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tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者 第二部  作者: 氷川泪
第四章 アプリコットチェイサー
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再契約

「で、結局あの子は見つかったの?」


 問題はそこだった。怪物じみた男が暴れようが、小僧犬の兵隊が何人叩きのめされようがチャオには関係が無い。肝心(かんじん)なのは、浅黒い肌を持つあの少女の行方だ。


「知らねぇ。野郎と一緒に消えた様子もないから、ひとりで逃げてんじゃねぇの?」


 あっさりと小僧犬が答える。チャオの右手の爪が音を立てて伸びる。今しがたモニターの中で男が見せた暴力など茶番(ちゃばん)に過ぎないことを小僧犬に教えてやらなければならない。


「イレギュラーな事態が発生したのは、自分の落ち度ではないと、そう言いたいのですか?」


 会話にミカが割って入る。ラウンドグラスの奥にある小僧犬の視線がミカに(そそ)がれる。


勘違(かんちが)いすんなよ、兄ちゃん。(はな)っから俺の落ち度なんか欠片(かけら)もねぇだろうが」


 (あき)れるように小僧犬が笑う。


「ガキを監禁しとけっていうのがちびっ子姉ちゃんの依頼だ。化物に襲われるかもしれねぇなんて話は聞いちゃいねぇ」


「契約内容に重大な情報の遺漏(いろう)があったと、そう言いたいのですね?だから契約自体が無効だと」


「俺たちみたいなやんちゃ集団に子守を頼むんだから、それなりの事情はあったんだろう。だがその辺を差し引いても、あいつは規格外だ。あんな奴を相手にするってんなら、お年玉の額を上げてもらわねぇとな」


「なるほど。ごもっともですね。だけど、あの男の出現は私にとっても想定外だったのでね。で、小僧犬くんだったっけ?きみは、金さえ払えばあの子を取り戻すことができると、そう言ってるのかい?」


「二日以内に見つけ出す。できなければうちのお母さんをあんたに差し出すよ。ちょっと(つら)いけど」


()りませんよ、そんなもの。ですが理解していますか?あの子の側には、相変わらずあの男がいる可能性が高い。あの男からあの子を取り戻すことが、あなたにできますか?」


 ミカの問いには答えず、小僧犬はジャケットの内側から一本のナイフを取り出した。


「こいつは、うちの兵隊があいつの脇腹(わきばら)(えぐ)ったナイフだ。とは言っても、切っ先1㎝も刺せちゃいねぇけどさ」


 先端(せんたん)がわずかに赤く染まっている刃渡り20㎝はありそうなナイフを、小僧犬はテーブルに投げ出した。


「こいつを使って、流行りのDNA鑑定ってやつをやってみた。面白くもなんともねぇ結果が出たぜ。こいつは間違いなく人間の血だそうだ。ゴリラでもなけりゃツチノコの血でもねぇ。しかもおれと同じB型だときてる」


 舌なめずりをしながら小僧犬が(うれ)しそうに笑う。


「相手が人間なら殺せる。つまりそういうことさ」



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