10話 慣れない生活
「おはようございます」
「……え?」
翌朝。
目が覚めると、なぜか部屋にアン様がいた。
ちなみに、私は、魔族の国にお世話になることにした。
迷惑をかけてしまうのだけど……
他に道がなかったのだ。
すると、賓客として迎え入れられて……
このように広い個室も与えられた。
ここまでしてくれるジーク様には感謝しかない。
ただ……
「どうして、アン様がこちらに……?」
「アルティナ様を起こしに参りました。おはようございます」
「おはようござい……ます?」
なぜ、アン様が私を起こしてくれるのか?
そこは謎だ。
疑問に思っていると、それを察したらしく、アン様が丁寧に説明をしてくれる。
「本日付で、私は王の秘書からアルティナ様の侍女となりました」
「えっ」
「これから、私がアルティナ様の身の回りのお世話をさせていただきます。どうぞ、これからよろしくお願いいたします」
「……」
ぽかんとしてしまう。
「どうされたのですか?」
「あ、いえ……私なんかの侍女になるなんて。アン様にとても申しわけなくて……」
「そのように卑下なさらないでください。私が望んでいることですし……そもそも、アルティナ様の侍女、従者になりたいという者は数え切れないほどいたのですよ?」
「え?」
「男女問わず、アルティナ様に仕えたいという者が後を断たず……テストが行われることになりました。そして私が勝ち残り、この座を掴み取ったのです。ですから、どうぞお気になさらず」
「そ、そうですか……」
私なんかのためにテストが?
そんな価値は……あるのだろうか?
わからない。
わからないけど……
「あ、あのっ」
「はい、なんでしょう」
「その、えっと……よ、よろしくお願いいたします」
アン様の気持ちを裏切るようなことをしてはいけない。
そう思い、ぺこりと頭を下げた。
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」
アン様はにっこりと笑うのだった。
◇
「よくお似合いです」
「えっと……」
とても落ち着かない。
私が着ていた服は、昨日の騒動でボロボロになってしまった。
なので、ジーク様から新しい服をいただいたのだけど……
芸術品のように綺麗な服だ。
今までのものとぜんぜん違うと、着てすぐにわかった。
「このような素敵な服をいただいてしまって、本当にいいのでしょうか……?」
「ぜひもらってほしい」
「ジーク様?」
扉が開いて、ジーク様が姿を見せた。
「様子を見に来たんだが……うん、いいな。とてもよく似合っているぞ」
「そう、でしょうか……?」
「ああ、女神のようだ」
「……」
「照れなくてもいいだろう? 本当のことだ」
ああ、もう。
どうしてこの方は、私の感情がわかってしまうのか。
うれしいと思いつつも、今は恥ずかしいと感じてしまうのだった。
「……」
「どうした? 落ち着かない様子だが」
「このような格好をするのは初めてなので、どうにも……」
「初めて? アルティナは聖女だったのだろう?」
「はい。しかし、聖女の仕事にこのようなものは必要ありません。白のローブがあれば問題なく……」
「……もしかして、それしか与えられてこなかったのか?」
「はい、そうですが……?」
なにか問題なのだろうか?
ジーク様は苦い表情をしていた。
「もしかして、と思っていたが、なかなかひどい環境に置かれていたみたいだな……アルティナほどの聖女を雑に扱うなんて、イングリウムはなにを考えている?」
「えっと……」
「……ああ、すまない。考えごとをしていた」
「いえ、それは構わないのですが……」
私はひどい環境に置かれていたのだろうか?
……よくわからない。
今までを思い返してみたけど、特に困ったことはない。
「ところで、答えは出たか?」
「え?」
「昨日の話だ。我が国の聖女になってほしい。そして、その力を貸してくれないか?」
昨日は、唐突な話で返事をすることができなかった。
一晩、じっくりと考えた。
私の答えは……
「私でよろしければ」
追放された聖女の力なんて、大したことはない。
どこまで力になれるかわからないけれど……
それでも、私を求めてくれるのならば、その方のところでがんばりたいと思った。
「おお、そうか! 受けてくれるか!」
「今日は素晴らしい日になりそうですね!」
ジーク様だけではなくて、アン様まで喜んでいた。
そこまで喜ばれるようなことはしていないのだけど……
ただ、この国でお世話になるだけなのですが。
「歓迎するぞ、アルティナ。今日から、この国で暮らす仲間として、よろしく頼む」
「はい、よろしくお願いいたします」
こうして、私はジーク様のところに身を寄せることになった。




