1 冒険者ギルド来訪
1 冒険者ギルド来訪
「ここ?ラクマカの街だよ」
「……ずいぶん発展しましたわね、こんな谷間の街、二百年前は掘っ立て小屋しかなかったですのに」
……そうか、魔族は僕らの10倍長生きなんだっけ。
「しかし……リベルラ様が罪人でガンキの王都には行けないとは……人間どもはやはり救いようがありませんわ」
「まぁね……」
僕らは隣国のスネジゴ国まで来ていた。
脱獄した身だから、冒険者がとしてギルドに登録するには、国を変えないといけなかった。
「それにしても馬車、じゃないか、ケルベロスに引かしたんだから、ケル馬車?は早いね、馬車だと半日かかるのにあっという間に着いた。大鷲の翼レベルだよ」
「留守はライガ&フウガに任せて大丈夫かしら、それだけが心残りですわ……」
「大丈夫だよ、今では東海砂漠に入るための拠点として栄えててね、いろいろ売ってるから、なんかお土産買ってってあげよう」
「拠点……の割には、ずいぶん人出が少なくありません事?」
「……、そういえば……」
僕らは街中を見渡す。
いつもなら東海砂漠に向かう冒険者が大街道には跋扈しているのに……。
店も全部しまってる……。
「あっ見てイマノリ、街の端にデカい壁があるだろ。あれが東海砂漠からのモンスター防護のために建立されたラクマカ城壁。たしか百年前に建てられたんだ。あの壁で谷を塞いで谷を越えた先は東海砂漠からこっち側を分離したんだ」
指で指して教えてあげる。
イマノリは久々に隠れていた竜の洞窟から出てきて、さっきからテンションが上がってるのが隠しきれてないのが分かったからだ。
「……谷を越えた先はまだ東海砂漠ではなかったはずでは?思い出しましたわ、二百年前お父様に魔りんごを貰って、この谷を超えた場所で散歩して食べたことを……」
イマノリさんが目を瞑り、微笑む。
思い出に浸っているようだ。
「……ふーん、砂漠が広がったのかな?ギルドは壁の上さ。砂漠を一望できるんだ」
「まぁ、楽しみですわ」
僕らは城壁の300段階段を登る。
最上段に着くと、イマノリさんがあんぐり口を開けて、目の前のギルドを望んだまま動かない。
「どうした?」
「……ギルドって、こんなに大きいものでしたっけ……昔は、ただ神から報酬を受け取る場と、冒険者が依頼を受けるだけ場所だったのに……」
「結構前に、ギルドは冒険者に必要な冒険者専用の医院を設置して、武器防具店、食事店、娯楽施設、本屋、雑貨屋、床屋、銭湯、親御さんにも便利に保育園までを誘致したものになってるよ」
「それにしても大きいですわ、店がこんなに並んでいます。あっちは展望台ですか?」
イマノリさんが目をキラキラさせて、こちら展望台、と書かれた案内板を見つめていた。
「……行きたそうだね」
「いえっそ、そんなことありませんっ、すいませんっ」
「行ってみよう、そんなに急いでないし」
「は、はいっリベルラ様っ」
笑顔になるイマノリと一緒に二人歩いて展望台への階段を上っていく。
着いてみると、僕はあんぐり口を開けて、目の前のありえないものを凝視ししたまま、動けなくなった。
「リベルラ様、東海砂漠はどこなのでしょう……?」
イマノリも広がる光景を見て尋ねてくる。
しかしそんなの聞かれても僕にはわからない。
「……なんだこれ……」
僕は、すぐ傍で荷造りしている筋骨隆々な冒険者に尋ねた。
「なんですか?あの森は?砂漠はいったいどこに?」
「あんたら今着いたのか?」
荷造りしながら男が言った。
「木魔獣ビオリンゴンテだよ」
「……じゃあ……この森は……」
「そう、ここから見える森はビオリンゴンテの甲羅の上に生えてる奴さ、一昨日現れたんだ。俺も初めて見たよ」
……ビオリンゴンテって、これ、やばいんじゃ……。
噂でしか聞いたことないけれど、前に現れた時は街二つを踏み潰した所でやっと討伐できた一級モンスターだ……。
「騎士団へ派遣依頼を出したから、騎士団が来て討伐してくれるまで、俺たち冒険者は全員が駆り出されてるよ。俺たちも今からい行く所さ」
荷造りを終え、男は立ち上がった。
「でも、もし動きだしたら、ラクマカの壁なんて、いくら頑丈とはいえ……」
「そうだ、住民は皆逃げ出したよ。でも俺たちはナントカ食い止めないとな……動いていない今なら何とか、罠やバリケード、注意を捌く側に向けて街から放す事も可能だ。絶対にこの街を全滅なんてさせないよ……」
「……そうなんですか……ありがとうございました」
冒険者達は笑顔を作ると、荷造りをし終えた仲間と共に去って行った。
「ねぇイマノリ、ちょっと耳貸して」
「ん?何でしょうか?」
僕は小さな声で、
「ビオリンゴンテってさ、魔界にいるやつだよね、なんか知らないの?」
「たしか、魔りんごの種が二百年の歳月を掛け、地中の栄養を吸い取り、晴れて完全体に成長したものが、あのビオリンゴンテですわ。ですので、誰かがここらへんで魔りんご食べて捨てたのでしょう」
「ふーん、迷惑な奴だな……」
「何をおっしゃいます、人間どもめ良い気味ですわ。ただリベルラ様、これはチャンスでございます、早くパーティ登録をいたしましょう」
イマノリさんが僕の手をぎゅっと握って言ってくる。
「そして我らがリベルラパーティ最初の活躍として、どこかのポイ捨て魔族のせいで現れたビオリンゴンテを消滅させ、功績を上げ、天帝への道の第一歩と致しましょう!」
「ちょっとっ、そういう事はもっと静かに言ってっ」
僕は誰も聞いていなかったのを確認するため、辺りを見回した。
「申し訳ございません、つい……でも早く登録いたしましょう?」
「いや無理だよ、ビオリンゴンテだよ、体長がこの街より大きいんだよ?」
「リベルラ様の前では全然ザコですわよ、あんなもの」
イマノリさんはけろりとそう言い切る。
「……うん……」
……そんな態度をするもんだから反論もできない……。
「さっ登録に向かいましょっ」
イマノリさんに手を引っ張られ、階段を下り、冒険者で溢れるエントランスの、奥の受付まで赴く。
「すいません。パーティ登録をしたいんですが」
勝手のわからないイマノリさんを後ろに回して、僕は受付の女性を呼んだ。
すると受付の人が棚からチラシを取って、
「ただいまダブルキャンペーン中で――」
「――大丈夫です」
「さようでございますか、では案内と注意事項、契約確認を行います」
「はい」
受付の人がする説明を適当に聞き流しす。
ふと横を見るとイマノリさんはメモを取りながら聞いていた。
……わりと真面目な人なんだなぁ。
やがて説明を終えた受付の人が、右側の壁に並んでいる祝福の水晶を指し示し、
「祝福のの水晶に手を当て神より恩恵を得てください。それで登録完了になります、お疲れさまでした」
「はい、わかりました」
ふぅ……やっと終った。
壁一面に並んだ神水晶は、こんな時だからだろう、いつもは並ばなくてはいけないのに空いてる。
水晶の前に立って、イマノリの手を取ると、
「これに二人で手を当てれば、僕らはパーティとして登録される。そんで神託の腕輪が貰えるんだ、パーティのリーダーである証であり、神の恩恵をもらえる証さ」
「神託の腕輪……ああ聞いたことございますわ。では早速……あっこれ、もしかして、二人で初めての共同作業なんじゃ……」
「ん?まぁ……そうだね」
「まぁ……そんな……」
なんだろう?イマノリさんはなぜ俯いてるんだ?
「さっやるよ、せーのでいこう」
「はい、リベルラ様」
「せーの!」
「――駄目です!ちょっと待っていてください!」
手を当てようとしたその時、受付嬢が叫びながら僕らの元へ走ってきた。
僕らは固まってしまう。
「神水晶に手を触れないでください!良いですかそこでじっとしていてください!良いですか、逃げないでくださいね!ギ、ギルド長~大変です!!」
そう僕らに言い残して、二階へ駆けあがっていった。
ギルドにいた冒険者達が、この騒ぎにざわつきだす。
「一体何でございましょう?」
「さぁ……まさか、ここまで追手が……かも……」
「面白かった!」
「……つまんなかった」
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