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5.断じてエロくはない!

「さて、今回は雑談配信だしあんまし準備はいらないかな」

「え、あ、あぁうん、そだな」


思いっきり上の空だった俺は、真白に睨まれてしまった。

いやだって、うん、まぁ、俺が悪いんだけど。


「なんだよ寝不足か?スポーツニュース終わったら寝ろよな」

「え、いや、うん。そうだな」

「………………」


真白がさらに無言で睨んでくる。

くそっ、嘘が付けない自分が憎い!


「……なんだよ、またエゴサでもしたのか?似合わないことすんなよ」

「いやっ……まぁ、うん……悪い」


真白の目線がようやく逸れる。そして俺はほっと息をついた。

エゴサしてたのは事実だ。

でもそれは、俺のファンじゃなく、真白のファンのエゴサ……これエゴサって言うのか?

とにかく俺は、真白のファンの中にガチ恋がいるんじゃないかと、そう思って慣れないことに挑戦したわけだ。


結果、よくわからんかった。

いやだって、好き!ってだけじゃ普通のファンかもしれないし、愛してる!でもガチ恋とは限らない。

あとは同担拒否?とか、プライベートに踏みこんでるとか、そういうのがガチ恋なんだと思うんだけど……

正直、俺の検索能力では直近のコメントしか拾えず、ただただ睡眠不足になっただけだった。


いや、なんか余計な情報も入った。


こう、真白のファンだから、当然真白のことを褒めてるわけなんだけど、その中身が、俺の想像と違ったというか。

想像では「カッコイイ」八割、「可愛い」二割くらいかなと、思ってたんだけど。

いや、大体は合ってたんだけど、その他に、全然想定外の方向性っていうか、つまり。

「エロい」とか「色っぽい」ってワードが出てきたんだよな。


どこがだ!?


いや、そもそもそれって「男として」だよな?

「男なのに女っぽい」のが、そう言われるのは分からなくもないけど、いやでも、真白は特にファンの前では絶対女っぽいとことか見せないし、でもそういうコメントも一つ二つじゃなく目に入るわけで。

いやほんとに、どこがだ?って、それが全然わかんなくて、ついそういうコメントばっか読み込んでしまって。


いわく、鎖骨が、とか、うなじが、とか、手って言ってる人もいたな。

……どこが?

いやほんと、日常的に目にしてるからそういうの、全然わからん。胸とか腰とか、わかりやすく女らしいパーツと違って、男でも見えるとこだし、見せてるし。

やっぱこれは、男なのに華奢でとか、そういうことなんだろうと、俺は納得した。

納得はしたけど、なんか頭に引っかかってしまって、真白を直視出来ない。


あと「可愛い」コメントも、あるだろうとは思ってたけどミリも同感できなかった。

今の笑顔、とか言われても、ずっと一緒にいて笑った顔見てもそう思ったことないし、首傾げカワイイ、とか言われてもそんなんしてたっけ?てくらい記憶にないし、ほんとに同じ人間見てるのか?ってくらい、理解できなかった。


まだ「かっこいい」の方がわかるんだよなぁ。顔もだし、なんつーの、言動?

サラッと出てくる一言が男前だったりスマートだったりするんだよな。

なお俺はそーいうの、無理である。ちょっと顔と運動神経がいい方ってだけで、あとはフツーの中のフツーだと、自分では思ってる。ファンからも「ふつうの男子高校生っぽいとこがいい」と言われているので間違ってはいないはず。


ともあれ、色っぽいってどこが?可愛いって何が?という疑問を、視線で真白にぶつけないように気を使っているわけだ。

結果、めちゃくちゃ挙動不審なわけだ。

くっそ、ほんと余計なことするんじゃなかった!

別に真白にガチ恋勢がいようがいまいが関係ないじゃん!

無駄骨!


「はい、とゆーわけで、今日の質問はお題にそって送ってもらいまーす。テーマは夏!夏ね、もうすぐだね〜。颯真にとって夏といえば?」

「まぁ甲子園だよな。あとは海?」

「鉄板だな。俺はあれ、蚊取り線香が妙に嗅ぎたくなる。ばあちゃんちの思い出」

「わかる。あ、虫といえばカブト虫とクワガタ!いまあれ、いくらぐらいすんの?じいちゃんと採ったやつ友達に売ったりしたな」

「お、質問きてるな。『水着ショット解禁はありますか?』だって。俺はないけど颯真は?」


真白はまぁ、そうなるよな。学校では女子として一応、水着着て授業受けてるわけだし。クラス違うから見たことないけど。

……違う!今は脳内で真白の水着姿を生成する時間じゃない!


「あー、あるんじゃね?マネージャーさんに聞いてみるけど、男の水着って需要あんの?」

「あるみたいだぞ。水着は無理だけど……浴衣なら俺もできるかな?これこそ需要あんのか?」


だから!脳内!浴衣姿!うなじ!ちがう!男物!そうじゃなくて!


「……あ、ある、みたいだぞ」

「へー。なんかこういう、コスプレ?みたいのも希望があるならやってみたいな。予算に限りがあるからちゃんとしたのは難しいかもしれないけど……」


だから!脳内!コスプレと聞いて真っ先にナース、メイド、バニーが浮かぶ健全な男子高校生の脳内!今は鎮まれ!


「え、えーっと、次の質問。『女子の水着はどんなタイプが好み?』だって」

「あ、投げ銭ありがとー!コスプレの軍資金だな!ゲームの課金には……ちょっとだけ。いい?あ、水着の話ね。言われても颯真はわかんなそーなんで手元に画像を……」

「投げ銭ありがとう!課金はほどほどにな。そりゃ口で説明できる自信はないけど……あぁ、これ可愛いじゃん」


ここでやっと脳内の生成の限界が来た。というか、目の前の画像の処理にいっぱいいっぱいで、真白の水着姿までは手が回らないと言うか。


「えーっと、あれだな、大きいフリル一段で胸と下の履き口が飾ってあるやつな。白い……っていうか、これはモデルの子が好みってだけじゃないか?」

「はぁ?!ちげーし!」

「はい。この程度でここまで反応するのは図星です。茶髪ポニテでちょっと垂れ目、童顔の色白お姉さんです」

「いや冷静に暴露すんなよ!?俺のはもう答えたからホラ!真白の好みは!?」


クッソこいつ、弄りの角度がエグいんだよ!


「えー俺は……シンプルなのか……これ、サイドとか肩紐がクロスしてたりする、カッコよくてセクシーな奴。このデザインなら黒一択」

「えーっと、このモデルのおねーさんは……」

「前から言ってるけど俺の好みは大人っぽいおねーさん。色白よりは小麦肌、胸の大きさよりくびれと脚のライン重視」

「……だ、そうです。ちょっとは照れとかねーの?」

「個人を名指しとかじゃなければないな」


ちっくしょう……でもここまで具体的に出てくるってことはやっぱ女が好き、なのか?

いや、違うから照れないのかも……わかんねー。


この日の配信はこんな感じで、後半は変な妄想とかもしないで乗り切れた。真白のこともまぁ、いつもどおりには見れたと思う。

ただ、配信が終わってからまた脳内で水着姿の生成が始まってしまい、この日も俺はよく眠れなかった。

やっとコメディらしくなってまいりました。

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