、なんて。


「……真白んとこ行ってくる」

「まてまて、もう授業始まるぞ。真白だって授業だろ」


浮かせかけた腰を落とす。

……ため息を付いて、今度は俺が頭を抱える。クラスメイトはそんな俺にどう声をかけたものか、少し考えてから口を開いた。


「……真白はさ、カッコつけんの得意じゃん」

「……うん」

「だからさ、そういうの、颯真が気付かないように、やってきたんだと思う」

「……うん」

「それにその……お前が現状維持を選んだのに、今さらそんなことで心配されてもって……思う、かも」

「…………」


違う。現状維持じゃない。俺は進みたい。真白もそう思ってくれてる。なのに俺の意地で、待たせてるだけで。待たせてるせいで、真白が悪く言われるなんて、思いもつかなかった。


「俺は、真白を傷つけたくない」

「お、おう。でもその……フった、ことになるんじゃ……」

「…………」


違うけど、それこそ、ここで声に出すわけにはいかない。慎重になれ。考えろ。

俺のせいで真白が傷ついてるのは、間違いないんだから。


午後の授業は身が入らず、終業と同時に真白のところへ駆け出した。

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