2 無能の僕
2 無能の僕
「というわけです、警備兵さん」
僕はパーティを追放され装備も返した経緯を話し、なぜ全裸だったかを説明した。
「ああ、そうなのか……しかし全裸で街中を歩くなんて……ふんっ、そんなことだから追放されるんだぞっ」
警備兵のおっさんが、呆れたように言ってくる。
「……いえ、違うんです」
「なんだ?こういう理由だから大目に見てほしいとでも?そんなことできるわけないだろう、裸で歩いたには違いないんだから」
「……はい」
「あの天帝特別指定冒険者であるマンヒさんのパーティになんて、うらやましい。だいたいどうして入れてもらっていたんだ、君のこの低いステータスで……」
警備兵のおっさんは僕のステータスを、分析魔法でちらちらと見ながら言った。
「ちょっと見て見なさい、自分のステータスを、ほら」
「えっ……」
LV:3
HP:101
MP:13
攻撃力:3
防御力:1
素早さ:1
魔力:4
所持スキル:なし
「なっ酷いだろ?」
「はい……」
我ながら低いステータスだなぁ……。
「スキルなしで、これだけ低いとはすごいな、逆に」
「はい……」
「引き取ってくれるパーティーなんてはないぞ、君なんて」
「……はい」
……うるさいなァ。
「老婆心から言うぞ。君の能力では冒険者は無理だ。田舎へ帰りなさい」
「……」
……説教はもう良いよ、早く罰金払って帰らせろッ。
「まっ、法律で君は禁固刑50年だから。丁度良い、牢の中でよくよく考えることだな」
僕は耳を疑った。
「……えっ50年!?なんですかそれ!?」
身を乗り出して聞き返す。
「マンヒパーティさんが、自分のパーティの名誉を傷つけたとして訴えて来たよ。当たり前だけど、それはそうだよね。で、名誉棄損罪も上乗せね、天帝特別指定冒険者のマンヒさんだから、それはつまり天帝陛下の名まで汚したということだから、天裁人は禁固刑50年と下したよ」
「そんなっ!?だいたい僕は追放されているんですよっ!?」
「君はまだマンヒさんのパーティの一員なんだ。メンバー除名の正式な手続きを経てないからね。だから露出と名誉棄損と天帝陛下に対する侮辱の罪で、禁固50年」
「……」
僕は言葉を失った。
「じゃ、牢屋の方へ移送するから、立って」
……。
……警備局地下にある牢は、全く光がなかった。
……。
……じめじめとして、地下水道の臭いに満ちていた。
……。
……僕は1029番という名前になった。
1029と書かれた囚人服を着せられ、牢屋に入れられる。
牢屋内には、便所とボロ布が一枚だけがあった。
多分、この茶色い布に包まって寝るのだ……。
……。
……こんなところで50年も?
……。
……僕が悪いのか?
僕は壁を向いて寝ころんで考えた。
ムキになってハダカで飛び出すんじゃなかった……。
マンヒ達に頭を下げて、服だけ恵んでもらって……いや!ダメだダメだダメだ!そんな事だけはしたくない!
……。
……もう嫌……。
……もう……。
お母さん……お父さん……妹よ……助けて……もう僕は疲れたよ……。
その時、
「1029番」
僕の名前が呼ばれた。
何だろうと思っていると、
「魔法通信で、貴様の両親から掛かって来たぞ。出ろ」
「へ!?親からから!?」
心配して掛けてきたんだろうか?
まさか保釈金制度を!?
やった!すぐに帰れるかも!
「もっもしもし?」
警備兵に監視されながら、僕は魔通の受話器を取る。
「ロッサか?」
父の声だ。
「うん、そうだよ父さん」
その懐かしい声に、泣きそうになってしまう。
「お前、街中をハダカで歩き回り性欲を満たしていたのがバレて、マンヒさんからパーティを追放されたそうだな」
「えっ?」
「クズ野郎め!無能だと思っていたがここまでとはっ!俺が幼馴染だからとマンヒさんにお願いしてパーティに入れてやったというのにっ!お前というやつは!もう二度と帰ってくるなっ顔を見せるなっ勘当だ!」
「ちょっと待って父さん、違うよそれは違――」
「――ロッサ!?ロッサね!?」
声が母に変わった。
「ああ、母さん聞いて違――」
「お父さんの言っていることはわかったわね!もう家族に迷惑をかけないで!お前みたいなののせいでラーパが結婚出来なくなったらどうするの!」
「えっいや、あのっだから違――」
「――お兄ちゃん!?」
「おっラーパか、ちょっと聞いてくれ、誤解し――」
「黙れ!このクソ無能野郎が!私達のマンヒ様に恥をかかすなんてっ!お前はそこで野垂れ死ねぇ!」
ツーツー。
……。
……それっきり受話器からは通信が切れた音だけがした。
「終わったか?」
警備兵が僕の手から受話器を取り上げる。
「まったくこんな親不孝者を持つと親も大変だ……さっ1029番、突っ立ってないで牢に戻るぞ」
「……」
真っ暗な牢屋の中で寝そべる。
そして、僕は決めた。
死のう。
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