1 悪魔の扉
1 悪魔の扉
今いるのはドーム状に大きく開けた場所だった。
この場所が、洞窟の一体どこなのかもわからない。
どっちに行けば外に出られるのか分からない。
でも……だいたいこんな状態で、外に出たところで、助からないんじゃ……。
残りHPが1だ……なんて……。
回復も何もできない……なんて……。
モンスターが出てきたら……終わりだ……。
それどころか、躓いて転んでも死んでしまうし、とがった石とかを踏んでしまっても死んでしまうぞこの身は……。
僕は立つ事もできず、四つん這いになって洞窟を進み始めた。
エンカウントしないよう祈るしかない。
そして進んでいる道が出口につながることを祈るしかない。
神経を研ぎ澄まし、モンスターの気配を探り、同時に罠にも注意ながら細い道を進んでいく。
すぐに息が上がった。
呼吸するたびに体が痛い。
体力を回復しなければならない。
そういえば、死にたいと思ってた事を思い出した。
いろいろ思い出す。
家族の事、マンヒの事、冒険者としてやってきた今までの事……死ぬ間際だからかな……。
這い進み、細い道を進んでいく。
すると、またもドーム状に大きく開けた場所にでた。
大きな鉄製の、おどろおどろしい二体の悪魔の彫刻が施された扉がドカンとある。
僕は絶句した。
ダメだ!
違う!
こっちじゃない!
引き返さなくては!
「侵入者か」
慌てて引き返そうとする僕に、どこからともなく声が響く。
同時に地響きがして、うずくまった。
扉の方を見ると、扉に施された彫刻だと思われた二体の悪魔が動き出し、その両目が僕をとらえている。
その二体の悪魔の口がしゃべりだした。
「解き放とうと言うのか」
「愚かな人間だ」
二体は交互にしゃべる。
「我らが姫、お守りせねば」
「薄汚い人間め、即刻排除する」
と言って悪魔が彫刻から抜け出してくる。
やばい逃げないと!
しかし焦る心と裏腹、体は全くいうことを聞かなかった。
「瀕死だぞ、こいつ」
「なぜこのような者が入ってこれたのだ」
「そうだ、ちょっと殺すのは待て」
「なんだ?」
「こいつどこから現れた」
「そういえば、侵入の気配などなかった」
「突然現れた」
「それをまず確認せねば」
「そうだな」
彫刻から半分抜け出した状態で、悪魔同士が向かい合って話し始める。
「お前がちゃんと見張ってなかったからではないのか」
「否。ちゃんと見張っていた。お前のせいではないのか」
「否」
「なぜ、そう言い切れる」
「否。と言ったら、否。何度も言わせるな」
「いい加減にしろ。貴様はいつもそうだなウンコたれ」
「お前もだろうが」
「お前よりマシな量しか漏らしていまいわ!」
……ケンカしだしてる?
……今のうちに逃げよう!
僕は必死に体を動かし、音を立てない様に逃げ出す。
とその時、
「人間!!」
悪魔が諸声に怒鳴って、共に殺気に満ちた目でにらみつけてきた。
しまった……バレてしまった……。
「もう良い人間よ。先に行きたいならいけ」
「へ?」
「なぜ通すのだ、貴様」
右の扉の方の悪魔が言った。
「お前の落ち度だからだ。人間を通した事をお母さんに怒られろ」
「何、怒られるのは貴様だ、馬鹿」
「馬鹿だと、言ってはならぬことを言ったな!」
「本当のことを言っただけだろ、馬鹿!」
「……あのぅ……僕は帰りますね……」
「うるさい!!」
悪魔が諸声に怒鳴って、共に殺気に満ちた目でにらみつけてくる。
「とっとと通りたいなら通れ!人間!」
「そうだ!ほれ今扉を開けてやる!」
右の扉が地響きを立てながら開いていく。
「ダメだ人間!そっち側は通るな!我の側を通れ!」
と、左の扉が地響きを立てながら開いていく。
「横取りするな!我が初めに言ったのだ!」
「横取りもくそもあるかボケ!」
「なんだとぉぉ。くぅぅぅぅ、人間、もし左側を通れば殺す!」
右側の悪魔がこっちに振り向き言った。
「なにぃ!?人間、もし右側を通れば殺す!」
左側の悪魔がこっちに振り向き言った。
「いえ……こ、困りま――」
「――うるさい!!」
悪魔が諸声に怒鳴ってくる。
「ええぇぇ……じゃあ……半分ずつ……僕が真ん中を……通ればお互い――」
「――ダメだ!!」
「ええぇぇ……」
「どっちか選べ!人間!右だ右!」
「こっちを選べ!人間!左だ左!」
「そんなぁ……帰ら――」
「――早くしろ!!」
「……じゃあ……、……」
僕はこっちを凝視する同じ姿の悪魔二体を見比べる。
こっちを選ばないと殺す、と露骨に顔に出していた。
「……じゃあ……右側……」
「おっ我を選んでくれるとはっ。わっはっはっは。中々見込みのある奴よ、がはははは」
右の扉の悪魔が喜んで、左を揶揄いだした。
「勝った勝った!やーいやーい、選ばれないでやんのー」
「くぅぅぅぅこの人間!殺してやる!」
「やめろ!この人に危害を加えることは我が許さん!さっ、人間よ、足元に注意して通ってくださいね」
「……は、はい……」
左の扉の悪魔が歯ぎしりをして悔しがっている中、僕は扉を通過した。




