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26.夏休みの終わり

真白のあれこれが落ち着いて、8月も後半に入った頃、事務所のイベントが開催された。


内容的には、事務所に所属してるアイドル5組が、それぞれの持ち歌を交換して歌ったり踊ったり、コントみたいなことやったり、トークライブしたり、って感じで、けっこう盛りだくさんな内容だった。

んで、事前に収録したのはまだいいんだけど、生配信については機材トラブルやら出演順の勘違いやらで混乱して。それを黒沢さんともう一人のマネージャーさんがなんとか取りまとめて。

でかいスタジオ借りて、トーク用のセットとパフォーマンス用のセットと控室があるもんだから、事務所の人とアルバイトだけでは手が足りず、小物や衣装の管理なんか、俺達も駆けずり回って手伝ったりした。

これはこれで、文化祭みたいで楽しかったな。


打ち上げも楽しかったけど、そこは未成年。早々に帰らされたので、アルコールが入った大人たちの盛り上がりまでは味わえなかった。

未成年は俺達Alice blueと、他に三人。未成年だけでカラオケでも行こうかと誘われたけど、男が俺一人というアウェー感にビビってお断りしてしまった。日和りやがってと真白に突っ込まれたが言い返せなかった。

いやだってさ、相手が大人しくて人畜無害な女子ならともかく、負けん気と承認欲求と女子力の塊みたいな、真白のこと本人の前で「かわいい」って言えちゃうメンタルの持主だぜ?無理無理。そのうえうっかりご一緒したことが露見したら、相手のファンからめちゃくちゃ叩かれるの確定じゃん?アンチと向かい合う度胸は、俺にはない。日和って悪いか。


とにかく、これで夏休みの山場は越えた。後は秋の自分たちのイベントだ、と思っていたら。


「颯真、課題終わってんの?」


真白の冷静なツッコミで、現実を思い出してしまった。

そうだよあと一週間くらいで学校始まっちゃうじゃん!課題もある程度はやったけど、ぶっちゃけ自力で終わらせるにはけっこうな量が残っている。

硬直した俺を見て、真白はため息を付いた。


「……終わってないな。明日の配信前にやるか。うちに課題もってこい」

「頼む……ありがたい……」


ちなみに真白の家族はすでに転勤先の官舎に戻っている。今頃悠介も俺と同じく宿題に追われている、はずだ。

あれ、うちの弟たちはどうなんだろ。すぐ下の三男はしっかりしてるから大丈夫だと思うけど、末っ子は脳天気なとこがあるからな……その辺はお袋がなんとかするか。なんたって小学生だし。

兄貴は数日うちに帰って来てたけど、バイトがあるとかですぐ戻っていった。彼女が出来たらしいので、次帰ってきたら詳しく聞くつもりだ。


……ん、つまり夏休みの終りに彼女もいないし宿題も終わっていない俺が、兄弟で一番残念な子ってこと?


相方が頭良くて良かった。真白は甘くはないが、聞けば教えてはくれるだろう。お世話になる気満々で、俺はいつもより多目に飲み物とお菓子を持っていくことを決意した。



「いやこれはひどい」

「そこをなんとか」


真白の部屋で土下座している、俺。プライド?ないない。学力面では諦めてるから。体力とか筋力ではそこらのやつに負けたくないけど。

なお課題の量そのものは、あれだ。進学科の真白よりだいぶ少ない。内容も薄い。だが俺の手には余る。そんな感じ。


「はー……これ何日かかるんだ?今日の配信直前まで頑張ったとして……どっから手を付ける?」

「えー……と……英語か数学から……」


ぺらぺらと参考書をめくった真白が、険しい眉間のシワを揉みほぐす。

何とかはなると思うんだけど、なんでそんな考え込んでるんだ?と不思議に思っていたら、決意を目に宿して顔を上げた真白が、なんか言い出した。


「……よし、配信のネタにしよう」

「は?」

「俺の課したノルマを達成するまで声のみの出演にしよう

「え?いやいやいや、なんでそうなる」

「面白そうだから」


いやちょっとまだ理解が追いつかないんですけど?


「手始めに数学から。ここまで終わったら配信で顔出しOK」

「終わらなかったら?」

「配信の間も問題解いてろ」

「ひどくない?」

「俺がひどいほうがファンは喜ぶ」

「そうだけど!俺にメリットないんだけど!?」

「一人でやる?」

「すいませんでしたよろしくお願いします」



けっこうな厚さの参考書を前に、俺に反論は許されなかった。くそっ、ちょっと前に健気とか思ったのはナシだ!こいつはドS!傲岸不遜!数字のためなら相方を苦しめる冷血漢!


「……配信終わるまでに終わらせられたら、なんかご褒美やるよ」


ご褒美。

ご褒美とな。


「フリーズすんな。まぁ配信始まるまでに考えとけ。んじゃ始めるぞ〜」


いやだって。これがエロいお姉さんならそりゃエッチなご褒美とか期待しちゃうとこだけど、真白だし。

親にご褒美もらうわけじゃないから小遣いってわけにもいかないし。

……えー、真白からもらう?してもらう?何だ?


なんて考えてたら手が進まず、真白先生に怒られた。すいません。ていうか配信の顔出しかかってるんだからもうちょっと必死になれ俺!



必死になった結果。

終わりませんでした。


「こんにちは〜。Alice blueの真白です。みんな、昨日のイベントは見てくれたかな?」


見たよーとか、楽しかった!とか、かっこよかった!なんてコメントが飛び交う中、颯真くんは?と訪ねる声多数。


「えー、皆さんお気づきかと思いますが、本日颯真の姿がありません」


ありませんじゃねぇんだよ。

体調不良とかの心配してくれてるぞ!みんな優しくて泣きそうだぞ!


「学校の課題が終わっていない颯真が俺に泣きついてきたんですが、本日分のノルマが終わらなかったため、罰として顔出しなしでの出演となりまーす」

「颯真です。ふざけんなよ真白ぉ!ファンが悲しむだろーが!」

「悲しませてんのはお前だし、このままいくと親も悲しませるぞ」

「そっ……いや、俺じゃなくてお前だろ!」

「課題手伝わなくていいの?」

「良くないです!すいませんでした!」


一連の流れの中で、俺のファンは悲しんでくれた……人もいたけど、面白がってる人もかなりいた。この、真白に振り回される様が面白いらしい……。ねぇそれほんとにファンなの?


「一応ね、配信終わるまでにノルマクリアできたらご褒美も考えてるんですけど。颯真、なんかご褒美決まった?」


ほらほら、コメント。キスとかないから。真白だから、ご褒美にならないから、それ。

結局、してほしいことは思いつかなかったので、違う方向で攻めることにした。


「過去一で可愛い真白の写真公開。赤ちゃんのときは不可。小学生は可」

「……それ俺への嫌がらせだな?」


うん、まぁ、そうだな。他にオレのモチベを上げるものが思い付かなかったんだよな。真白に恥ずかしい思いをさせてやろうという、それだけの思い付きだ。ここは真白の家だから、写真もいくらでもあるだろうし。小学生の頃とか、髪長かったから今とはだいぶイメージ違うだろうし。

ほらほら、コメントが沸き立ってるぞ。みんな見たいとよ!こうなったらダメとは言えないよな?


「はぁ……まぁ、配信やりながらじゃ終わらなさそうだし、いいけど。それじゃ今日のお題……」


よーし終わらせてやるぞ!真白を辱めてやるぞ!あ、エロい意味ではないです全然。ほんとに。

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