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白い雪

作者: ネコイヌ

「朝よー。そろそろ起きてきなさーい。」

お母さんの声が聞こえてきた。

朝か…

眠たい目をこすり、温かいベッドからでる。

「うぅ… 寒い。今日は一段と冷えるな。」

寒い部屋から逃げるように、暖かいリビングへと急ぐ。

「おはよう。よく眠れた?」

「おはよう。お母さん。うん、よくねた。」

「休みに入ったからって、寝坊しちゃダメよ。」

「うん。わかったよ。」

「それならよし。ほら、早く顔洗って、朝ごはん食べて。」

「はーい。」

もぐもぐとご飯を食べながら、朝から忙しそうなお母さんをみる。お母さんが動くたびに赤い髪が揺れ動いて、まるで炎みたいで温かそう。

「そんなじっと見て、何か用?」

「えっ!!お母さん、見てるのわかったの?」

「当たり前よ。お母さんには後ろにも目があるんだから。」

「えー!」

「ふふ。ほら、早くご飯食べちゃいなさい。」

「うん。」


お母さんの衝撃的な事実を知った朝ごはんの後、ぼくは部屋でぼーっとしていたら、お父さんが帰ってきた。

「おかえり!」

「おかえりなさい。早いわね。今日はどうだった?」

「ただいま、2人とも。うーん。今日は雪だからね、あまり売れ行きは良くないかな。だから、店を閉めてきたよ。」

「あら、そうなの…」

ぼくのお父さんは、ペンキ屋さんで、たくさんの種類のペンキを売っている。

「大丈夫だよ。冬が過ぎれば、また売れ出すさ。」

「そうね。」

はははとお父さんとお母さんが笑いあう。その度、お母さんの髪が揺れ、お父さんの方にいく。お父さんの髪は緑色で、植物に似てるから毎回ぼくはお父さんの髪が燃えちゃうんじゃないかとヒヤヒヤする。

「お前はどうだ?今日は何かあったか?」

「ううん。何も。」

「この子ったら、さっき起きてきたばっかりなのよ。」

「そうなのか。今日は雪も積もってるから、外で遊んできたらどうだ?」

「うん!そうする!きっと、みんないつもの場所にいるだろうし!」

「よし。行ってこい。」

そう言って、お父さんはぼくの暗めの緑の髪をワシャワシャとなでた。


外に出ると、冷たい空気が身を包むと同時に色んな色がぼくの目に飛び込んでくる。

ぼくの住む町はカラフルだ。いろんな色の家が立っていて、どこを向いても色がある。住民もカラフルでみんな髪の色や目の色などそれぞれ個性ある色を持っている。だけど、そんな賑やかな町並みが雪の日になると、白い色の1色になる。そのとき、ぼくは1番ワクワクする。どんな色にしようか、こんな色が似合うんじゃないかって想像することができるから。今日もそんなふうにワクワクしながら歩いて、いつもの公園へと向かう。


「あっ!みんな!」

「おっ!ちょうどいいところに来たな!今から雪合戦するんだ。こっちのチームに来い!これで人数も同じになる!」

「うん!分かった!」

ぼくたちは、雪合戦や雪だるまづくりなど、みんなで楽しく雪の日を満喫していた。

「あっ!みろよ!」

そう言って、一人が騒ぎはじめた。みんながバッとその方向をみる。

そこには、白い色をもつ一人の女の子がいた。

「雪女だ!」

「本当だ〜」

「また一人だね。」

他の子もザワザワし始める。

「みんな、やめなよ。おーい、こっちで一緒に遊ぼうよー」

そうやって女の子の1人が叫んだ。

呼ばれたことに気がついたのか、女の子がこっちを見たけど、ふいっと顔をそらして向こうへ行ってしまった。

「あ〜。行っちゃった…」

「いいじゃん、別に。あいつ、いつも誘うけど無視するんだぜ。それよりさ、今度はかまくら作ろうぜ!」

「うん!」

そう言って、みんなが向こうへ駆けていく。ぼくは流されるようについていった。


公園からの帰り道、みんなが雪女とよぶ子について考えていた。白い色をもつ女の子で、ぼくと同い年。ほとんど学校に来ないが、雪の日にだけ絶対学校に来ている。雪の日だけ学校に来て、外に出ているから雪女。そういうふうに言われている。彼女は最近引っ越してきたばかりらしい。そして、彼女のお父さんとお母さんはもともとこの町の出身らしくて、ぼくのお父さんとお母さんと仲がいい。だから、ぼくにこの子のことよろしくね、仲良くしてあげてと向こうの親と僕の親に頼まれてしまっていた。けど、彼女は仲良くする気はあまりないみたい。ぼくも最初の方は話しかけたり、遊びに誘ったりしてたんだけど、彼女だんだんと学校に来なくなって、接点がなくなって…もう諦めかけている。

「はぁ〜。どうすればいいのかなぁ…」

うーんと頭を悩ませていると、前の方に悩みの種がいた。

これは、話しかけるチャンスだ!そう思って、彼女に近づいた。

「おーい!」

「えっ?」

「久しぶり!元気?」

「えっ、あの…」

「あっ、ごめん。分からないか…ぼく、ペンキ屋の子なんだけど。」

「あ、うん。知ってる。覚えてる。」

「それはよかった!今日さ、公園のところにいたよね。」

「いたけど、それが?」

「えっと、ぼく、たちあそこで遊んでて、君を誘ったんだけど、どっか行っちゃったから。何か用事あったのかなって。」

「別になかったけど…」

「じゃあ、どうして一緒に遊ばなかったの?」

「それは…別にどうでもいいじゃん。」

「ムッ!そんな言い方ないじゃないか。ぼくたちは君と仲良くなりたいんだよ!」

「そんなの、別にいい!」

「あっ…」

白い彼女はタッタッタッと走って、白い雪の中に紛れてしまった。


次の日、ぼくはお父さんの仕事の手伝いにお店に来ていた。

休みの宿題の家のお手伝いの部分が終わるなラッキーと思ってたけど…疲れた。  

今日は大盛況だった。久しぶりに天気が良くて、年末年始にかけて家とか色を変えようとする人がこぞってやってきた。

「お疲れ様。大丈夫か?」

「お父さん…うん、大丈夫。」

「そうか?ちょっと裏で休んだらどうだ?」

「うん、そうする。」

チリンチリン

「おっ、いらっしゃい。」

「久しぶりだな。」

ん?誰だろう…げぇ!この人はあの子のお父さんだ!

「久しぶり。今日はどうした?」

「今日は娘の部屋の色を変えようと思って。」

「おぉ、そうか。娘さんの…だから、一緒に来ているんだな。」

一緒に来てるのか!うわ〜、バレないうちに奥に行こう…

「そうだ!今日は息子が手伝いに来てるんだよ。おーい、おいでー」

えぇ!嘘〜呼ぶ〜

はぁ〜

「こんにちは。」

「やぁ、こんにちは。お手伝いなんて偉いね。」

「えへへ、ありがとうございます。」

「そうだ!色が選び終わったら、休憩も兼ねて一緒に遊びに行ったらどうだ?」

「「えぇ!」」

そんな大きい声出せるんだ… 初めて聞いた…

「おぉ!いいな。そうしなさい。」

「お父さん!」

「よし、じゃあ選ぶか!」

昨日のことなんて知らないお父さんたちは、ワイワイとペンキを選びはじめた。


「じゃあ、お父さんたちは他に話し合うことがあるから。遊びに行ってこい。」

「いってらっしゃい。5時くらいには終わるから。お前がここまで連れてきてあげるんだぞ。」

「…はーい。」

「「いってらっしゃい」」

チリンチリン

「……」

「……」

気まずいなぁ〜。

「ねぇ。」

「えっ、何?」

「昨日はごめんね。」

「えっ?」

「昨日のこと!ごめんね!」

「あぁ!いいよ。ぼくも昨日は強くいいすぎちゃったよ。ごめんね。」

「いいよ。」

「引っ越してきたばかりだもんね。あまり、遊ぶ気にはなれないよね。」

「ううん。それは違うの。」

「えっ?違うの?」

引っ越して、前の友達が恋しいし、緊張するからぼくたちと一緒に遊ばないと思ってたんだけど…

「あのさ、私のお父さん見てどう思った?」

「えぇ?」

なに?その質問…

「どう思った?」

「うーんと、ぼくのお父さんよりは痩せてるかな。あっ!それと、髪の色が空色みたいで綺麗だった!」

あの明るい青!ぼくの色は暗めだから憧れちゃうよなぁ。

「やっぱりね…」

「ん?どうしたの?」

「私のお母さんはね、明るいピンク色なの…」

「へぇ〜、そうなんだねぇ。」

この子の家族は、明るい色をもつ家族なんだなぁ。

「なんか思うところないの!?」

「えぇ!?なにそれ…別にないけど…」

「私の色のこと!私、白いろなんだよ!」

「それが?」

「っ!だって、お父さんとお母さんはあんな綺麗な色持ってるのに、私だけ色なしなんだよ!」

「え?白っていう色持ってるじゃん。」

「でもでも、あなたたち白嫌いでしょ!」

「えぇ!?そんなことないよ!」

「そんなことある!だって、白いろの家も見かけないし、白なんてどこにも残ってないでしょ!」 

「いや、白いろは目に見えないかもしれないけど、ぼくたちが白いろ嫌いっていう訳じゃないよ!だって、ぼく、白いろ好きだもん!」

「…え?本当?」

「うん。ぼくの部屋は白い色を基調としてデザインされてるんだ。」

「そうなの?」

「そうだよ!白は特別な色だよ!白そのままでもかっこいいし、ここからどんな色を塗ろうかって1番ワクワクする色だよ!」

「へぇ…そうなんだ。」

「そうそう!だから、そんな泣かないでよ。」

「な、泣いてなんかない!」

そう言って、彼女は目をゴシゴシこする。

「あー、嘘ついてる〜。」

「ついてない!」

「そっかー。ねぇ、これから公園行かない?みんなと一緒に遊ぼうよ!」

「うん!でも…みんな入れてくれるかな。」

「大丈夫だよ!ぼくたちみんな、君と遊びたかったんだ!」

「えへへ、そっかぁ。」

「そうだよ!あっ!そういえば、君はさ、なんで雪の日にしか外に出なかったの?」

「それは、雪の日だとあたり一面が白いろになるでしょう。だから、私と同じ色で歓迎してもらってるように感じたから。」

「そうだったんだ。でも、今日からは違うね。ぼくらがいつでも歓迎って分かったから!」

「うん!」

ぼくたちは少し雪の残る道を仲良く笑い合いながら歩き、公園へと向かった。

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