1 明かされるロッサの能力<対ビオリンゴンテ戦①>
1 対ビオリンゴンテ戦①
ラクマカにいた全冒険者二千人が隊列を組んで対峙する。
目の前では、大きさが小山ほどあるビオリンゴンテが一歩一歩ラクマカへと近づいて来ていた。
鈍足であるが、その一歩脚が下ろされるごとに地割れが起きている。
後ろをラクマカの壁、正面にはビオリンゴンテ……もう逃げ場はないこの場で、冒険者達は勝利を確信していた。
マンヒは剣を抜いて、隊列の一番後ろに堂々仁王立ちしている。
全冒険者二千人が、今やマンヒパーティとなっていた。
リーダーによるパーティ補正を考えれば、それは当然である。
今やパーティには、HP十倍、MP十二倍、攻撃力十一倍、守備力十五倍、魔力十三倍、素早さ十六倍のステータス上昇補正と、状態異常成功率上昇、状態異常防御率上昇、会心完全ガードなどなどの特殊補正が掛かっていた。
「す、すげぇ、なんて力だ」
「さすがマンヒ様だぜ!」
「これならいける!」
マンヒを元に冒険者達が一つになる。
セミアとレイが微笑んだ。
「レイ、良かったじゃないか。結局盗賊の極意の効果が思ったものと違えど……良いほうに違った」
「そうね、これほど強い能力ならばっ」
「でも、そうするとリベルラは、全部マンヒに奪われてたって事なんだから、可哀そうなやつだった
んだな
「そうね、でもこれで離れられたわ。あいつもこれで良かったわよ」
「マンヒ様、あなたがいてくれて本当に良かった」
ギルド長が頭を低くしてマンヒに言った。
「おおよ、ギルド長、これが俺の力だ!ははははっ」
「これぞ盗賊の極意の力!マンヒ様、戦いを始めましょう!」
「おおよ!」
マンヒが剣を天に向かって掲げ、戦いの開始を告げる。
二千人の冒険者が、それに応えて雄たけびを上げた。
すると、その二千の戦意にビオリンゴンテもいきり立ったか、甲羅の中からにゅっと出していた顔が、大口を開けて牙をむき出し冒険者たちを威嚇し始める。
冒険者たちが思わず後ずさりする、
「ははははははっ!」
そんな中、マンヒは大笑いした。
「見ろ皆!威嚇だけ!それだけで襲ってはこない!ビビってんだ!こいつはよ!」
「……ああっそうか……そうだ」
「そうだぜビビってるぜ!」
「皆!怖がることはねぇ!こっちは二千人いて、ついでにマンヒ様もいるんだ!」
威嚇を繰り返すビオリンゴンテに向かって、冒険者が鬨の声を上げる。
そして、
「よし!攻撃開始だ!第一陣突っ込め!」
マンヒが叫んだ。
ビオリンゴンテとの対決が開始される。
第一陣の、主にシールダーで構成されている部隊がビオリンゴンテを正面で引きつけている間、第二陣の二手に分かれた部隊が、ビオリンゴンテの両前足を同時に攻撃し、この魔獣を後退させる作戦であった。
第一陣の突撃を後衛の魔法使い部隊がホラノー(火球魔法)の援護魔撃を繰り出す。
戦場に広がっていた青空を真っ赤に変えるほどの火球が、ビオリンゴンテに降り注いでいった。
たまわずビオリンゴンテが顔を背ける。
甲羅の上の森にも被弾し燃えだしていた。
いけるかと冒険者達が思った瞬間、ビオリンゴンテが大口を開け、息を噴射する。
その熱気のこもった息は、たちまちに炎に変わり、炎柱となって第一陣に襲い掛かった。
マンヒの補正により、全員に対炎レジストによりダメージは二十三分の一になっているとはいえ、苦しみながら盾を構え、炎の中を突き進んでいく。
その時、甲羅の森からビオリンゴンテの使役するモンスターが、主のピンチと森から飛び出して第一陣に襲い掛かった。
我が家の森を燃やされ怒り狂っているモンスターは、ざっと見渡しただけで500体はいるのを、マンヒは見て取った。
「モンスターの数はもっと増える、おそらくこっちの数を上回るだろうな……」
「はい、マンヒ様……数がこれでは、補正も、これでも心もとなく……」
そう弱弱しく言ったギルド長をマンヒが睨む。
「弱気を言ったな!てめぇみてぇのがいるから負けるんだよ!」
「はっ、すいません」
ギルド長が深く頭を下げ黙り込んだ。
「よしっ、うまく第一陣が引き付けている。第二陣突撃だ!丸腰の脚を攻撃だ!」
第二陣が突撃し、戦いは苛烈を極めた。
戦場は地獄に変わる。
「くそ!左足が動いたぞ!あっちを担当していた奴は何やってるんだ!押さちまうぞっ!」
「だめだ!モンスターの攻撃が苛烈すぎ――」
「兄貴!?兄貴がやられた!?くそっ!このモンスター共!」
作戦は崩壊しかけていた。
後衛の魔法部隊の回復魔法とギルドがあるだけのアイテムを配備して戦力をギリギリ支えていた
が、それは時間稼ぎ以上の意味は持たない。
現れたモンスターの強さと何よりも多さ、グール、オークなどから、キマイラ、ガーゴイルなどの飛行モンスターまでが大攻勢を仕掛けてくる。
「部隊長!右翼から援軍の要請です!ガーゴイルが出現!弓使いを回してほしいと!」
「自分たちで何とかしろと伝えろ!そんな戦力ねぇよ!それより正面もやべえんだよ!」
正面は、ビオリンゴンテが炎の息と噛みつき攻撃を仕掛けてきていた。
次々に冒険者がその大口の中へと飲み込まれていっている。
「すでに戦力が!部隊長!もう我々だけでは!」
「何とかもたすように言ってくれ……くそ、こんなに補正が掛かっていてもっ……だめだなんて、そんなことが……」
「化け物め!くそっくそっくそっ!」
ズシン……、ズシン……。
ビオリンゴンテの一歩一歩が、地響きと共に激しい戦闘の土煙以上の土煙を上げ、もはやラクマカの壁へと衝突寸前であった。
「終わりだ……」
後衛で指揮しているマンヒは、そう呟いた。
「こんなの勝てっこねえ……」
絶望が冒険者たち全員の胸中を支配していた。
「ちょっとそこのあなた、その場所をどきなさい、邪魔ですわ」
「へ?」
マンヒは突然現れたイマノリに、押しのけられてしまった。
「な、なんだてめぇ!?」
「よし、良かった負けてますね」
イマノリは戦場を俯瞰してそう安堵して言った。
「な、何が負けて良かったなんだ貴様!?」
マンヒが憤慨して怒鳴った。
「ふふふふ」
「何を不気味に笑って!?」
「ふふふふ、リベルラ様の活躍の場が残っていて良かったという意味ですよ」
「はぁ!?」
マンヒが目と口があんぐり開かれてしまう。
「妾ら、リベルラパーティが、今からビオリンゴンテを討伐いたします」
「はぁぁぁぁ!?」
イマノリは、自分の陰に隠れていたパーティリーダーを前に出す。
リーダーであるリベルラ・ロッサが申し訳なさそうに姿を現した。
「て、てめぇら、まだ言ってんのか!?」
「リベルラ様、バリン(雷撃魔法)を唱えてください」
イマノリはマンヒを無視してリベルラに言う。
「……、……わかった……」
リベルラが、何か言いたいことを我慢して、詠唱を開始した。
「おい何やってんだよ、お前の魔法なんざ効くわけねぇだろうがよ!?」
「雷撃、バリン!」
リベルラがビオリンゴンテに向けてい指の先から、稲妻が発射される。
それはただのバリンではなかった。
戦場の全ての生き物が閃光によって真っ白に視界を奪われ、発生した雷音により耳がしばらく聞こえなくなり、戦場の時が止まってしまう。
「グガァァァァアアアアアァァアァ!」
直撃したビオリンゴンテが悲鳴を上げ、たまらず後退した。
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