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27話 魔王の逆鱗

「そ、そんな……まさか、魔王を相手にしていたなんて……」

「終わりだ、もう終わりだ……」


 騎士達は戦意喪失したらしく、へたりこみ、剣を手放してしまう。


 ただ、それも仕方ない。

 イングリウムに伝わる魔王という存在は、世界を滅ぼす毒なのだ。


 一度触れたが最後。

 その身には破滅しか待ち受けていない。

 魂は砕かれて、天にも地にも行くことができず、未来永劫さまよい続けるという。


 イングリウムでは、そんな話を誰もが信じている。

 故に、彼らは今、途方もない絶望を味わっているのだろう。


 ただ……


「ば、バカな! そんな、魔王なんて……ふざけた話をするな! このようなところに魔王がいるわけがない。なによりも、そこの女を助けるなんてありえないぞ!!!」


 カイム様はいつも通りの様子で、泡を飛ばすような勢いで叫んでいた。


 訂正。

 いつも通りではなくて、半ば発狂しているような様子だ。

 それほどまでにジーク様の存在は衝撃的だったのだろう。


「鉄仮面のために一国の王が動くなんて、そんな価値があるわけが……」

「哀れだな」

「な、なに?」

「なぜ俺が動いたのか。そのようなこともわからないとは……本当にくだらない、愚かな人間だ」


 ジーク様は侮蔑の視線をカイム様にぶつけた。

 それは、とても屈辱的であったはず。

 カイム様は全身をわなわなと震わせて、ジーク様に剣を向ける。


「よくもそこまで吠えた……! この手で断罪してやろう!!!」

「……それは俺の台詞だ」


 ゴッ、と大地が揺れた。

 大気も震える。


 ジーク様に反応して、世界が悲鳴をあげているかのようだ。

 さきほどよりも激しく、はっきりとした怒りを示している。


「アルティナを何度も何度も傷つけて、さらに己の欲のために誘拐をして……さて。これだけのことをしたのだから、覚悟はできているだろう?」

「あっ、う……」


 カイム様はジーク様の圧にすっかり飲み込まれてしまい、まともに言葉を発する事もできない様子だ。

 そんなカイム様を見て、ジーク様はさらに苛立たしそうにする。

 こんな相手に……などと、そんなことを思っているのだろうか?


 どちらにしても、このままだとまずい。

 本当にカイム様を殺してしまう。


「ジーク様」


 声をかけると、ぴたりと動きが止まる。


「どうか、その辺りで……」

「アルティナ……お前は怒っていないのか? この男に酷い目に合わされて、復讐をしたいと思わないのか?」

「えっと……正直なところを申しあげますと、特には」


 確かに、傷ついたことがある。


 婚約破棄を告げられて。

 国外追放にされて。

 暗殺されかけて。


 酷い、と思ったことはある。

 でも、その後のグレスハウトの生活が幸せで……

 ジーク様やアン様。

 その他、たくさんの人と笑顔で接することが楽しくて……

 気がつけば、復讐心とかそういうものは綺麗に消えていた。


 というよりも、今の私の本音は、


「カイム様のことは、もうどうでもいいので」

「ど、どうでもいい……?」


 カイム様が唖然とつぶやいた。

 そんな彼を見て、私は静かに告げた。


「カイム様。私はもう、あなたのことはどうでもいいです。欠片もなんとも思っていません」

「な、な……」

「なので、これで終わり。もう二度と顔を見せないでくれませんか?」


 それは、事実上の決別宣言。


 かつて、私がカイム様から婚約破棄を告げられたのだけど……

 今度は私の方から縁を切ることになった。

 どこか皮肉な話だ。


「そ、そのような勝手を認めるわけが……」

「ならば死ぬか?」

「ひっ!?」


 ジーク様が剣を突きつけて、カイム様は悲鳴を上げた。

 蛇に睨まれたカエル。

 まったく動くことができない様子で、カタカタと小さく震えていた。


「アルティナ姉さまと魔王の関係がとても気になりますが……ひとまず、解決といったところですね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 意趣返しですな。 これこそ、正にオウム返し!
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