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18.理想の男

末っ子所感

「何で真白くんと一緒にいると颯真兄ちゃんに彼女出来ないの?」


三男所感

「颯真兄ちゃん彼女欲しいとか思ってたの?」


おふくろ所感

「それを颯真が望んでるなら、それでもいいんだけど……」


俺所感

「お前まだそんなこと言ってんのか!?」


一つ一つに答えるのはめんどくさいんだが、紛糾した食卓を落ち着かせるため、俺はそれぞれ、一個ずつ、誤解のないように説明する羽目になった。


「まず透真、一応真白は女だ。女が親友っていうのはなかなか受け入れてもらえないし、親友だと言っても彼女だと思われたりする。女子は最初から俺を空き物件とは思っていない」

「言い方。小学生相手に空き物件とか言うな」


真白の突っ込みももっともなんだが、末っ子は納得したらしい。


「ああ、真白くんと仲良すぎるから、女子が諦めちゃうってことね。わかった」


うん、うーん?まぁ、合ってると言えば合ってるか?なんか言い方、引っかかるんだが。

続いて三男。


「優真、俺だって彼女は欲しい、でも彼女にしたい女子はいない」

「そりゃお前、色白低身長ロリ巨乳とか夢見すぎ……」

「それは!あくまで理想!小学生の前!」


くっ!なんで家族の前で癖を暴露されなきゃいけないんだ!

覚えてろよ真白……そういや真白の好きなタイプとか聞いたことなかったような……あ、女子のタイプについては配信で言ってたか。


「あぁ、好きな人が出来たら、って話ね。けっこうロマンチストなんだね」


いや、別に普通のことだと思うんだが……違うの?

ともあれ三男も納得はしたらしい。


「……で、おふくろ、俺はそんなん望んでない。彼女欲しさに親友と疎遠になりたいとか思わない」

「そう、そうよね。良かった」

「だから真白、去年も言ったけど、俺に彼女出来ないとかわけわかんねー理由で離れようとすんなよ!」

「……わかった。わかってる。わざわざ距離取ろうなんて思ってないから、大丈夫」


あー、疲れた。なんで飯の最中に疲れてんだ、俺。

しかし言いたいことは言えた。

なんとか落ち着いて飯食って、一応真白を家まで送っていくことになった。


「なぁ、颯真」

「ん?」


並んで歩く、片道十分の距離。ワイヤレスイヤホンを半分こして野球中継を聞きながらの、色気のない道すがら、あらたまって名前を呼ばれて、隣に視線を向けた。


「……ちゃんと、好きな人が出来たら、言えよ」

「そりゃお前に一番に言うに決まってんだろ。心配すんな。あぁ、お前もな、そうなったら俺も……」


真白がはっとしたように目を見開いていた。なんだこいつ、立場逆になったらどうなるか、考えたことなかったのか?


「……俺も、相手がいい男か、女?か、確かめてやるから」


距離を取る、って、言われたらな、ショックなんだよ。そんなん、今んとこするつもり無いけど。だから、俺は言わない。言わなくても真白は頭良いしわかるだろ。

うん。わかったっぽい。真白は一度、何か言いかけて、飲み込んだ。それから改めて口を開く。


「男……だと、思うけど、それは……俺が男装しなくなってから、かな」

「そっか」


まぁ、男装してたらなかなか、男相手に恋愛は難しいか。しかし真白が男装辞めるときっていつなんだろうな。アイドル活動やってるうちは続けるってことなんだろうけど。



しかし翌日、俺は違う問題に気付いてしまった。

気付いたのは配信の最中だ。


「へぇ?叱って欲しいの?悪いって分かってるなら、俺が叱らなくてもいいよね?どうしても叱ってほしい?」


なにそれ。叱って欲しいって言ってんのに叱らないって何なの。それリクエストに答えてないじゃん。

俺はそう思ったんだけど、リクエストの主は大喜びだった。何で?


「ふざけんなよ。俺が隣にいるのに他所見すんな。こっち見ろよ」


いやそれちょっと厳しすぎない?モラハラとか言われない?

でもこれもやっぱり大喜びだった。独占欲ありがとうございます!って、それでいいの?


「頑張ったな。あとで思いっきり甘やかしてやるから、覚悟しとけよ」


あ、あま〜い!無理無理、恥ずかし過ぎてこんなん言えない。言えちゃう真白さんマジ少女漫画のヒーロー。


コメント欄は阿鼻叫喚。失笑混じりの俺への反応とはぜんっぜん違う。萌え殺すってこういうこと?

そう、真白は男としてパーフェクト過ぎるのである。自分よりイケメンの彼女とかキツくない?無理くない?メンタルやられない?

……そうか、真白は理想が高いというより、相手のスペックが高くないと釣り合わないんだな……。

そんな真理に辿り着いてしまった瞬間だった。




それからさらに二日。夏休み初日、俺たちはまたもやうだるような暑さの中、カナタさんのスタジオに来ていた。


「はい、2名様ご案内。ご利用は休憩でよろしいですか?」


悪ノリの主は本日、女装していない。小柄で中性的なイケメンの成人男性だ。雰囲気的には美少年……王子様?って感じだ。


「延長料金取られます?」


真白は、もはや突っ込みを諦めて乗ることにしたらしい。

俺たちの持ってきたアイスを食べて、汗が引いたところで真白が顔を洗って、動画撮影スタートだ。今回は俺、コメントだけだから気が楽だ。あとでダンスはやるけど。


「はい、というわけで〜、いつもはカワイイを目指してるんですけど、今回はちょっと番外編?でお届けします!カワイイ後輩、Alice blueの真白くんを、さらにかっこよくしていきたいと思いまーす!」

「こんにちは~。Alice blueの半田真白です。前回は相方がお世話になりました。今日はよろしくお願いします」

「はい、前回女装メイクに挑戦してくれた、相方の颯真くんにもコメントで参加してもらいまーす」

「どうも〜。片岡颯真です。よろしくお願いします」


前回やってるので、大体の流れはわかるし、並べられる化粧道具の数々にもびっくりはしない。問題は俺に真白のような突っ込みが出来ないことだが、そのへんはうまく話を振ってくれるだろうし、なんなら無言をネタにしてもらってもいい。


「はい、皆さん見てわかるようにね、素材がいいです。美少女にも美少年にもなれる顔立ちですね。韓国アイドル風の赤リップとかも似合いそうなんですが、やりすぎると美少女の方に寄っちゃうんで、まずは骨格を男の子っぽくしていきたいと思います」


お、出たぞ骨格詐欺。下地から……なんかファンデーションらしきものが何種類も出てくる。それを薄く、均一に伸ばしていく。

普段のメイクについて真白が聞かれて、答えている間に、だいぶのっぺりした顔になった。


「ここからが男装メイクの肝!骨格を浮き立たせて、彫りを深く見せるためのシャドーとハイライトです。ちなみに真白くん、目指してる理想形とか、理想の男の人っている?」

「あー、そうですね……颯真」

『え』


突然の告白に、俺とカナタさんの声が被った。

心臓が跳ねて、痛い。


「……のお父さんですかね」

「オヤジかよ!」


俺の動揺を返せ。いや、これはこれでびっくりなんだが。何それ?オヤジが理想形?

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