23.めんどくさい相方の取り扱い
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ただ、ちょっと忙しくなってきたので更新頻度が下がります。ご容赦下さい。
「……弱音を吐いたくらいで女の子扱いに直結するとは思えないんだけど、こう……真白くんは、あなたといるときは特別に男らしくしようとしている気がしたの。私や真白くんのお母さんの前ではそうでもないのに。何でかなと思って、考えてみたら、親友として側にいるにはそうするしかなかったんじゃないかと……颯真?」
「……めんどくせぇ」
「颯真?」
ほんっとめんどくせぇなアイツ!なんだそれ、俺に弱み見せたら女扱いされるから?強がってたとか?余裕かましてたのもそのためか?やたら張り合ってきたの……は、元からな気がするけど、とにかく!
「要は俺が、女扱いしなきゃいいんだな?俺が真白を助けるのは友達だからで、女とか男とか関係ないってことをわからせてやればいいんだな?!」
「いや、えっと、うん、そう、ね?」
「わかった。納得させる。全力でお節介してやる」
「ええと、颯真……その、真白くんも、今回のことで傷付いてるんだろうから、あんまりこう、喧嘩腰にならないように、ね?」
言われて、はたと気が付いた。向こうが攻撃的だったのと、めんどくささでイラっとしたのが合わさってヒートアップしていたが、一応真白は被害者だ。
「……うん。わかった」
浮きかけていた腰をソファに落として、考える。
まぁ、そうだな。喧嘩腰は良くない。多分お互い引けない。かといってあんまり優しく気を使うと、それこそ嫌がられそうな気がする。ふつーが一番だ。いつもの俺たちの感じで、友達だから、相方だからなんとかしたいんだって、伝えればいいよな。
……もし、それでも拒否されたら……ないとは思うが、一度は突っぱねた手前引けない、とか考えそうな気もする。あーめんどくせぇ。ほんとめんどくせぇな俺の相方。
でもま、そんな相方がいいから、続けたいわけで。
そこはもう、しつこく食い下がるしかないかな。ファールチップで粘るのは俺より真白のほうが上手かったけど、真白相手なら粘れるだろ。俺も。
翌日、配信のため事務所に向かう。そーすると、最寄り駅が同じなんで、特に待ち合わせしなくても、だいたい同じ時間に駅に着くわけだ。
「よ。昨夜はよくも無視してくれやがったな?」
なんとなく疲れて見える真白は、配信用の器材や衣装を抱えているので、ちょっと荷物が多い。かといって、ここで荷物を預かろうとすると怒られる。これも女扱いが嫌だったんだろうなと、今なら納得できる。
さて、そんな捻くれた相方だが、わざとらしくこんな声のかけ方をしたら、意外なほど素直に謝ってきた。
「悪かったよ。親があんまり話が通じなくてイライラしててさ。でもほんと、颯真がどうこうって話じゃないから……」
「俺はさ」
騙されねーぞ。また距離を取ろうとしてるな、こいつ。させねーぞ。
そういう意思を込めて切り出すと、視線を外していた真白がはっとしてこちらを見てきた。
「相方なんだから、関係なくねーよな」
「……まあ、そーだな」
うん。よし。ついでに物理的にも一歩近付いておく。
下がるな下がるな。別に触ろうとはしてないし。いやなんかこれ痴漢みたいだな?
そうじゃなくて、真白が屁理屈捏ねるのを防ぐのに、この方がいい気がしただけなんだけど。
「あと友達が困ってたらなんとかしたいし、黙ってられねーよな」
「……うん」
こくりと、細い首が縦に振られた。
「そういうことだから。親友として、俺は俺にできること探すし、今回は中身的に、俺に口出しされたくないかもしれないけど……男とか女とか関係なく、俺はお前のこと、助けたいって思ってるからな」
はっとしたように真白が目を見開いて、俺の顔を凝視する。
あ、これはお袋が言ってたことが当たりだったんだな。そう思っていたら……真白の目が、みるみるうちに潤んできた。
「ま、まし……」
「ありがとう」
その声まで、震えて聞こえて。
そのくせ、不器用に笑ってみせるから。
なんだか、どうしていいかわからなくて、でもなんかこう、ますます、真白を守りたいと思った。
「颯真が相方で、良かった」
泣き笑いでそう言う相方に、返事もできず。ぽんと頭を撫でて、怒られた。
電車の中で隣に立った真白は、さっきの涙も引っ込んで、いつものふてぶてしさを取り戻していた。もう少し殊勝な態度というか、そういうのがあってもいいと思うんだけど、そこは真白だから仕方ない。
「でも実際、うちの親説得すんのに颯真の出番はない気がするんだよな」
ほらな。こうやってナチュラルに俺を無能扱いする。
「んなことねーよ。……多分。てゆーかお前、どうせ「大丈夫だから」とか「問題ない」とか、そーゆーことばっか言っただろ」
「……まぁ、そういう主張はしたけど」
「それより、アイドル活動やりたいってこと、もっと伝えた方がいいがいいんじゃないか?それなら何かあっても応援しようって気になるかもしれないし」
ぱちぱちと瞬きを繰り返した真白は、顎に手をやって考え込む仕草をした。
「……なるほど。それが正攻法か。捻くれた俺には思い付かなかった」
「お前なぁ……」
「とりあえず今日、うち帰ったらその方向で話してみる」
「ん。あー……俺がそこに加勢、とか、しないほうがいい?」
俺としても辞めないでほしいわけだし、真白のご両親にはお願いしたいわけだが。クビ突っ込むな的な反応されると困る。
「……いや、頼む。颯真にお願いされたらうちの親も断りにくいだろうし」
「そうか?なら行くわ。説得頑張ろうぜ」
「おう。ところでさ」
「ん?」
見上げてくる真白の視線が、なんとなく、探るような雰囲気で、俺は首を傾げた。なんだろ、珍しいな?聞きたいことはストレートに聞いてくるやつなんたけど。
「……男とか女とか関係ないって、あれ、俺の……何ていうか、気付いてた?」
「いや、全然……」
気遣わしげだった真白が、吹き出す。ついでに、ちょっと馬鹿にしたような調子で俺の肩を叩く。
「だよなぁ、悪い悪い。颯真が気付くはずないもんな。おばさんか黒沢さんあたりと話した?」
「なんだよ、笑うとこじゃないだろ……そうだよ、おふくろに聞いたんだよ」
クソっ。図星だからなんか恥ずかしいぞ。いや、普通俺の立場でそんなん、気付くわけないだろ。……ないよな?
「あー、そうか、うん。おばさんはわかってたんだな。……まぁ、そういうわけで、お前が俺のこと女扱いすると色々周りも五月蝿いし、俺も落ち着かないし、今まで通りで頼むぞ」
「わかってる。つかそっちこそ、俺の善意をなんでもかんでも女扱いだと思うなよ。俺はただ真白のこと助けたいだけだからな」
真白は、笑ってた。馬鹿にしてるんじゃなくて、皮肉も何もなく、ただ嬉しそうに。
「うん。わかった」
あんまりにも素直で、ちょっと子供っぽいくらいの返事に、俺は何だかくすぐったくて、そのまま真白の顔を見ていることが出来なかった。
女扱いなんてしない。今まで通り。
簡単なはずなのに、何でかそれが凄く難しいことのような気がしてきた。
やっと、やっとちょっとだけ可愛げが出てきました。
ここからが颯真くんの苦悩の始まりです(悦)




