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3.素直がうりです!

なかなかコメディにならなくてすいません。

いや、ラブにもなってないな?

さて、もっと燃料投下しろとは言われたけど、ぶっちゃけ俺の投下は現状でマックスである。なんでって、俺、めちゃくちゃ頑張ってたから。SNS。


繰り返すが俺は素直が売りである。あと負けず嫌い。

リトルリーグの監督やコーチ、歴代の担任、中学時代の顧問、全員のお墨付きである。非常に教えやすいと褒められたし、騙されそうでちょっと心配だとも言われた。なんだよ、そこは手放しで褒めてくれよ。


そんな俺なので、マネージャーの黒沢さんに言われた通り、仲良しアピールに励んだのである。

ネットアイドルはSNSの露出がほぼ全て。認知度を上げるにはとにかくフォロワーと閲覧数を増やせ、と。


だから真白とプライベートで飯食ったときは必ず上げてたし、仕事で飯を食ったときも上げてた。結果食べたもの報告ばっかしてた。

いや、合間にレッスンとかライブの準備とかの投稿もしたし。とにかくちゃんと、ほぼ毎日投稿してた。


そんな俺だが、フォロワー数で真白に負けている。投稿数は半分以下なのに。悔しい。


いや、これには俺にもわかる理由がいくつかある。

まずは真白の方が文章や写真のセンスがある。とくに文章。センスのある一言とか、ちょっと深い中身とか、これはもう、俺には無理。

それともう一つ。真白はサブカルに強い。流行りのアニメとか、ネットスラングとか、そういうのを使いこなすから、そっちの人に認知してもらいやすい。

あとは、男装してるから。これに尽きる。男装アイドルはとにかく絶対数が少ない。だから目立つし、好きな人にはすぐ見つけてもらえる。俺みたいなフツーのやつはだめだ。


……いやもう、無理じゃね?


とはいえネットアイドルにとってはフォロワー数イコールファンの数なわけで、俺としては負けたくない。


リトルリーグ時代はエースの座を争っていたし、デカくなってからは流石に体力面で勝負することはなくなったけど、その分勉強では圧倒的に負けてきたし、男女別のマラソンの順位とか、単純なリズム感とか、そういう勝負ではずっと張り合ってきた。


つまるところ、真白はライバルで、絶対負けたくない相手なのだ。


「でも、どーする?ほんとになかよしアピール、増やすの?」


ミーティングの後、真白にそう言われて、俺は頭を抱えた。


「だよなー。なーんかやだよなー。騒いでくれってわざわざ煽るよーなの。つうか俺はこれ以上無理だし。真白はどーよ?」

「うーん……できなくはないけど……」


やりたいかどーかは別だよな。

単純に投稿が増えれば真白のファンは嬉しいだろうし、でもフォロワー増えそうで俺としてはそこも複雑なんだけど。


「いっそ正直に言ってみる?」

「何を?」


真白の表情はあんまり変わらない。いつでも何でも表情に出てしまう俺には羨ましいくらいだ。


「もっと仲良しアピールしろって事務所に指示されました、って」

「いや駄目だろそれ。駄目……だよな?いいのか?」


そして無表情でけっこうぶっ飛んだこと言い出したりする。

こういうのって表に出すもんじゃないよな?なんか事務所も悪く言われそうだし、わざとやってるとか、印象悪くないか?


「いいんじゃない?逆に、俺が急に頑張り始めたら変に思われそうだし。文章とかで残すんじゃなく、配信でさらっと言うだけなら」

「うーん。そーゆーもんか?まぁ、真白が良いって言うなら良いけど」


俺はもう、考えるのをやめていた。何が正解なのかわからん。

ここは親友の考えに乗っかろう。


「んじゃ、明日の定期配信はそれについて話すか。あ、あと質問来てたからそれの返事な。新曲の告知の時間は外せないから、時間配分は……」


こういう細かいとこは、真白にお任せしてる。面倒臭いというよりも、真白の判断が速くて正確なので、口を出す必要がないのだ。

めっちゃ頼りになる相方である。


「服はどうする?暑くなってきたし、Tシャツってだけじゃパッとしないよな」


そこまで考えてなかった。配信は私服だから、貰ったお給料で少しは買い揃えたけど、そんなに数があるわけじゃない。そもそも夏物はまだ買ってない。


「えー。俺去年の私服と変わりないぜ。真白何着るの?」

「うーん。黒沢さんがそろそろTシャツ作ってくれるって言ってたけど、まだないもんな。なんかネタ系でお揃いとかにする?」


そういえば、ネタとして買ったTシャツならあったな。あの、外国人が日本観光に来て着る感じのやつ。

そのうち配信で着ようって、お揃いで買って、たしか配信で使うからって真白に預けたままだった気がする。


「隣の部屋にあると思うから取ってくる」

「おう。頼む」


さて、配信用の空き部屋に一人残されたわけだが……俺は手元のスマホを弄った。

普段は気にならないのだが、今回は流石にファンの気持ちというか考えというか、そーゆーのが気になって仕方ない。

例の書き込みをもう一度眺めて、進展がないか確認する。

昨日は俺も真白も投稿してないし、特に気になる書き込みはなかった。良かった。


「颯真がエゴサとは珍しい」

「うわっ」


音もなく帰ってきた真白に、わりと近めの距離で言われて思わず声を上げてしまった。


「声かけろよ」

「今かけた。ていうかドアの開閉音で気付かない?」

「気付かなかったんだからしょーがないだろ」

「それもそうか。んでこれな、どっちにする?」


真白が持ってきたのは四枚のTシャツ。二種類を二枚ずつだ。


「んー……黒い方」

「おっけ。んじゃここ置いとくわ」

「せっかくだから『配信準備中』って投稿しようぜ」

「なるほど、こーゆーの投稿すればいいんだな」

「そうそう。真白はもっときちっとしたのばっか投稿するもんな」

「だってファンの人が見るんだから、期待されてるようなものじゃないと……」


そんな話をしながら、機材とTシャツの一部、自分たちの写った写真を投稿する。

とりあえず今日は解散、明日の放課後はまた真白の家で夕飯食ってから配信だ。




173:名無しさん@お腹いっぱい

あの事務所ヤバない?


174:名無しさん@お腹いっぱい

ヤバいとは思ってたけど、わりと二人が受け入れてるからオッケーです。


175:名無しさん@お腹いっぱい

まんまと踊らされてたってこと?


176:名無しさん@お腹いっぱい

うーん。まだ騙されてる感がなくもないけど


177:名無しさん@お腹いっぱい

仲良し供給源増えるとかご褒美じゃん

生きる糧をありがとう


178:名無しさん@お腹いっぱい

えっえっしかも真白んが投稿してくれるの?

颯真君みたいなゆるっとしたプライベートとかも見せてくれる?


179:名無しさん@お腹いっぱい

食べたもの報告になりませんように


180:名無しさん@お腹いっぱい

踊らされてやるよ!

それはそれとしてあの顔面にあのネタTシャツぶっこんでくる二人が好き!


181:名無しさん@お腹いっぱい

多分同じサイズなんだろうけどその分体格の差が出てて最高だった……

細い……エロい……


182:名無しさん@お腹いっぱい

颯真君の衣装を真白君が着たら……ごくり……


183:名無しさん@お腹いっぱい

ここの人たちって腐女子なの?


184:名無しさん@お腹いっぱい

そういう人もいる


185:名無しさん@お腹いっぱい

私はBLは駄目だけどこの二人は好き


186:名無しさん@お腹いっぱい

ガチ恋ですが何か?

颯真くんの嫁になるのは私だから


187:名無しさん@お腹いっぱい

真白たんぺろぺろ


188:名無しさん@お腹いっぱい

ガチ恋とかやば




思ったほど事務所が叩かれなくて良かった。いや、ちょっとは叩かれてほしかった気もするけど、とりあえず受け入れられて良かった。

これからはまた、エゴサとかしない生活に戻ろうと思う。

やることは今までと変わらないんだし。

それにしても、改めてファンの書き込みを見て思うことがあった。


「ガチ恋ってどうすりゃいいんだろうな」


配信の翌日、今度は真白がうちに来て夕飯を食べた後。もはや兄弟の一員的な扱いの真白は、そのままリビングで寛いでいた。リビングにはおふくろと、真白に懐いてる末っ子もいる。


「どうって。他と違う扱いするなって黒澤さんに言われてるじゃん」

「そーなんだけど。なんかこう、普通のファンとは違う勢いっていうか熱心さっていうか、そういうの見せられるとなんか応えなきゃなって……」

「アホ」


一言で片付けられた。


「そんなんトラブルの元だろ!それともファンの中に好みの子がいたら付き合いたいとか思ってる?」


思ってたより強めの声で責められて、返事に困る。真白の後ろでは末っ子が「あほー」と笑っている。


「んなこと……けど、じゃあ真白は平気なのかよ」


自分に特別良くしてくれる人を、無視とは言わないけど、ないがしろにするようなこと。

真白はドライなとこがあるから、平気なのかもしれない。

わかってもらえないならそれはそれでしょうがないと思って聞いたんだけど、真白の返事は意外なものだった。


「俺にはガチ恋なんていないよ」

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