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14.彼シャツ……では、ない

颯真@Aliceblue@souma02_Aliceblue……

今日は真白が泊まりに来てまーす!

おやすみなさい!


なな。@nanamine……

颯真くんおやすみなさい!


♡みこちゅ♡@4141miko……

颯真くんお疲れ様。おやすみなさい。真白くんも見てるかな?おやすみなさい。


きゃろ@nantoka……

おやすみ〜って、泊まりはやばい。いくら家族がいてもやばい。颯真くーん!それ多分言っちゃだめなやつ〜!


みつ豆@32mmcat……

颯真くん?真白くんはあの、あれだけど、大丈夫?


ガチの☆まりあ@loveAlece……

家族公認!ありがとうございます!おやすみなさい!良い夢見れそうです!


瑛香@eika73……

これも仲良しアピール?事務所に無理云われてない?


ゆじゅじゅ@mylolkt……

ちょっと颯真くん泊まりってどういうこと!?

そこんとこ詳しく!


みかん@本垢@mimipop……

仲良し尊い……ありがとう颯真くん。真白くんちゃんとご飯食べた?

おやすみ!いい夢みてね〜!


ゆき@yuki_mon……

はい嘘。ありえない


………………

…………

……



「……颯真」

「いやごめん、ほんとまじでごめん」

「……颯真」

「すいませんでした。もうちょっとよく考えてから投稿するようにします」


朝イチで真白とお袋に叱られ(真白はわかりやすく怒り、お袋は相変わらず笑顔だった)、恐る恐るのぞいてみたSNSのコメント欄。いつもの倍くらいコメントついてて、うちいくつかは明らかになんかこう、歓迎的でないというか、イメージ悪くしたなってのがわかる感じだった。

これはヤバい。やってしまった。


「……俺、颯真が俺のことを安心させようと思って泊まらせてくれたんだと思ってたんだけど、これ逆のことしてるよな?」

「颯真。応援するとは言ったけど、好きにやっていいってことじゃないのよ?」

「はい……」


そうか、俺真白が不安にならないようにうちに連れてきたのか。なんか一人にしちゃいけない気がして連れてきたんだけど、そーいうことか。

って、そこじゃなくて。

ほんと、これ、ますます真白への当たりが厳しくなったりするんじゃないか?

大丈夫、じゃ、ないよな?これ。

ど、どーしよう、どーすりゃいいんだ、これ。


「……取りあえず俺がフォローしとくから、お前も話合わせろ。変に釈明すると勘繰られる」

「ごめんなさいね真白くん。この子ほんと、考え無しで……」

「いえいえ、まぁ、長い付き合いですし。俺も世話になってますから」


考え無しは否定してくれないんだな。いや、うん、この状況では俺自身反論できないけど。


真白は「事務所での急な打ち合せが長引いて遅くなったので、颯真のお母さんが心配して泊まらせてくれました」って感じの投稿をしてくれた。これまた事務所がファンに怒られるんじゃないか?と思ったけど、これよりいい案は俺には出せなかった。


それから、黒沢さんがうちに迎えに来てくれて、また説教くらって、真白の家に寄ってから学校に向かった。

はー、今日は配信休みで良かった。SNSもあんま見ないようにしよう。いやでも、なんか返信しとかないとまずいかな……。


「おっす颯真。『ゆうべはおたのしみでしたね』」

「勘弁してくれよ。朝からお袋と真白とマネージャーさんに叱られたんだからさぁ」


真白と分かれて教室に入ると、友人の一人が声をかけてきた。こいつはしっかり俺たちの活動を追っているので、何かあるとすぐ声をかけてくるし、なんなら俺よりファンの動向を知っている。付き合ってる云々の書き込みを見つけて、俺に「どーなってんの?」と聞いてきたのもコイツだ。こいつがすべての元凶だ。


「うん。だいたいお前が悪い」

「なんでそうなるんだよ?!」


まぁそうはならないよな。うん。

席について、空いてた椅子を引き寄せて隣に座った友人に謝る。


「悪い悪い。色々あって……なんか、掲示板とか、荒れてる?」

「あー……まぁ、お前んとこのコメント欄よりは……ていうか、真白のコメ欄見た?」


慌てて真白の、フォローしてくれた投稿のコメント欄を見る。たしかに、悪意が滲むもの、全開のものが、いくつかあった。匿名じゃないSNSでこれなんだから、匿名の掲示板じゃきっと、もっと酷いこと言われてるんだろう。

怒りと後悔で、思い切り眉間にシワが寄る。ただ俺が無理矢理引っ張ってきて泊めただけなのに、なんで真白がこんなこと言われなきゃならないんだ。

……俺のせいか。


「あー……と、それで?何かなかったの?ラッキースケベ的なアレは」


俺が深刻な顔をしていたから、わざと茶化すように聞いてくる。それはありがたいんだけど、中身がありがたくない。


「あるわけないだろ、真白だぞ……」

「まぁあいつ鉄壁だもんなぁ」

「いや、絶壁というほどなくはなかったけど」

「ん?」

「え?」


友人の顔がニヤァ、と、歪む。え、いや、あれ?コイツ今確か絶壁って……鉄壁?だった?


「なるほど?真白のおっぱいは見たわけだ?」

「み、見てない!見てないけどただ、俺のTシャツなのに胸のとこ膨らんでたなって思い出しただけ、で」

「えー?なにそれ彼シャツってやつ?えっちじゃん?」

「えっ……」


そ……れは……ちが……あつ……顔が、熱い……


「……あ、そろそろチャイム鳴るわ。んじゃ後でな、颯真」


えっち……彼シャツ……おっぱい……


消したはずの雑念が渦巻いて、この日の俺は授業どころではなく、エゴサの余裕もなかった。下校時刻が近付くと今度は真白と顔を合わせるのが気まず過ぎて、心臓が痛みだした。

なんだこれ。俺こんなに繊細なハートの持ち主だったっけ?わりと無神経で通ってたと思うんだけど。いやそれは置いといて、真白……真白は、そうだ、黒沢さんが迎えに来るんだった。俺がいなくても大丈夫というか、むしろ俺が1番の害悪!心臓が痛い!


『ちょっと用事できたから、黒沢さんと帰ってくれ。明日の配信については、また夜に』

『りょ』


二文字とスタンプひとつの簡潔な返事に、ほっと息をつく。

とりあえず夜、打ち合わせの通話まで時間は稼げた。それまでにこの雑念を消す。消す!


「で?真白はBはあったってこと?」

「掘り起こすな!その手の話題は禁止!真白については!絶対に!」


思わず友人に叫んでしまい、放課後の教室の視線を集めてしまった。慌てて鞄を掴んで移動する。


「……そんな、駄目なん?」

「駄目だっつの。そんな目で見てたら一緒に活動できないだろ」

「まぁ、そうか……つか、今まで一度もないの?こう、女を感じるというか、ドキッとしたりとか」


思い返すが、そんなんあったら今の関係に落ち着いてないと思うし、こんなに一緒にいられないと思う。


「ないな」

「えー……言うて体は女子じゃん?こう、手首細いなぁとかいい匂いするなぁとかそういうの、ないの?」

「いやそりゃ男とは違うけど……なんていうか、真白の場合は……」


男じゃない。でも、女とも思えない。この俺の感覚っていうか、捉え方を一言で表すと。


「真白は、真白っていう生き物だから」


友人は爆笑しながら納得した。

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