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25話 大事な……

 目が覚めたら見知らぬ場所にいた。


 なぜ、私はこんなところで寝ているのだろう?

 確か、のんびりと過ごしていたはずなのに。


 私は混乱して……

 目を開けて、もっと混乱することになる。


「婚約破棄します!!!」


 なぜかアニスとカイム様がいて、妹が婚約破棄を告げていた。


 なに、これ?

 いったいどうなっているの?

 さらに混乱してしまい、ついつい状況を眺めるだけの人形になってしまう。


 ただ……


 そうも言っていられない展開になってしまう。

 カイム様が剣を抜いてアニスに迫る。


 私は慌てて立ち上がり、反射的にアニスの前に出た。


「させません」


 手の平を前に出して力を使う。

 力の応用で、盾のようにして一点に結界を張る。

 初めてやることだけどうまくいったらしく、剣を弾くことができた。


「アルティナ姉さま!?」

「アニス、大丈夫ですか?」

「それは私の台詞です!!!」


 あれ?

 どうして私が怒られてしまうのでしょうか?


「アルティナ姉さまは状況を理解しているんですか!?」

「いえ、まったく」

「ああ、もう! いつもそうやってマイペースで……いいですか? アルティナ姉さまはあのバカ王子達に誘拐されそうになっていたんです」

「え」

「ここは私がなんとかします。だから、今すぐに逃げてください!」


 そう言って、アニスは前に出ようとして……

 しかし、私はそれを手で制する。


「アルティナ姉さま?」

「アニスに任せておくことはできません」

「それは……! そう……ですね。私もアルティナ姉さまを傷つけておいて、平気で味方顔する愚か者で……」

「なにを言っているのですか?」


 さきほどから、アニスがなにを言いたいのかまったく理解できない。

 私が言いたいことは、ただ一つ。


「大事な妹を残して逃げられるわけないでしょう」

「大事……な?」


 喋る猫が現れたという感じで、アニスは信じられないものを見たような顔に。


「どう、して……」

「はい?」

「私は、アルティナ姉さまに酷いことを……」


 酷いこと?

 ……なにかされたでしょうか?


 もしかして、婚約破棄のこと?

 でもあれはアニスは関係ない。

 私に魅力がなくて、カイム様が愛想を尽かしただけのこと。

 それでたまたまアニスが次の婚約者に選ばれただけ。


 というか。


 仮に酷いことをされたとしても、アニスを嫌いになるなんてことはない。

 だって……


「アニスは、私の大事な妹ですから」

「……妹……」

「妹を助けるのは姉の役目なのですよ」

「うぅ……姉さま、アルティナ姉さまぁ……」


 アニスはぽろぽろと涙を流して抱きついてきた。

 その背中を優しく撫でる。


「よしよし」

「私、アルティナ姉さまのために、って……でも、やっぱりあんなことをしなければ、って……」

「大丈夫ですよ、私はここにいますからね」


 少し昔のことを思い出した。


 小さい頃のアニスはよく泣いていた。

 その度に、こうして慰めていたものだ。


 懐かしい。

 久しぶりに最愛の妹と会うことができて、とにかく嬉しい。


 もしかして? と、一時は疑うこともあったけれど……

 その疑いを持ち続けなくてよかった。

 今、一瞬で消えてくれてよかった。


 アニスはアニスのまま。

 私の大事な妹だ。


「また、この私に逆らうか……!!!」


 地の底から響くような声。

 振り返ると、ゾッとする、幽鬼のような顔をしたカイム様の姿が。


 弾かれた剣を拾い、ゆっくりとこちらに迫る。


「やはり、貴様はいらない! 鉄仮面などは潰してしまうのが最善なのだ!!!」

「くっ……!」


 猛然とした勢いでカイム様が剣を振る。

 なんとか結界の盾で防いでいるものの、それも時間の問題かもしれない。


 カイム様の剣はとにかく速い。

 それに攻撃の回数も多い。


 対する私の戦闘技術は素人もいいところ。

 いくら結界の盾があるとはいえ、いつまでも防ぐことはできない。

 やがて突破されてしまうだろう。


 なにか、なにか手は……!?


「アルティナ姉さま!」

「っ!?」


 アニスの悲鳴。

 気がつけばカイム様の剣が結界の盾を越えていた。


 刃が目の前に迫る。

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