4 覇王の紋章の説明と、一方その頃マンヒパーティは④
4 覇王の紋章の説明と、一方その頃マンヒパーティは④
「なんでこんなことに!?」
マンヒは壁を力の限り叩いた。
メンバー全員がダメージを受けて、もはやHPも半分ほどに減っている。
危機的状況であった。
「マンヒ、当たるな、無駄に消耗するだけだ」
「うるせぇ!」
「ねぇマンヒ、盗賊の極意が発動してないよ?なんでなの?」
「俺が知るかよっ!」
「そんなこと言ってるより、マンヒ、回復手段が枯渇しかけています」
レイは自身の魔力も底をつき始め、回復アイテムも残り少ない事を危惧していた。
そんな中、マンヒ達の行く先に分かれ道が現れる。
「ねぇマンヒ、どっちが出口かな?」
尋ねるノーノを無視して、マンヒが右と左の道の先の気配を探る。
もはやマンヒは探索を切り上げる決定をし、出口を探して歩き回っていた。
「ねぇマンヒぃ、もう私、疲れちゃったよぉ、どっちぃ」
「知らねぇよっ!くそっ!」
「こっちだ、右に行くぞ」
マンヒが歩き出す。
「ちょっとマンヒ様、適当で良いの?またモンスターに会っちゃうじゃん」
「黙れ!この役立たずが!お前の攻撃がヘボいから、俺がこんなに苦労してるんだろうが!」
「そ、そんな!」
「おいお前の回復薬をよこせ!役立たずのお前が持っていても無駄だろ!」
「だ、だめだよ。これはわたしのっ」
「なんだてめぇ!俺のはもうなくなっちまったんだよっ!」
マンヒがノーノをにらみつける。
「う……うん、わかったよ……はい……」
ノーノが差し出したポーションをマンヒは奪い取ると、ガブガブと飲み干していった。
「ああっ生き返るっ。サッ元気になったし行くぞっ」
マンヒは空き瓶を捨て歩き出す。
細い道をマンヒを先頭に歩いていくと、広い空間に出ようとした所でマンヒが立ち止まった。
「どうしたの?モンスターがいたの?」
急に立ち止まったマンヒに、ノーノが尋ねる。
「よし、ノーノ、先に行け」
「ええっそんなっ。なんで私が同じ囮役なのよっ」
「うるせぃ、俺に万が一があったらどうすんだっ」
マンヒがノーノをにらみつける。
「……うん……はい……、でも危なかったらすぐ助けに来てね」
「おう、まかしとけ。だから早く行けっ」
マンヒはノーノの背中を突き飛ばす。
広い空間に出たノーノが辺りの様子を一通り伺っていく。
やがて、
「ふーー、良かったー。みんな、今回はモンスターいないよ、ラッキーだったっ」
と安堵の息を吐いて皆に振り向いた。
「なんだなんだそうか」
とマンヒが笑顔で、振り返って迎えるノーノの元へ行く。
「なっ俺が選んだ道で間違いなかったろ?」
「さっすがマンヒ様っ」
セミアとレイもゆっくりと、細い道から出た。
「なんか久々ね、モンスターとエンカウントしないのを喜ぶなんて」
「そうだな、今までモンスターなんてもの、何の苦もなく倒していたのに……」
二人は顔を見合わせる。
「……どうして急に、こうも苦戦するようになったんでしょう?」
「……そうだな……なんでだかな……」
「リベルラがいないのと何か関係あるのでしょうか……」
「それはどういう意味だ?」
「今までの違いと言えばそれしか、ないじゃない」
「じつはあいつにはスキルかなんかがあって、すべてそのおかげだったとでも?」
「ふふふっ、そうねっ。そんなわけないかっ」
セミアとレイが、あほらしっと笑った。
と、その時、
「やかましいな……我らが寝ているというのに……」
腹の底にズンと響く様な声がして、マンヒ達は固まった。
「ん、今なんか聞こえたよな?なんだ?」
「きゃああっ!あそこ見て!マンヒ様っ!」
ノーノの悲鳴に、全員がそっちを向く。
そこには、岩肌に大きな影があった。
その影が、ぐらりと動いたとおもうと、あまりにも巨大な、四つ足の獣がその影の中から這い出してきた。
「そ、そんな……嘘……だろ?」
マンヒ達は目を疑った。
「魔界にいるはずのケルベロスがなんでこんなところにいるんだよおおおおお!?」
◇
「その他、「クリティカル率百倍」「回数制限付き無敵付与」「二段ジャンプ」「与ダメージの30%自分を回復」「魔力耐性」「クリティカル率アップ」、「ダメージ半減!」「ダメージ二倍!」「ダメージ反射!」などなど、覇王の紋章の持つ補助効果は、それはもう多岐にわたるのででございます。いかがでございますか?」
商売人みたいな口上で覇王の紋章スキルの良さを伝えてくる。
その口上が、さらに怪しく感じた。
「……ねぇ、一つ疑問なんだけど、何でそんなこと知ってるの?」
「魔族の知識は人間よりはるかに凌ぎますので、リベルラ様がこのスキルの存在を知らないのも無理ありませんわ」
うーん、そうなのかなぁ……。
訝しんでる僕に、イマノリさんは急に立ち上がり跪く。
「というわけで、リベルラ様は我らの指導者にふさわしいのでございます!」
イマノリさんが声を強めて言い放った。
「うーん……そんなにすごい能力があるなら、こんなに不幸な目に合ってないと、おもうんです」
「そんなことはありませんわ。今まで幸福な人生を送っているはずでございます」
「いやいや、そんなことないから言ってるんだよ」
「……、そんなはずは……効果に身に覚えのあることはあったわけでありましょ?」
「うーん……」
でも、それは、多分、マンヒの効果なんだよな……。
イマノリさんが困った表情でこっちを見てくるばかりだった。
「そういえばリベルラ様っ」
「うん、何?」
「そのレベルの低さで、よくペットのケルベロスと、ライガ&フウガを乗り越えて、玉座まで辿り着くことができましたよね、それこそ覇王の紋章効果のすごさですわっ」
「ん?いや、ライガ&フウガとは戦っ――」
「――リベルラ様っ」
ライガが急に耳打ちしてきた。
「戦ったことにしてください、私らが怒られてしまいますから、お願いします」
「……そう、えっと、うん、ライガ&フウガは強くて、苦戦したけどね」
「それで妾の元へたどり着いた時は瀕死状態でおっぱいを求めていたのでございますねっ。ライガ&フウガも見直しましたわ、覇王の紋章を持つものとやりあえるなんてっ」
「うふふ、そうかなぁ」
「むふふ、そうでもないよぉ」
ライガ&フウガが照れて、にやつきながら頭をかいた。
「……でも、ケルベロスって何?そんなのいなかったけど?」
「えっ、ああっあの子ったらっ。またどっかに行っちゃってっ」
イマノリさんが頭を抱えた。
「まぁあいつはね、ちゃんと仕事しないからなぁ」
「全く困ったもんだ」
とライガ&フウガも頭を抱える。
「もう昔から、定期的になでなでしないと言うこと聞かないアホな犬でしてっ。きっと今頃ひねくれて、洞窟のどっかで昼寝しておりますわ」
「へぇ、可愛いじゃない、僕もなでなでしたいなぁ」




