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57.大事な彼女

「それはね!男が悪いよ!」


ファンからの恋愛相談に応える真白の語気が強い。

いやー、どうかな、俺としてはどっちもどっち、って案件だと思うんだけど。


「――ちゃんのファッションに口出すにしても、言い方!言い方悪過ぎる!」

「まぁ、そーだな」


相談内容は、ギャル系ファッションが好きな女の子に、彼氏がその服はやめろと口出ししてきて喧嘩になった、というもの。

露出多めだから言われちゃったのはわかるけど、言い方がひどいと。確かにな「頭おかしい」は言い過ぎだな。

……でもまぁ、露出の程度にもよる気もするしなぁ。そもそも、大事な恋人だからこその発言なんだろうし。


「なんかもっとさー、思いやりとかほしいよね。言葉に。気持ちはわかるんだけど!」

「そーだなぁ」


正直俺としてはー……どっちもどっちだから、なんかちょっと、発言しにくいというか。真白にお任せしておきたい。

そんな投げやりな気配を感じだったのか、真白がジト目を向けてきた。


「……颯真がそうだなbotになってるんで、ちょっと頭使ってもらいます」

「え!?」


無茶振りの予感に沸くコメント欄。いやいやいや、ここで頭使えとか言われても。


「はい、ちゃんと頭働かせろよ?大事な彼女が露出高めなファッションで待ち合わせ場所に来ました。本人はその格好を気に入ってます」


いやあの、大事な彼女……の、映像が、今目の前にいるイケメンで、露出……?いかん、すでに混乱してきたぞ?


「そこでの第一声……じゃなくてもいいけど、服装についてどうコメントする?」


真白に似合う、本人が好きそうな露出度高い服?背中がざっくり開いてる服にショートパンツとか?いや待て、なんでナチュラルに真白で想像してるんだ?

こういうときは好きな女優さんとかグラビアアイドルを思い浮かべるのがいつもの俺だったはず……そっちに頭を切り替え……。


「……颯真ー?」


返事がなかったので、真白に目の前で手を振られてしまった。起きてるよ!めっちゃ頭使ってるよ!頭ん中の画像が差し替えできないんだよ!お前がこんな服着てきたらどう伝えたら良いか考えてるんだろうが!


「……そういうのは、俺の前だけで、頼む」


ほんとにさ、心臓に悪いから!いちおう顔が良いって自覚持て!?男のカッコしてると、男としては小柄だからそんなでもないけど、女子としては身長あるんだから目立つからな!?それで声かけられたり手ぇ出されたりして嫌な思いすんのは真白だからな!?俺も嫌だけど!


……あれ?


「……まぁ、ギリギリ合格点かなぁ」


やや考えてからの、真白の一言で、現実に戻る。


「あ、俺なら?最初に褒めとかないと駄目じゃん?褒められてからなら言う事聞く気にもなるじゃん」


真白はファンからのコメントに答えて、つらつらと話し続けている。

そして俺のセリフに対して、ファンから「言われたい」「実感こもってる」「誰に対して?ねぇ誰に対して?」という反応がきている。


……俺が顔を熱くしているのに、誰も気づいていないと思いたいんだけど!不自然ではなかったと思うんだ、流れ的に!でもあの言い方、真白相手じゃないとああいう言い方にはならない……いや、そんなの俺自身しかわからない……はず……なのに、誰に対して?って、それ、わかってて聞いてるよなぁ!?俺が真白を想像してたってわかっちゃってるよなぁあ!?


は、恥ずかし過ぎる。やばい。そういうのじゃないんですよ。ほんと。そういう、あの、真白を彼女にしたいとか、そこまでじゃなくて。なんか頭に浮かんじゃったからそっから起動修正できなかっただけで。


そんな言い訳、口にも出せるわけもなく。


「好きなもん着て何が悪いんだよ!……とは、思うけど、心配とか独占欲とか、それって相手が特別だから出てくるもんだと思うんだよね」


真白が話を締めくくろうとしている。

うん、特別だから、好きなかっこしていいよとは言えない……いや、だから、真白が好きなかっこするのは構わないんだけど、構わないっつっても限度というかなんか、こう、控えてほしい方向はあるというか……。


「だから、言い方悪かったのは怒っていいけど、大事にされてるな〜って、そこもう少し、喜んでもいいんじゃないかな。はい、俺からは以上!颯真は!?」

「え、あー……その、真白の言う通りだと思うし……俺だったら、やっぱ、あんま他の男を煽るようなカッコはしてほしくない……と思うから、少し、控えてもらえると、彼氏さんも安心できると思う」

「ということで。怒ってもいいけど、仲直りしてね〜」


……いや、真白の服装に口出し出来る立場じゃないんだけど。彼氏じゃないし。そもそも真白がそんな服着てくるとも思えないけど。でも、大事な友達……いや、友達だからって服装への口出しはダメか……ダメだな、うん。

なんてぐるぐる考えてるうちに、配信は終わった。

終わって、ため息を一つついて、真白に頭を小突かれた。


「ちょっと、ぼんやりし過ぎ」

「う、え、ごめん」


一応最後の挨拶とかはちゃんとやったんだけど、考え事してたのがバレバレだったらしい。申し訳ない。

いや、それも真白の無茶振りのせいだからな?

……だよな?


「……『大事な彼女』のこと、考えてた?」

「えっ……」


そんなのが俺にいないことは、真白もわかってる。それでもそう聞いてきたのは……真白も、わかってるってことだよな?俺が思い浮かべたのが、真白だって。

いやそれ、本人前にして言えねーよ!?


「あの……いや、そういう……」


かといって、全力で否定するのも違う気がする。その、一応、前向きに検討中、なわけで。

いやー、だからって言えないけどな!お前のこと考えてたとか、言えないよな!言えたらもう、口説き文句じゃん!少女漫画じゃん!


「……だったら嬉しいな、ってだけ」

「えっ……」


急にそんな、女子っぽいこと言われても。

やばい、心臓暴れ始めた。さっき以上に口が動かない。

真っ直ぐに俺を見上げていた真白が横を向いてしまって、今は表情が読めない。読めないけど、声は確かに。喜んでるように、聞こえた。


「さー、そろそろクリスマス配信の準備始めないとな!」

「え、ああ、うん」


そう。クリスマスが近づいている。

真白と、デートする日が。


……いや!配信!配信の準備しようって話だから!そっちだから!


いやでももし、もしもだよ?

真白がほんとに、このクソ寒いなか露出高めな格好してきたら?嬉しい気もするけどやっぱダメじゃん?それ、俺が止めていいの?彼氏(仮)ってことで、許される?いやそもそも、真白がそんなん着てくるのか?


「い、いちおう聞くけど……その、服装……は」

「え?サンタコス、去年の使うって言ってなかったっけ?」


配信の話だよな!そうだよな!デートのことなんて一言も言ってないもんな!

がくんと首が落ちた。脱力。


「いや、それで、いい」

「そう?……ああ、前日の話?流石にこのクソ寒い中露出する気はないから大丈夫」

「え、ああ、うん、良かった……」


良かった?良かったのか?

いやまぁうん、良かったことにしておこう。

……ちょっと俺、意識し過ぎな気がするぞ。真白は通常運転なのに。そこが悔しい。なんだよもうちょっと動揺してくれよ!いやドキドキしてほしいとかまでは言わないけど!俺ばっか挙動不審でカッコ悪いじゃん!


「……ファンの前で動揺させるつもりはなかったんたけどな」


真白がなんか呟いていたが、俺の耳には届かなかった。

予約投稿に間に合いませんでした。申し訳ありません。

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