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tokyo転生者 北区に住んでる光の勇者 第二部  作者: 氷川泪
第四章 アプリコットチェイサー
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ボルグ

 銃は通用しない。


 1分足らずの戦闘で、ボルグはその事実を理解した。


 在り得(ありえ)ない事態が立て続けに起こっている。80キロ近い速度で移動するトレーラーの屋根に突如(とつじょ)現れた敵は、アルミ合金で(おお)われた天井を引き()がして車内に侵入してきた。人間の身体能力でできることではない。何等かのトリックがあるのかもしれないが、それを考えている暇はなかった。


 ボルグはロシア製のPLK、小僧犬はシグザウエルP320を所持している。いずれも9mmパラベラム弾を連射できる高性能ハンドガンだ。


 侵入した敵は、車内中央に立っていたサントスを一瞬にして無力化した。女や子供にかまけて油断していたとはいえ、サントスほどの手練(てだ)れを瞬時(しゅんじ)に倒した敵の力量は計り知れない。今回のコントラクトは、子供の奪還(だっかん)とそれを妨害する敵勢力の殲滅(せんめつ)だと説明を受けていたから、ボルグはサントスの生死など考慮せず、銃を引き抜いて発砲した。


 一呼吸のうちに弾倉の中の弾丸を撃ち尽くした。荷台を改造して作り上げた狭い室内に射撃音が響き渡り、硝煙(しょうえん)薄煙(うすげむり)と火薬の匂いが充満(じゅうまん)する。


同時に撃ち始めた小僧犬と合わせて、30発以上の弾丸を敵に浴びせかけた。小僧犬の射撃の腕は未知数だったが、自分の腕には自信がある。外すような距離では無かったはずだが、敵は銃弾の雨を掻い潜(かいくぐ)り、全長16メートルしかないトレーラーの中を無傷で移動している。


 マガジンを交換すると、ボルグは壁沿いに移動し、荷を積み込む際に使用する白熱灯のスイッチを入れた。(まばゆ)いほどの強烈な光が(あふ)れ、薄暗いトレーラーの中は昼間の様な明るさを取り戻した。


 敵はすぐ隣にいた。銃を向ける余裕も無いほど近接した位置から、黒く巨大な敵の拳が(うな)りを上げてボルグの顔面に向かってきた。


 体を落としてその拳を(かわ)した。頭蓋骨の数センチ上を、スレッジハンマーのような敵の拳が通り過ぎていく。ガードすることを考えなかったのは正解だった。無慈悲な敵の一撃は、ガードしたボルグの顔面を、腕の骨ごと叩き潰していただろう。


 腰を落とした体勢から胸のホルスターからナイフを引き抜き、敵の腹を横薙(よこな)ぎに払った。引き抜く動作と切りつける動作が一体となった無駄のない攻撃だ。拳をフルスイングしたおかげでがら空きになった敵の腹部大動脈(ふくぶだいどうみゃく)致命傷(ちめいしょう)を負わせることができる。


 ベコリと音を立てて敵の腹がへこんだ。腹の肉があったはずの空間を、ボルグのハンティングナイフが何の抵抗も受けずに通過していく。空振(からぶ)りに終わった攻撃のせいで、大きな隙を敵に与えてしまった。ボルグの下顎(したあご)目がけて、敵の膝が()ね上がる。


 全身の力を一気に抜き去り、体を浮かせることで跳ね上がる膝の威力を消し去った。左の指先を腰に差したカランビットナイフに(から)めて引き抜き、内腿を走る大腿動脈(だいたいどうみゃく)を切りつけた。敵が身に着けたデニムの生地(きじ)を切り裂いたところで、ナイフの刃が(はじ)かれた。


 腿の動脈の守りに、敵は革製のバンテージでも巻いているのだろう。


 凄まじい脚力で跳ね上げられたボルグの身体が天井近くに達した。追撃(ついげき)を防ぐ為に、ボルグは左手にあるカランビットナイフを敵の顔面に投げつけた。敵がナイフを()ける隙に、ボルグは引き剥がされた天井の穴から屋根へと移動した。 

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