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4.ガチ恋、いるだろ?

今後は不定期更新になりそうです。

読んでる人いるのかわからないけど、自分が楽しいので続きます。

真白の思わぬ返事に、俺は反射的に口を開いていた。


「いや、いるだろ」

「いないよ」

「なんで断言出来るんだよ」


エゴサして見かけなかったからか?

たしかにコイツのほうがネットとか詳しいし、それでみかけないならいないのかも……

っていやいや、俺よりファン多いんだからそんなわけないだろ。


「だって……女だし」


今さらすぎてそれが理由になることすら気付かなかった。


「いやいや、お前中学の頃からめちゃ女子に囲まれてたじゃん」

「そりゃ女子だからな」

「いやだって……ええ?なん…、なんだそれ?」


コイツが女子にもてるのはもはや当たり前のことで、だからガチ恋とか、リアコとかそういう女子も当然いるもんだと……いないの?


「こ、告白されたりとか」

「ない」

「一度も?」

「ない」


え、あれ?俺の勘違い?

聞いてたお袋が額をおさえて「頭痛い」ポーズをとっている。

そんな、おれだけの勘違い?いや弟もわかってな……小学生と張り合うことじゃないな。


頬杖をついてジト目でこちらを見ていた真白がため息をつく。

いやそんな、呆れた、みたいなわかりやすい態度取らんでも。多分悪いのは俺だけど。


「あのな、モテるのと恋愛関係になるのは別次元なの。特に女子にとって、その対象は明確にわかれてたりする」

「え、そうなん?」

「もちろん同じベクトルの人もいるけど、大抵は切り離して考えてる。キャアキャア言う対象はアイドル、恋人は別。いくら顔が良くて歌が上手くても、演技がうまくても、自分を愛してくれない相手と恋愛はできない、って考えるんだよ」

「それは、諦めとかそういうの?住んでる世界が違う、的な」

「それもあるだろうけど……まぁなんつーか、ときめき?恋愛までいかないけど、恋愛ごっこをしたり妄想して楽しむ相手と、本当に付き合う相手は別なの」


目から鱗だぞ!え、モテるやつって皆モテるわけだからめちゃくちゃ告白されたことあるんだと思ってた。

ん?でもそれだと矛盾しないか?


「じゃあガチ恋とかリアコとかは?」

「だから、少数派。母数が増えると出てくるけど、クラスや学校で人気者レベルではまずいない」

「……じゃあ母数が俺より多いお前にもいるはずだろ」


真白は少しだけ考えてから、答えた。


「男装女子は、恋愛対象にはならないんだよ」


それから小さく、男でも女でも、と付け足した。


なんだか、ショックだった。

それはなんだか、真白が、自分の価値を低く見てるようにも聞えたし、世の中がほんとにそんなふうに見てるなら、違う、って声に出したくなるような、そんな気分だった。


でも、そんな感覚でフォローしても、必死になるなと笑われそうで、俺はうまく言葉が出てこなくて。


「そう、なのか」


そんな、間抜けな返答しか出来なかった。


それから、何事もなかったように俺の部屋に移動して、週末の配信と、次の動画の相談と準備をした。

ダンスや歌の動画はかならず二人で撮ると決めている。これも社長の指示で、今思うと「ニコイチ」路線を強調するためなんだろう。

明日は週末だから、事務所に行って打ち合わせして手紙とかプレゼントを受け取って、ボイトレしてから帰宅(真白んちで野球観戦)、明後日は動画の撮影と配信だ。

ちなみにダンスはもともと通っていた教室で、ボイトレはデビューしてから自費というか給与天引きで通い出した。実力がないのは二人とも自覚してるし、金のためにアイドルやってるわけでもないので、こういう形になった。

うちの事務所の他のアイドルは、レッスン受けてなかったり、同じように自腹で受けてたり、一番売れてるグループあたりは事務所が出してるのかもしれない。よくわからん。


「んじゃ、また明日」

「ん。あ、おばさん、ご馳走様でした」

「はいはい。帰り気を付けてね」


真白を見送って、さっさと自室に戻ってダラダラしようとしたら、おふくろに呼び止められた。


「颯真、ちょっとここ座りなさい」


あれ、なんか説教の雰囲気なんだけど。なんで?

ちなみにうちのおふくろはめちゃくちゃ美人で滅多に怒らない。いつもにこにこ穏やかで、末っ子のPTAでは奇跡の40代と敬われているらしい。

そんな穏やかなおふくろなので、怒っていても声を荒げることはない。

微笑を浮かべたまま、穏やかに、しかし有無を言わさぬ圧を背負って俺と対峙している。


「これまで何度も言ってきたけど、あなた、ちゃんとミュー君が女の子だってわかってるわよね?」


ミュー君というのは、真白の本名、美結からついたあだ名だ。リトルリーグ時代、本人が「可愛過ぎる名前が嫌だ」と言うので、皆で考えた。ほら、幻の○ケモンみたいじゃん?


「わかってるって。んでも女扱いはミューが嫌がるから……」

「そうね。でもそうじゃないの」


久し振りにミューって呼んだ気がする。

すっかり真白が定着してたな。まだ一年経ってないのに。


「まったく男の子と同じ扱いじゃだめなのよ」

「それもわかってるって。流石に着替えとか風呂とかは別だし、泊まりも……寝ちゃってなんとなく、は、まぁ、あるけど、わざとやってるわけじゃないし」

「それはね、それもお母さんは控えるべきだと思うんだけど、そうじゃなくて。あなたさっき、ミュー君が女の子にモテるって話をしてたでしょ?」

「うん」


真白が女子にモテるのは事実で、告白はされてなくてもキャーキャーはされてるし、ファンも女の子ばっかだし、ここは疑いようもない。


「それで、ミュー君が告白されたことがないと」

「うん」


そこでひとつ、おふくろは溜息をついた。


「ミュー君は女の子が好きなの?」

「え?」


俺の頭の上に巨大なハテナマークが浮かんだ。


「いや……知らんけど」


あれ?聞いたことあったっけ?

女子にモテてることを自慢気に話したり、好みの女子の話とかはしたような、気がする。

でも男になりたいわけじゃないとは言ってたな。

あとは………………聞いたことないな。


「わからん……」

「そこ、はっきりしない相手にファンが本気で恋とか、それにどう対応するとか、気遣いがなさすぎると思うわ」


そうなのか?

だって真白はいつもどおりで、俺に呆れたような顔はしてたけど、傷付いたわけじゃないと、思うんだけど……


おふくろは「あなたには難しいかしらね」と云いながら、今後気をつけるよう付け足して俺を部屋に戻してくれた。




「ってことがあったんだけど、どー思う?あんなんで傷付くようなタマじゃないよな?」


思わず電話したのはリトルリーグからの友人。高校は分かれたけど、中学時代までの俺たちのことをよく知っている相手だ。


「まー今さらミューを女扱いはできないよな。本人それでいいって言ってんだろ?」

「そう!それなんだよ!本人が良いって言ってるんだからいいよなぁ!?」

「でもその、ガチ恋がいないとかなんとか?そこんとこは俺もよくわかんねーな」

「……いるかどうかが?」

「というより、ミュー本人がどう思ってるのかが」

「だよなぁ……」


結局、友人は今まで通りでいいだろ、と投げやりに結論づけて、それよりほんとにファンとは付き合う気ないのかとか、学校でにいい子はいないのかとか、そんな話になってしまった。


俺はいると思うんだよな。真白のリアコ。

だってあいつカッコいいもん。女子の求めるリアクションとか完璧だもん。

でもそれが、女だから、ない、になるのか。


カッコイイ女が好きな女の子もいると思うんだよな。

でもアイドルやってるときの真白は、いつもより完璧に男やってるから、そういう人の対象にはならないのかな。

女だから、男が好きな人の対象にはならない。男になりきってるから、女が好きな人の対象にはならない。

ってことなんだろうけど、なんか、釈然としない。


俺の親友に恋する人は、絶対いる。

あいつは誰にも見てもらえないようなやつじゃないから。

真白の呼び名→美結、ミュー、真白、真白ん

颯真の呼び名→颯真、颯ママ

颯ママのきっかけについてはそのうち

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