表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗い話にはしたくない  作者: 岡智みみか
20/20

第20話

ピンクの柱問題が過去のこととなってから、数年が過ぎた。


いまはもう、それにおびえるヒトもコトもない。


「一般相対性理論では時間を限定しておらず、反転が成り立つ。いま現代においてブラックホールの存在が認められているのならば、同じ法則に従ってホワイトホールの存在を否定することは難しい。あの現象は、一過性のホワイトホール現象が地球に近いどこかで起きた影響を受けていたのではないか。『実在する』と結論づけるための予測と実証、この実証の部分が推論の域をでない限り、この証明は難しく……」


高校卒業後、就職しようかと思っていたのに、急に大学へ行きたくなった。


どうにも分からないことをそのままにしておくのは、苦手だったらしい。


「ただ、時間は不可逆的であるという難題が未だ残されており、その点において実証実験の……」


授業とは、寝るものではなくちゃんと聞くものだと、大学へ来て初めて知ったと言ったら、高校までの先生に怒られるかな。


大学の構内は、そこだけが別世界のよう。


門をくぐれば広がる世界は、外の世界とは完全なる異世界で、先生は証明がされていないと怒られるかもしれないけど、私はこの空間だけは、外界の時間を飛び越えていると思う。


「ゴメン、待った?」


ベンチに座っていた私に、そう声をかける。


「時間が可逆的だと言われたら、どうする?」


「……。どうもしない」


「どうして?」


「『いま』しかどうせ見ていないから」


「いましか見てないの?」


そう言うと、彼はじっと見下ろした。


「『いま』における未来と過去って、言った方がいい?」


「あぁ、なるほどね。納得」


手を伸ばす。


伸ばした手はすぐに白い手に触れて、ぎゅっとつながれる。


きっとこれも、永遠に変わらない普遍の法則。


「すきにすればいいさ」


晴れ渡る青い空のまぶしさに、私は目を細めた。




【完】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ